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2011年12月10日土曜日

危機的なエピソード

 
 神奈川では降り続いていた雨が止み、夜空は澄んで底冷えとなった。深夜の13:00に丘の上を走る道路までいくと低くカノープスが見えた。
 
 ∧∧ 赤く見えますね
( ‥)
 -( ‥)ひさしぶりにきれいに
     見えたなあ。
 
 南の星座の星なので、オリオンやシリウスが空高く上がる時間でも、関東ではほとんど地平線ぎりぎり、低いので夕焼けと同じ原理で赤く暗く見える。東北以北では見るのは困難か見えない。日本では南極老人星、酒飲みで赤いとされ、七福神の寿老人でもある縁起の良い星だ。
   
 さて
 
 そういえば先日、町へ出たついでに本屋で立ち読みしたら、宇宙物理とかに関係する著者が他の分野の研究者と話をしたら、「ああ、そういうごまかしに使われる単語はこっちにもあってね、例えば進化っていう単語はごまかしに使われるよね」、およそそういう内容の事柄を言われたそうな。
 
 ∧∧
( ‥)まあ、ごまかしには
    使えるかもですね
 
   (‥ )身近な動植物のあり方や
       遺伝子頻度の変化、その過程
       やパターンから進化という
       結論を導き出すことはできる。
 
 いまでは系統解析の手段があるから、データさえそろっていれば個々の系統の進化の具体的な過程を推論し、それをテストで検証することもできる。おかげでちょっとした科学雑誌ならそういう論文を見るのが普通だし、その気になれば過去の生物が持っていた遺伝子を系統解析から復活させて、そこから遺伝子がコードしている酵素を作り、その活性を調べることすら可能だ。
 
 *何度も書いたことだけども、例えばどこぞの掲示板であるような、「オレ様が思うに鳥はこう進化したに違いない」とか、「恐竜はこう進化したに違いない」とか、「人間はこう進化したのだ」という論証や仮説がまったく駄目で、かつまた研究者の理論とまるで相容れないのはこのせい。ようするにデータから一番妥当な仮説を発見し、それを検証する過程はすでに系統学という形で確立されている。そうである以上、系統解析を経ないそれらの思いつきは非科学、あるいはトンデモの域を出ない。トンデモの域を出るには論証が理路整然としているかどうかではなく(そんなもの無限大に存在するので)、論証の形式や過程そのものがいかに妥当であるか、あるいは検証可能かどうかを論証しなければいけない。言い換えると、僕には分からないとかぐだぐだ言わんと系統学の教科書を読め、ということでもある。実際、学校時代に先生、もっと僕でも分かるように教えてください、僕ちゃんでも分かる教科書はありませんか? なんて君はいったのかね?
 
 ∧∧
( ‥)問題はですよ、系統の変遷は
   理解できるのだけども
 
    (‥ )具体的にどんな選択圧が
        かかったのか? そこが
        分からないか、論証が
        困難だってことだよね。
 
 うーんんんん? ここまで考えてふと思った、というか気づいた。
 
    ( ‥)断続平衡説ってさ、論証が困難だ
        そういう空白地帯に入り込んだ
        仮説だとも言えるよな?
 ∧∧
( ‥)断続平衡現象それ自体は
   見えるのですけどね。
 
 断続平衡。ようするにしばらく変わらないでいた系統が、ある日突然、急激に異なる姿へと進化し始めて、あるいはAからBへ移行して、その状態からまた動かなくなる、ということ。これ自体は確かにある、ことなのだけども、断続平衡”説”の提案者であるグールドたちは、進化というものはそもそもこういうもので、その機構を説明する理屈を提案した(色々と突っ込みどころがあって、今では顧みられてはいない)。
 
 ∧∧
( ‥)色々と問題を抱えた理論だけども
    そのひとつの要点はですよ
 
    (‥ )急激に変わるっていうけどもさ、
       それ、本当に変わっているの?という
       根本的な問題でね。
 
 よりちゃんというとこう。急激に変わる、変わるから意味(因果関係)があるっていうけどもさ、それ、本当に淘汰の作用なのか? 単なる遺伝子の確率的な浮動とどう区別するのよ? という問題(というか致命的な突っ込みである)。
 
 ∧∧
( ‥)進化しているのは事実だけども
    その進化に意味(この場合は
    淘汰による因果関係)が
    あると、論証もしないままに
    進化という言葉が都合良く
    使われてしまった例かも
    しれませんね。
 
    ( ‥)断続平衡説って科学史的には
      -□ 思ったよりも面白い事例だった
        のかもしれんなあ。
 
 ともあれ、である。冒頭のエピソード自体はたぶん、こんな話ではなくて、単純に現代の進化学の成果を知らない人の発言かもしれない。
 
 ∧∧
( ‥)あなた自身は冒頭のエピソードを
    どう考えます?
 
    ( ‥)以前も述べたことだけどもやはりあれだ
 
 生物学が分類学から誕生したのに対して、ダーウィンは地学の斉一説と畜産の育種学からやってきた。そこから産まれたのが進化学と集団遺伝学だった。そのことを考えると、進化学は生物学とみなすべきではないと思うし、残念だけども生物学は所詮は進化学にはなれないのではないのか?
 
 ∧∧
( ‥)無念?
 
    (‥ )うん、なんかすごく無念。
 
 これ、古生物学にもあてはまると思う。
 
 ∧∧
(‥ )古生物の系統解析は
\-  いっぱいあるのですけどね
 
   (‥ )示準化石も見た、系統解析もした
       ダーウィンと進化学に古生物学は
       確かに大きな功績をした。
       だけどもグールドは
       系統解析を否定して
       断続平衡説を述べて
       集団遺伝学と対立した。
       彼は法王とも呼ばれた。
       これ、すごく危機的なエピソード
       だと思わんかね?
 
 最低限、これは旧世代の有様と世代の断絶を示していると思う。冒頭のエピソードもそういうことかもしれない。
 
 
 

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