最終講義、帰りの路線でトラブル発生、電車が立ち往生
∧∧ 動きませんね
( ‥)
-( ‥)本でも読むか
-□
電車の中の人々はiPhoneいじったり、iPadをいじったり、それぞれ何事かしている。見たり、読んだり、打ったり、聞いたりだ。
∧∧ お姉さん2人がずっとしゃべってます
(‥ )
-( ‥)お姉さんっていうか声は
-□ 30代ぐらいだろ
時々、微妙に痛い言い回しが混じる。
∧∧ ドラマのPとお友達らしいです
( ‥)
-( ‥)それが彼女たちのステータス
-□ なんだろうな
∧∧ なんでみんな騒がないの? だそうです
(‥ )
-( ‥)騒いで動くなら騒ぐだろうな
-□
∧∧ みんな一人だから静かなのね、だそうです
( ‥)
-( ‥)半分しか正解じゃねえなあ
-□
みんな暇つぶしにやれることがあるから静かなんじゃね? つか、一人でしゃべっていたら怖いわい。
∧∧ 見えないわけはないんですが...
(‥ )
-( ‥)わざと言っているのなら
-□ 社会的ステータスの誇示の
つもりなんだろうな
∧∧ どんな?
( ‥)
-( ‥)話の内容からすると語学学校に
-□ かよっていて、ドラマのPと知り合いで
こんな状況でも周りに流されずに
声を上げる私たちって偉い、
じゃないか?
∧∧ 降りていきました。30代ぐらいですね
(‥ )
-(‥ )昔さ、鎌倉と江ノ島を走る
-□ 江の電に乗った時、ゆかいな
お兄ちゃんがいたよな。
江の電には由比ケ浜(ゆいがはま)という海岸と駅がある。座席に座る彼女が由比ケ浜、という地名を口にした時、カップルの片割れのお兄ちゃんが突如
「ゆいがはま、由比が浜、由比ケ浜、カモーンカモーン、由比ケ浜 ゆいがはま、ゆいがはま」
リズムよろしく動作をつけながら歌いだし、なんの躊躇も迷いも感じられないその通った声に、周囲にいたお客は全員、「ぷぷーー」と吹き出した。何の悪意もない笑い声だった。
笑いをかみ殺して由比ケ浜の駅でおりた時、そこは自分の目的地でないことに初めて気がついた。