自己紹介

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2011年12月24日土曜日

呪われし職業

 ∧∧
( ‥)状況は?
 
    ( ‥)....まあ、なんとなく見通しが
      -/ ついてきた、というべきかなあ
 
 プトレマイオス、コペルニクス、ケプラー、ああ、エカント点とはつまりそういう...。
 
 ∧∧
(‥ )ガリレオさんの立ち位置は
\-  どうなんでしょうねえ?
 
    (‥ )あの人、立ち位置がちょっと
        微妙なんだよな。
        業績の幾つかは先行者が
        すでにいたからね。
 
 一方ではガリレオ裁判の理由が微妙に意味不明。というか、当時の神学者は理解十分に見えて、実は理解の根幹が粗雑だったのじゃないか? と疑念に思いつつ、まあ、もう少し調べてみよう。

 
 ∧∧
( ‥)それにしてもどう思います?
 
    ( ‥)いつも思うけども、リサーチってのは
      -□ 困ったもんだな。地図を持たず、
        作りながら進むみたいなもんでね
 
 見通しが聞くわけでもない。「こんな場所だったよ」という、てきとーなうわさ話を頼りに見知らぬ土地を動くようなもの。そして、そのうわさ話は大概、あてにならない。
 
 ∧∧
( ‥)霧の中、近辺で一番高いところを
    目指してください。
 
    ( ‥)高いところへいけ、と言うのなら
        それ自体は簡単なんだ。
 
 霧の中を上へ上へと移動すれば良い。
 
 ∧∧
( ‥)問題はそこが最高点なのかって
    ことですよ。
 
    (‥ )尾根に登った。尾根がたまたま
        下り坂になった。それだけを
        手がかりにするとそこが
        ”最高点”だってことになる。
 
 自分の歩いた範囲内では最高点かもしれないが、実際には最高点でもなんでもない。いわゆる局地的な解にはまって動けなくなる、というやつ。
 
 ∧∧
( ‥)霧が晴れたらびっくり仰天
 
    ( ‥)目の前に山々がそびえていたり
        するわけさ。
 
 そういう意味では、問題はむしろ霧がかかっていることではなく。
 
 ∧∧
( ‥)むしろ霧が晴れないことの方が
    問題でしょうね。
 
    (‥ )地図を作りながら進むしかない。
        だから重要なのは、いかに
        地図を作るかなのだよね。
 
 トンデモ君やオレ様理論屋がまずいのは、そもそも地図の作り方を全然知らん、あるいは最高点を見つけることに夢中で、標高の測り方や位置の確定の仕方、地図の重要性に興味がないということで。
 
 ∧∧
( ‥)オレ様のいるところこそ
    最高点だと大声で自己申告。
 
    (‥ )ああ、そこの尾根、素人が
        良くはまるんだわ、と言っても
        地図の見方も作り方も知らんから
        何を言われているのか理解
        できんのよ。
 
 まあ、こういう時は常識的に考えよう。
 
 誰もいない場所で、えっ? オレがゴールに一番?? やった! やった! やったぴょん!! と確信できるとしたら、その時点で、かなりいかれている。
 
 ちょっとはお前、不安を覚えろ、地図ぐらい買え(教科書は地図に該当する)。よく見回せ。周りになにもねえじゃねえか。
 
 
 ∧∧
( ‥)局地的な解から脱出するには、
    あるいは自分の見つけた最高点より
    良いものがないか探すには
 
     (‥ )霧だらけで見通しが効かない以上
         ランダムにあちこちいってみる
         しかないんよな。
 
 しかし、ここでも落とし穴がある。
 
 ∧∧
( ‥)この場合の問題は、ライターは
    データをかき集めて”記事を書く”
    という点ですよ。
 
     (‥ )記事を作る、つまり
         現在の状況を把握することを
         地図作りに例えるとだよ、
         ランダムにあちこちの標高を
         測って、全体の地形を
         把握することに
         該当するのだが。
 
 標高の測り方を知らないか、計器が狂っているかしたらどうする?
 
 ∧∧
( ‥)当然、現状と全然違う
    地形図を作るでしょうね
 
     ( ‥)弱ったことになあ、
       -□ 一般人に受ける形式に
         地形図を勝手に描いちゃう
         のがうまいやつ、いるんだ。
 
 以前も書いたことだけど、知っているライターの本で、「文系の人から分かりやすい進化の本」と評されたものがあった。
 
 ∧∧
( ‥)読んだらびっくり
 
   ( ‥)今西錦司はグールドの先駆者だ
     -□ 集団遺伝学は断続平衡説を支持する
       急激な進化は自然淘汰説に
       合わないから、これはきっと
       ホメオボックス遺伝子に
       何か起きているに違いない。
 
 ああ、この人はメンデル遺伝も知らないんだ、と納得した。

 *生物の遺伝は比喩的にいうと混ざることのない、いわば粒子の集合。さらに劣性、優性があるから、そこにあるのに隠れて発現しないものもある。ようするに大量の様々なボールがあると思うと良い。自然淘汰はふるいに該当するので、ざーっとふるいにかければ一気にボールの(遺伝子の)構成が変わる。急激な進化(2年とかで変わる)が理解できないとしたら、それはメンデル遺伝を全然理解していない証拠。

 *断続平衡説と集団遺伝学の区別がついていないのもありがちな誤解。断続平衡説を支持する人で、本当に断続平衡説を知っている人を個人的には見たことがない。大概、集団遺伝学とごちゃまぜにしている。
 
 ∧∧
( ‥)ひるがえるに、先のような把握は
    学会の動向、ようするに
    現実の地形とは一致して
    いませんよねえ。
 
     (‥ )でも、これが”分かりやすい”
         なんだよね。
 
 分かりやすい、というのは、収集したデータに基づいて現実の地形を推論することではない。皆が心に思い描いている心理的な地形に合わせてデータを恣意的に解釈することである。
 
 ∧∧
( ‥)まあ、それが良い
    ライターですか
 
     ( ‥)こういうことあるからさ
       -□ サイエンスライターって
         肩書き大嫌いなんだよ。
 
 ∧∧
( ‥)でも、他に言い様がないでしょ?
 
     (‥ )この職業、呪われとる。
 
 
 
 

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