自己紹介
- 北村雄一(北村@)
- イラストレーター兼ライター 詳しくはhttp://www5b.biglobe.ne.jp/~hilihili あるいは詳細プロフィール表示のウェブページ情報をクリック
2013年3月17日日曜日
黄砂と気象庁と環境省
日が変わってしばらくした夜、グリセリンを垂らして外に出しておいたスライドグラスを、夕刻、回収して顕微鏡で観察する。
∧∧
( ‥)どう?
( ‥)あのね、花粉だらけ
–□
というか、スライドグラスを肉眼で見ただけで、黄色い点々がまんべんなく落ちているのがはっきり分かる有様。
*ちなみにうちは神奈川県です。
∧∧
(‥ )スギ花粉の直径は
\– 100分の3〜4ミリ
だそうですが
(‥ )差し渡しで考えて、
日本にまで届く黄砂の
10倍ぐらいだな。
表面積で比べると、形は違えども、まあ、ざっくりいって100倍ぐらい、体積では1000倍ぐらい大きい。
∧∧
(‥ )10日に採取した土ぼこりは
□– スギ花粉よりずっと小さな
ものもあれば、差し渡しで
数分の1ぐらい
あるいは同じぐらい
あるいは数倍のものが
ありますね
(‥ )つまるところ、やはり
黄砂だと考える必要は
ないわけだ
確かに10日に関東まで届くと言われた黄砂も混ざっちゃいるんだろうけど、普通に土ぼこりだよね、これ。
∧∧
(‥ )黄砂が混ざってても
□– これでは判別できませんし
当日の状況を考えれば
土ぼこり、圧倒的に主体
と考えるべきでしょうね
(‥ )と、いうか、黄砂よりも
多分、体に悪いと思う
けどもな。
酸が付着しているであろう黄砂が薄くたなびくのと、もうもうと土煙がたちこめるのと、どっちが体に悪いのか? というのは議論されてしかるべきだけども、あの量ではねえ、土ぼこりの方が圧倒的に体に悪そうだよねえ。
ともあれ
∧∧
( ‥)10日、当日、あの土煙を
煙霧と発表した気象庁は
一部から嘘だ、と批判された
わけですけども。
( ‥)自分も黄砂だと
–□ 思っていたから
違うよ、と言われて
違和感をもったのは
事実だが、では
どう言えば良かったの
だろうねえ?
例えば環境省と気象庁、合同のサイト=>黄砂情報提供ホームページ
∧∧
( ‥)少なくとも、これだけ見ると
–/ 気象庁の黄砂の観測は
目視によるものみたい
ですね
(‥ )実際、10日当日は、
気象庁黄砂情報のサイトは
関東の黄砂確認地点が
真っ赤っかになっていた
からな。
=>気象庁 | 黄砂情報
*赤くなる:観測した場所から見た時、視認できる距離が2km未満になると赤く表示される。
これだけ聞くと、なんだ、気象庁も煙霧と言いつつ、あれを黄砂と認めているじゃないか(陰謀だ、陰謀だ)、となるけども。
∧∧
( ‥)でも、これ、視認出来る距離が
–/ 2km未満、というだけの話
なんですよね
(‥ )黄砂情報というより、
視認できる距離がこれだけ
ですよー、そう言っている
だけなんだとも言える。
気象的には、あれは煙霧になるし、視認出来る距離をもって黄砂情報とすると、関東は真っ赤になる。
それを僕ら素人は見ると、すげー黄砂だ、黄砂だ、あれ?煙霧なの? 黄砂なの? どっちなの? 嘘なの?? と。
∧∧
(‥ )でもさ、これ、説明文で、
\– 「黄砂を含む小さな砂や
ちりが大気中に
浮遊している状態
(以下、「黄砂等」)を...」
と書いてありますよね
(‥ )前もした根本的な話よな
大気中を浮遊する微細な
塵のどれが黄砂でどれが
別起源のものなのか
識別どうするの?
