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2012年3月9日金曜日

歌え

 最終講義、帰りの路線でトラブル発生、電車が立ち往生
 
 
 ∧∧ 動きませんね
( ‥)
 -( ‥)本でも読むか
   -□
 
 電車の中の人々はiPhoneいじったり、iPadをいじったり、それぞれ何事かしている。見たり、読んだり、打ったり、聞いたりだ。
 
 
 ∧∧ お姉さん2人がずっとしゃべってます
(‥ )
 -( ‥)お姉さんっていうか声は
   -□ 30代ぐらいだろ
 
 時々、微妙に痛い言い回しが混じる。

 
 ∧∧ ドラマのPとお友達らしいです
( ‥)
 -( ‥)それが彼女たちのステータス
   -□  なんだろうな
 
 
 ∧∧ なんでみんな騒がないの? だそうです
(‥ )
 -( ‥)騒いで動くなら騒ぐだろうな
   -□
 
 
 ∧∧ みんな一人だから静かなのね、だそうです
( ‥)
 -( ‥)半分しか正解じゃねえなあ
   -□  
 
 
 みんな暇つぶしにやれることがあるから静かなんじゃね? つか、一人でしゃべっていたら怖いわい。
 
 
 ∧∧ 見えないわけはないんですが...
(‥ )
 -( ‥)わざと言っているのなら
   -□  社会的ステータスの誇示の
       つもりなんだろうな
 
 
 ∧∧ どんな?
( ‥)
 -( ‥)話の内容からすると語学学校に
   -□ かよっていて、ドラマのPと知り合いで
     こんな状況でも周りに流されずに
     声を上げる私たちって偉い、
     じゃないか?
 
 
 ∧∧ 降りていきました。30代ぐらいですね
(‥ )
 -(‥ )昔さ、鎌倉と江ノ島を走る
   -□  江の電に乗った時、ゆかいな
      お兄ちゃんがいたよな。
 
 江の電には由比ケ浜(ゆいがはま)という海岸と駅がある。座席に座る彼女が由比ケ浜、という地名を口にした時、カップルの片割れのお兄ちゃんが突如
 
 「ゆいがはま、由比が浜、由比ケ浜、カモーンカモーン、由比ケ浜 ゆいがはま、ゆいがはま」
 
 リズムよろしく動作をつけながら歌いだし、なんの躊躇も迷いも感じられないその通った声に、周囲にいたお客は全員、「ぷぷーー」と吹き出した。何の悪意もない笑い声だった。
 
 笑いをかみ殺して由比ケ浜の駅でおりた時、そこは自分の目的地でないことに初めて気がついた。
 
 

 

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