「改訂版 ヨーロッパ史における戦争」中公文庫を読み終える
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( ‥)どう?
( ‥)フランス革命とナポレオンを経験しても
-□ 軍隊はそれ以前の段階、つまり
平民の突撃軍隊ではなく、貴族将校と
訓練された専門軍へと、なるべく
戻ろうとしたというのは驚きだね
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( ‥)でも、社会自体、王政復古していますし、
軍隊だって、本来の姿に戻りたかった
のでしょうね
(‥ )補給をちゃんと考えて、ちまちま進撃して
ちょこちょこ攻略して、準備を整えて
決戦して、そういう17世紀における
プロイセンのフリードリッヒ大王の
ような時代に戻りたかった、
そういうことかな?
*ナポレオンの軍勢は訓練どころか平民を徴兵しただけの素人軍で、突撃しかできないようなもんだし、補給は現地の略奪。さらに軍隊を小さなサブユニットとでも言うのか師団に分けたせいで、行軍速度が非常に速かった。それが強さと勝利の秘密だったけども、当然、やることなすこと力技で暴力的(あるいは場合によっては破滅的)という案配。そもそも補給が略奪という時点で何が起こるか明白。
だが、古き良き時代に戻ろうというあこがれは、結局は実現せず、戦争中でも人の往来があった17世紀の戦争はナポレオン以後、永久に終わり、国民と発明されたナショナリズムによる総力戦の時代が間もなくやってくる。
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(‥ )それを考えると、戦争という圧倒的な
\- 圧力と現実を経験してさえ、社会と人は
変わりたがらないのだと
(‥ )日本だってWW2で敗北して未熟さを
思い知らされたけども、そんな経験の
あとでさえ、戦争や軍隊を否定すれば
良いとかー*核の傘に守られている以上
それはたわ言の域を出ないー
そんな程度の学習しかしていないし
戦争や軍隊を否定する文化人ですら
組織力や補給の重要さを学んだわけでは
なくて、結局は戦前同様の根性論や
精神論や稚拙な理想論をぶつわけだろ?
インテリをきどっていた首相が、まるで旧日本軍に象徴されるかのような、兵站と後方支援を無視した人数を鶴の一声で動員してしまうのだから、1回の敗戦とあれほどの犠牲を出しても、ほとんど何も学ばなかったことがよく分かる。
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( ‥)そりゃあね、人間なんて35ぐらいで
経験を固定化して頭かたまっちゃうでしょ?
挫折して新しい必要性を見ても、それは
老人のしぶしぶした認識と、
必要性に適応した若者、
そして老人の死と世代交代で組織の
アップデートが進行するのですよね
(‥ )しかも1回、2回のテストでは
人間は変われないし、
社会も打ち続けないと
変化しないのだよな。
当たり前の話であるけども。
それを考えると、「銃・病原菌・鉄」を読んで感銘を受ける人は多いけども、そういう人たちですら、どういうわけか「西欧がかつての先進地域であった中東や中国に先んじることに成功したこと」を、著作の中で説明され切っていない謎のように感じるのは、不思議と言えば不思議だし、当然と言えば当然か。
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( ‥)...西欧が世界の勝利者になった理由なんて
「銃・病原菌・鉄」で露骨に書かれてますよね?
そもそもタイトルに書いてあるし。
(‥ )分裂状態のまま統合できず、ずーっと
戦争していたからなんだよな。
敵の恐怖だけなら問題ないが、実際の脅威があるがゆえに、技術は放棄できず、社会も変わることを余儀なくされた。その結果が西欧の世界征服。ただ、それだけ。科学も技術も民主主義も戦争から産まれたわけだ(ちなみに、西欧の世界征服と無敵さは確かに彼らの戦争文化の賜物だったけども、軍事史家のキーガンが言うように、それは結果的には間違いだった。自分たち同士でその戦争文化をぶつけあった結果、西欧は自滅した)。
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(‥ )実戦に参加した軍人さんたちでさえ
\- 古き良き、おしゃれな戦争に戻ろうと
したのだとすると
(‥ )まあ、人間は強制され続けないと
動かないってことなんだよな
戦争を否定するのは良いが(そもそも戦争を肯定する人間は軍人、民間人、軍事オタクを含めてまずいない)、戦争とその背景にある現実の圧力、その効果を無視するわけにはいかない。