という問題だ。
識別できない以上、「黄砂を含む」になるし、土ぼこりが大量に舞い上がれば、そちらが圧倒的に主体、ということになるだろう。
∧∧
(‥ )それを考えると気象庁の
\– 黄砂情報は、あくまで
天候、視界、など
気象現象のみについて
述べているだけだ、
そうともとれますね
(‥ )あくまで大気中を浮遊する
微小粒子に関してのみ
語っているのだ、
そういうことに思えるね。
そして今見えているものが
「大陸由来の黄砂」
であるかどうかは、
総合的、整合的に考えて、
個別に結論づけるものだ。
そういう内容っぽいな。
あくまで、ざっくり見た限りの印象だけども。
*ただ、黄砂の気象学的な定義は視程10キロメートル以下のかすんだ状態をさすそうだ。さらに最近は気象全体を加味して判断されることになったという。参考:「黄砂その謎を追う」 岩坂泰信 紀伊国屋書店 pp20
**どうもここからするに、やはり、黄砂自体は、本来、ある種のもやもやをさす言葉でしかなく、それが大陸由来の土壌粒子だと判断するには、データの整合性に基づいた推論によらねばならない、ということのように思われる。
∧∧
( ‥)一方、ライダーで観測して
–/ いるのは環境省ですね
=>黄砂〜環境省黄砂飛来情報(ライダー黄砂観測データ提供ページ)
*ライダー:レーザーを用いて大気中の塵の大きさと分布を計る機械。先の「黄砂その謎を追う」によると黄砂に使われたのは1979年が最初。ここから、実のところ黄砂はしばしばかなり高い高度で密度が最大になり、地上2キロとか6キロを移動していくことが分かったそうな。
(‥ )あああ、確かにね、
これは環境省の仕事だよな
∧∧
( ‥)大気中を浮遊する微細な粒子
粒子の種類を問わず、
それが高い濃度であることは
健康にとって良くない。
確かに環境省の仕事ですね。
先のライダー黄砂観測ページで過去データを見ると、3月10日、東京、千葉、つくばなどに飛来した黄砂のデータを見ることが出来る。
∧∧
(‥ )これを見ると、東京は
\– 9時から14時まで、
1立方メートルあたり、
0.1~0.3mg、つまり
少ないからやや多い
であったと
(‥ )いやはや、なるほどね、
実は当日、千葉の方が
多かったりしたわけか
一時、0.3~1mgまで
増加しているからな。
また、先のHPの注意書きは興味深い。
:気象庁が発表する黄砂(目視観測)とは観測方法が異なるため、気象庁の観測結果とは必ずしも一致しません。また、局地的に舞い上がった砂や塵、霧雨を高い値を示すこともあります。ご留意ください。
∧∧
( ‥)だいたい、今まで推し量った
–□ ことと一致しますね
(‥ )それとあれだな、さすがに
ライダーでも粒子の高度や
分布、濃度、直径は分かるが、
粒子の起源までは分からんと。
まあ、そりゃ当たり前だが
先の、”10日の東京は9時から14時の間、ライダー観測で黄砂がやや多かった”という観測結果にしても、そのやや多いが、黄砂そのものであったのか、不確定な部分が残る。そういうことらしい。
∧∧
(‥ )以上を考えると、
\– 10日の黄砂騒動や
黄砂陰謀論は、
”気象学的な意味しかない
黄砂情報”を、そのまま
健康面の話に置き換えて、
理解に混乱が生じた例
そう考えればいいと。
(‥ )陳腐な言い方をすれば
気象庁と環境省の
縦割り行政を、部外者が
ごちゃまぜにしてしまい
理解が混乱状態に陥った
とも言えるかな。
∧∧
( ‥)縦割り行政という
否定的な言い様。
陳腐ですか
(‥ )陳腐だろ。どこの会社で
営業が経理に割り込んだり
経理が総務の仕事をしたり
総務が営業回りするって
言うんだよ。
組織において役割が決まっているのは当たり前だ。会社でもなんでもそうだ。それを縦割り行政だ、と単純に否定する方がどうかしている。ただ、どんな組織でもそうだけども、部外者にはこれが分かりにくい。だから、特にこのあたりの経験が少ない人はしばしば理解が混乱する。
∧∧
( ‥)あなたは営業も経理も総務も
一心同体ですけどね
(‥ )そりゃ一人だからね
でも、組織はそうはいかん。
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