*の続き
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( ‥)「ゲド戦記」は第1作をずいぶん昔に
読んだだけでしたよね
( ‥)あれも、ヒーローだったよなあ
ずっとずっと待っている。ただじっと待っている。いつか必ず、彼は生者の世界を越えて死者の世界にやってくる。だからただじっと待っている。生者の国と死者の国をへだてる低い石垣、そこでただただ待っている。
生者が必ずたどる道というだけでそこを選んだのか、あるいはいつか人のために彼はここにやってくる、そういう奴だと踏んだのか。
果たして彼はやってくる。死にゆく子供の魂を救うために、越えてはいけない壁を越えてやってきた。
(‥ )見いつけえええたあああああーー!!
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( ‥)いや、そんな台詞いってないし
ずっと、ずっとお前を待っていた。じりじりじりじり、螺旋を描くようにじりじりじりじり。第一夜は遠く、第二夜には家の周りを、そして次の夜は家の中、さあ、融合と浸食の時だ。
逃げる逃げる。彼が逃げる。逃げる逃げる。逃げた先で友達を作る。しかし友達が自分を見る目が何かおかしい。誰か、別人が友人の目を通してこちらをのぞいているようだ。友人が招待する。歩く、歩く。寂しい場所、雪が積もった荒野、誰もいない、誰かがいる場所へ至るとも思えない何もない場所。たまらず友人の名前を呼ぶ。
ぐるりと振り返る友人は、しかし、その服の下にはもう何も無い。杖で打ち据えてくしゃりと潰れた服は、しかし、みるみるすぐに立ち上がる。
そうだ、お前の大事な友人とやらはとっく私になったのだ
(‥ )お前もこっちにこい
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( ‥)そういうことも言ってないし
ついに前を見据えた彼は融合を果たし、影に打ち勝ち、親友がそれを見届ける。しかし伝えられた話のひとつでは親友は難破したことになったという。
(‥ )なぜだと思う?
みんな食われたからだ。
偽りの融合は終わり、
浸食の時が始まる。
彼は私になり、
お前も私になる
すべてが閉じる
夢無き世界の始まりだ。
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( ‥)いや、そういう話じゃないし
ああ、だけどもヒーローは確かに虚無の中にいて、みんながそれに魅入る時がやってくる。