ダーウィンは獲得形質を認めていたし、パンジェネシス仮説を考えだした。
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( ‥)でもそれは丸っと間違いでした
( ‥)獲得形質的なものが
ないわけではないが、
獲得形質を組み込んで進化を
説明する、それ自体は駄目だね。
*獲得形質。ようするにその生物がその生涯において経験して手にした特徴が次世代に遺伝するということ。ものすごく分かりやすい例え話ではスポーツ選手の子供は筋骨たくましい、というような話。経験が遺伝子に直接作用して変異し、その変異は経験に関連する方向性のある変異である、とでも言えばいいか。自然界には一見するとそう見える現象があるが、そのほとんど全部が普通にランダムに起きる遺伝子の変異で、一見方向性を持つ場合でも、実は淘汰が働いている例だったりする。
獲得形質こそ進化の原動力だとする人は昔から今に至るまでいるが、認められたことはないし、どれもこれも思いつきの域を出ておらず、まっとうな論文はない。端的に言うと、こんな理論があります!! と発表する場は論文であって、一般書で書くような人間は研究者として終わっているし、大概の場合、連中自身そんなことは自覚している。
*本当にいけると思った理論を、論文より先に一般書で書くのは、製品を販売する前に製品の中核的なアイデアをテレビでべらべらしゃべるようなもの。理論を一般書でまず主張する時点で、自分の理論に先がないことは、書いているご本人が一番良く分かっているでしょ? ということ。
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( ‥)獲得形質と、それを組み込んだ
パンジェネシス仮説を提案した
ダーウィンさんも同じ過ちを
犯したのだ、そう揶揄される
ことがありますね。
(‥ )確かに間違いなんだが、
あれ、難しいのよね。
ちょっと物を知った気になった人間が、「ダーウィンって獲得形質を認めていたんだってねー、うへへっ」、と揶揄するような内容だったらダーウィンの主張はそもそも自然選択説にはならないし、なぜダーウィンが退化という現象において獲得形質を特に考慮したのか説明できない。
*獲得形質を彼が認めていた、という単純な仮説では、彼の文章と説明の有り様が説明できない。説明できないのであれば、その解釈は「ダーウィンの考え方と思考を説明する理論」として不十分であり、却下すべき、という意味。
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( ‥)ダーウィンさんはその点において
間違っていた。問題は....
(‥ )むしろ問題は、彼がそれで
”何を説明しようとしたのか?”
でっ、あるね。
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( ‥)その話は前に書いた本にはほとんど
書きませんでしたね。
( ‥)種分化の話と同様(ダーウィンの種分化の
理論は現在では間違いではないものの
あまりメジャーではないとか)
一冊の簡単な解説書で書くには
手に負えなかったんでね。
個人的にはダーウィンの獲得形質とパンジェネシス仮説は間違いではあるが、しかし彼がそれで何を解決しようとしたのか、その問題提起と着目、観察こそ評価されるべきじゃないのか、と思う。
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( ‥)その先にあるのは中立説と
メンデル遺伝でしょ?
(‥ )ようするに生物学者はな、
100年以上ダーウィンを無視して
フィッシャーとかメンデル、
ハミルトン、木村資生を介して、
ダーウィンに回帰しつつある
そう言えばいい?
着地点は結局、ダーウィンで、それがいわゆるネオダーウィニズムで、それってダーウィンさんのアイデアと要請を、メンデル遺伝と中立説と確率論でより具体化させたもんだろ? という意味で。
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( ‥)もしかしたら、誰かがこれから
本当の意味でダーウィンさんを
越えるかもしれないけども。
( ‥)もしそんなことが
あるとしても、それは
僕ら老人ではないよね。
*老人:ここでは40歳以上の意味。こちらの本の末尾の文章はこれに由来する。