*の続き
「銃・病原菌・鉄」
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( ‥)かつて読んだあなたの感想は?
(‥ )生物学者が社会進化を仮説演繹の手法で
□- 論証した画期的な本。というかマルクス
なんてものから150年あまり、ようやく
こういう本が出るようになったのか、
という感慨だなあ。
*著者は生物学者、というよりは進化学者なので、学問の系譜としてはダーウィンの系譜に当たる。対するマルクスの唱えた社会の発展理論とでも言うのか、あれはほぼ同時代のダーウィンが集団の進化を論ずるには確率論が必要であり、その導入を科学に要求したことと比べると、マルクスの世界観は19世紀末において実はすでに時代遅れだったよな、という受け取り方。
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( ‥)でっ、あなたが感じたカルチャーショックは
( ‥)本というよりも書評に度肝を抜かれた
-□ のよね
曰く、なぜ西欧が中東や中国を追い抜いたのか説明されていない
曰く、分裂と競合が重要って言うけども、そう?
曰く、競合なんて説明は最後の付け足しじゃん
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( ‥)それを見て”度肝を抜かれた”あなたは
仮説を考えるのだと
(‥ )江戸時代、300年の太平を謳歌した
日本人には1000年戦争し続けた西欧人の
考えが理解できない、それが以上のような
書評に噴き出ているのではないか? という
仮説ね。
7年戦争、30年戦争、80年戦争、100年戦争、実態はどうとか論ずる余地があるにしても、まあ、あっちの戦争はネーミングからしてこれだ。
視点を変えると、小説「1984年」
基本的にはWW2当時のイギリスをパロったギャグ漫画みたいな小説なんだけども、一般的には管理社会の恐怖を描いた近未来SF的な扱いをされる作品。WW2の後で発生した核戦争終了後、世界は3つの超大国に分割、統合、再編された。大陸ヨーロッパをソ連が吸収したユーラシア、旧大日本帝国と中国が合したイースタシア、大英帝国と南北アメリカが合体したオセアニア。3つの超大国は核こそ実戦投入しないものの国境線では絶えず紛争が続き、国民はすべて戦時体制下に置かれ、あらゆるものが前線に送られて消費され、人々は困窮しており、しかしそれも敵がいるから耐え忍ばねばならないことであり、政府は戦時下においてすべての権限を握り、人々が監視されている世界。
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( ‥)主人公のいるオセアニアには名前とは
-□ 裏腹の役割を果たす4つの省庁がある
飢餓を司る豊富省
欺瞞を司る真理省
拷問を司る愛情省
戦争を司る平和省
(‥ )だがこの中にたったひとつだけ
呼び名そのままの役割を果たす
省庁がある。
それは戦争を司る平和省
∧∧
(‥ )1984年の世界は核戦争の大量破壊に
\- ひるんだ知的エリートたちが、
戦争の無限継続に合意した
世界なんですよね
(‥ )戦争の無限継続は勝ち負けの無い世界
平和と同じなんだよね、という指摘が
小説中、露骨に出てくる。
征服の恐怖がなくなったから、
詭弁と自己欺瞞で常識も経験も
全部、都合良くねじ曲げるのよな
そしてこの世界には科学が存在しない。
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( ‥)無限戦争は平和と同じ
(‥ )西欧の現実の歴史は、殺す殺されるが
1000年続いて、なお平衡状態の
ままだった。1984年の世界では
戦争は無限に続ける”べき”ものになり
戦争と生存競争は無力化された
外敵に征服される恐怖が無い世界
2+2が5では死ぬ世界ではなく、
2+2が5であっても問題ない世界
それが1984年なのだよね
というか、そういう説明がちゃんと出てくるとても親切な小説でもある。
そしてこれがイングソックのスローガンの1つ、戦争は平和なり、の正体。
戦争の無限継続は既得権益者による社会の無限停滞と同様の効果を持つ。
そうだよ、どうやって歴史の振り子を止めたのだと思うかね?
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(‥ )キーガンさんの書いた「戦略の歴史」とか
\- 読んでも、果てしない戦争で次々に流転
しながら西欧社会が巨大な戦闘機械と化して
世界征服へ至る説明が書いてありますし
(‥ )小説家、軍事史家、進化学者、
これだけ立場の違う人たちが
共通に述べていることは何か?
「銃・病原菌・鉄」を読んだ時、あれが説明不足と感じたとしたら、それは読み手が実は日本人だからじゃないだろうな? という疑義。
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( ‥)まあ、向こうの読者にもそういう人は
いるんでしょうけどね。
( ‥)まあ、いるかいないか、ではなく
-□ 統計的な視点から論じられる
検討であるだろうけどもね
この仮説が要求するのは
日本人ではそれが顕著だろう
そういうことさね
そしてこの仮説が正しいとすると、おそらく、今のままでは日本は彼らに勝てないし、事実、勝てていない。競合で負けているし、安い人件費という貧乏人の武器が消えて、さらに分が悪くなった。