自己紹介

イラストレーター兼ライター 詳しくはhttp://www5b.biglobe.ne.jp/~hilihili あるいは詳細プロフィール表示のウェブページ情報をクリック

2014年8月13日水曜日

次にマルサスから逃げるのは誰だ?

 
 食料の増産よりも人間の繁殖力の方が大きい。
 
 ∧∧
(‥ )つまり人間は食料生産の
\‐   容量ぎりぎりまで
     数を増やしてしまう
 
  (‥ )そういうわけで
      貧乏が成立します
 
 人間は貧困問題を原理的に解決出来ない。まあ、マルサスがかつて指摘したことのひとつは、要するにそういうことだ。
 
 ∧∧
( ‥)あなたのこの要約が
    適切かどうかはともかく
 
  ( ‥)人間は原理的に
    ‐□ 貧困を克服できない
      このように表現すると
      見えてくるものがある
      それは事実
 
 かつてマルクス主義者はマルサスを目の敵にした。多分、今でもそうなのだろうが、それはなぜか?
 
 ∧∧
(‥ )...マルクス主義が
\‐  貧困の解決を謳ったことを
    考えると
    そりゃそうだろうね
 
  (‥ )正直な話
      連中がどうしてマルサスを
      目の敵にするのか
      理解不能だったけども
      こう考えると
      分かりやすいかもね
 
 楽園が来ます。実現できます。死後の世界の話じゃないんです。この計画に従って革命を起こせば貧困のない世界を実現できるんですよ!
 
 貧困を無くすって、それは原理的に不可能だよ。人間は食った分だけ増えるもの。貧乏はずーっと僕らについてくるよ。
 
 ∧∧
( ‥)...身も蓋もありませんな
 
  ( ‥)視点を変えれば
    ‐□ ルイセンコ主義者が
      農業の無限増産を
      言い立てたのも
      このせいだよな
 
 スターリン時代のソヴィエトロシアにルイセンコという男がいた。彼は作物はさらされた環境によって遺伝的性質が変ると主張した。いわゆる獲得形質である。ありがちな発想だが、あからさまな間違だ。だがしかし、ルイセンコは自分の発見はマルクス主義的である、反対派である遺伝学者たちはマルクス主義的ではない、とレッテル貼りをすることで粛清、失脚、沈黙、あるいは死へと追い込んだ。
 
 ∧∧
(‥ )そうしてソヴィエトロシアの
\‐  遺伝学を壊滅させ
    農業をめちゃくちゃにした
 
  (‥ )日本のマルクス主義者も
      ルイセンコの農法を
      奉って喧伝した
      それがルイセンコ主義
      かつて日本で猛威を
      ふるった黒歴史だよ
 
 つまり、ルイセンコ主義とはマルクス主義者が採用した農法のことである。しかし、その理論的根拠はごく単純だ。
 
 曰く、これによって農業は無限に増産できると
 
 曰く、無限に増産出来る農業こそがマルクス主義的であり、それゆえに正しいと
 
 ここには実験的な検証がまるでなく、バラ色の未来だから良い、それだけの主張でしかない。
 
 ∧∧
( ‥)めちゃくちゃですね
 
  ( ‥)だが、言わんとすることは
    ‐□ 分かるよな
 
 1人の人間が耕せる畑の面積は人口がどれだけ増加しても変らない。だが養うべき子供は1人以上生まれてくる。人口増加は農業生産に必ず追いつく。そして状況は絶対的に飽和する。
 
 ∧∧
( ‥)ここから逃れるには
    農業の生産効率を
    圧倒的に増大させるしか
    ないのである
 
  (‥ )マルクス主義者たちが
      ルイセンコのいかれた
      アイデアに飛びついたのは
      当然なのだろうな
 
 考えてみれば、人はマルサスが指摘した状況から逃げようと必死なのだ。その必死さは無様としか言い様がない。
 
 ∧∧
(‥ )スターリンの農業集団化
\‐   毛沢東主席の大躍進
 
  (‥ )中国の大躍進では
      密植栽培ってのが
      あったよな
 
 面積あたりに植える作物を2倍にすれば2倍の収量が上がるはずだ、というトンデモ農法なんだが、当時は、密植してたわわに実った麦だか稲だかの上に板を乗せ、そこに子供が乗っても倒れない、という写真まで出回ったのであった。
 
 ∧∧
( ‥)捏造だったけどね
 
  ( ‥)農業集団化も
    ‐□ 大躍進も
      どっちも大失敗で
      大量の餓死者が出た
      わけなんだが
 
 マルサスの冷たい指摘を前に、大勢の理想主義者がそれを拒否し、あるいは農業の生産効率を上げようと、奇策に飛びついた。それがここ150年の歴史であったと言っても良い。
 
 ∧∧
(‥ )好意的に言えば
\‐  人々を食べさせるために
    必死だったのだけどね
 
  (‥ )動機は結果を
      正当化できなけどな
 
 みんな必死だったのだ。腹が減って目が回っていれば腐った肉にも飛びつくだろう。
 
 だが、結果は見ての通り、大失敗である。
 
 さて、思うに、次にマルサスから逃げようとするのは誰だろう? そして今度はどんな奇策を語りだすのだろうか?
 
 これはhilihiliのhilihili: 実はマルサスから一歩も出ていないの続き
 
 
 ∧∧
(‥ )そういえば
\‐  ルイセンコ農法を信奉した
    人たちは
    ルイセンコ失脚後に
    団体名称を変えたのだよね
 
  (‥ )どうも有機農法とかに
      鞍替えしたらしいの
      だよなあ
 
 別に有機農法をしているすべてがそそくさと名前を変えた連中だとは言わないが、これは示唆的な話でもある。
 
 ある人が曰く、左翼の人はスピリチュアルのような胡散臭い話に飛びつきたがると
 
 ∧∧
( ‥)というかむしろ
 
  (‥ )胡散臭い理想論に
      飛びつく手合いが
      選んだ主義
      それが
      マルクス主義なんだろな
 
 事実、彼らは貧困のない世界はありえない、という話に激怒し、理想郷が築けるという話に心酔したあげく、馬鹿な理論にひっかかって大量の餓死者を出した。そして今度はそれを無かったことにしたのである。これを胡散臭いと言う以外に、一体なんと呼べば良いのか?
 
 
 そして付け加えると、農業の生産性を向上させたのは、マルクス主義でもなくルイセンコ主義でもなく獲得形質でもなかった。
 
 その向上を実現せしめたのは農薬と化学肥料と石油と機械と、そしてかつてルイセンコ主義者たちが”マルクス主義的でない単なる観念論!”と罵声をあびせたメンデル遺伝とその応用である。理想論ではなく、現実を記述できる理論だけが世界を制御できるのだ。
 
 
 

ブログ アーカイブ