ネットをうろうろしていたら、放射性物質を食べて別の元素に変えてしまう細菌だとか、そういう細菌が例えばチェルノブイリ後の大地を浄化した、とかいう話を見つけた。
∧∧
( ‥)...いや、そういう生物は
いないですよね?
(‥ )そりゃそうさ。そんなことが
起きるのなら原子力なんか
そもそも使わんからな。
17世紀の人、万有引力を提案し、まさに科学の王者と呼ぶにふさわしき男アイザック・ニュートン。実は錬金術を熱心に追求した人であった。彼は科学者、というよりはむしろ隠れた最後の大錬金術師であり、最後の大魔法使いでもあった。
だが彼は錬金術に失敗した。そして彼の錬金術師としての業績は明るみには出ないことになった。知られたのは死後、ずいぶんしてからのことである。
∧∧
( ‥)なぜに失敗したかと
申しますと。
(‥ )僕らの世界は二段構えで
出来ている。ニュートンは
それを知らなかった。
この世界の基本を構成する原子(元素)は、陽子と中性子が渦巻く原子核と、その周囲をめぐる電子という2段構えで出来ている。
電子の軌道が変化するとエネルギーが生じる。渦巻く陽子と中性子の軌道が変化してもエネルギーが生じる。
∧∧
( ‥)でも、僕らがこの肉体で使えるのは
電子の軌道変化だけです。
(‥ )僕らは電子の軌道変化で生きている
そういう生物だ。化学反応とは
そういうものだ。
電子の軌道変化と原子核で起きる軌道変化、それぞれの変化で生じるエネルギー、しかしこの2種類のエネルギー、その力の大きさが桁外れに違っている。
化学反応で生きている生物(電子の軌道変化を利用する生物)には、原子核の軌道変化で生じるエネルギーを扱えないし、操作もできない。あまりにも桁外れに違うので手が出せない。
例えばの話、人間が通常の方法で生み出すエネルギーは原子から電子をはぎとることが出来る。しかし原子核の陽子、中性子の軌道はそんな程度ではびくともしない。
∧∧
( ‥)地球中心の温度と圧力でも
びくともしませんね。
地球中心程度のエネルギーで
元素変換が起きるなら、地球は
こんな組成をしていませんから。
( ‥)ニュートンが失敗したのはひとえに
これが原因だ。人の生み出す
エネルギーでは原子核を操作できない。
操作するにしてもせいぜい粒子加速器がいいところ。逆にいうと、もしも人間のエネルギーの延長で原子核を自在に操作できたら、ニュートンの錬金術は成功していたということでもある。人の生み出すエネルギーでいかようにでも元素を変換できただろう。
∧∧
( ‥)言い換えると、生物が
原子核を操作したり
変換することはないって
ことですね。
(‥ )もしもそんなことが出来るなら
地球中心の温度も圧力も
ものともしない生物になっとるよ。
だが実際は違う。
地球中心の温度に生物が耐えられないことは誰でも知っている。
炎という化学反応、電子の軌道変化、こんなレベルのエネルギーでさえ、生物が破壊されてしまうことは誰でも知っている。
∧∧
( ‥)だけども、原子核を操作、改変する
生物の話が広まってしまうと。
( ‥)個々の知識を知ってはいるが
-□ 連動していないんだなあ。
放射性物質を別の元素に変換できる生物はいない。もしそんなことができるなら、ニュートンは物理学者でなく、大錬金術師として知られていただろう。
∧∧
( ‥)そしてまた、あなたがたが
原子炉を使うのもそれが
理由ですよね。
(‥ )電子の軌道変化を圧倒的に
凌駕する桁外れの力。
原子核で起きる軌道変化が
生み出すエネルギーに
僕らは飛びついたのだ。
放射性元素を別の元素に変換できる生物はいない。もしそんなことができるのなら、我々はそもそも原子力なんて使わなかったはずだ。
その原子炉はおそらく石油を燃やすのとあまり違わないレベルでしか役に立たない。
というかそのレベルのエネルギーを肉体が扱えるのなら、放射能はエネルギー的には脅威でもなんでもない。脅威の放射能を無毒化できる生物、というのは実のところ、言葉の矛盾だ。
∧∧
( ‥)そもそも原子炉で起きるウランの
核分裂だってあなた方が引き起こして
いるわけじゃないですからね。
(‥ )あまりにも原子核が巨大で
不安定で崩壊する。その性質を
利用しているだけだからなあ。
壊れやすいものを集めればドミノ倒しが発生する、そうして膨大なエネルギーをまとめて取り出す。それだけの話。単にそれしか出来ていない。それが原子力でもあるし、僕らの技術の限界だ。
なぜ僕らの世界のニュートンは物理学者であって、錬金術師として知られていないのか、そのことを考えるべき。
( ‥)今度、機会があったらこの話も
-□ 本に書くか。
∧∧
( ‥)というか、書いてから
削除しましたよね。
*先に書いた、化石50→*で書いて、そしてページ数が足りないので削除した。
*注:ここでは元素と原子をまったく同じものとして扱っているけれども厳密には違う。放射性ヨウ素と通常のヨウ素は元素としては同じ化学的特徴を持つが、原子としては性質が異なる。つまり原子≒元素。ようするにカテゴリーとしての広さがちょっと違う。
続く→*