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2013年3月15日金曜日

理解が混乱している典型的な事例

 
 
 hilihiliのhilihili: PM2.5という言葉/土ぼこりをなめちゃいけないのさらに続き
 
 
 ∧∧
( ‥)どうよ?
 
  ( ‥)そうねえ、ネットの反応を
    –/ ざっと見ていると、
       色々な知識がごちゃまぜ
       になっている感が
       あるかな。
 
 例えば3月10日の関東を覆った黄色く染まった空は、強風で畑の土が舞い上がったが、その時、積もって蓄積されていた中国由来のPM2.5も巻き上げられた。それゆえにPM2.5の観測数値が当日、上がったのである。
 
 という解釈。
 
 ∧∧
( ‥)この場合のPM2.5という単語が
    中国都市部を覆った
    硫酸エアロゾルだとすると、
    ひどく奇妙な解釈ですけどね
 
  (‥ )硫酸エアロゾルはそうそう
      落下するようなもんじゃ
      ないからね。
      硫酸エアロゾルが堆積する
      というのもかなり奇妙な
      考えだよな。
 
 たぶん、この解釈で言うPM2.5とは、中国の排ガスで汚染された黄砂、という意味ではないかと思う。
 
 ∧∧
(‥ )タクラマカン砂漠とかで
\–   舞い上がった「きれいな黄砂」
     が中国都市部などの排ガスを
     吸着させて「汚れた黄砂」と
     して日本、さらにはその先
     まで飛んでいくのは知られた
     事実ですけども。
 
 *注:「きれいな黄砂」でも濃度次第では体に有害です。
 
 
  (‥ )おそらくその知識と
      中国大都市部を覆った
      硫酸エアロゾルを
      ごちゃまぜにしているの
      だと思う。あるいは
      硫酸エアロゾルが直接
      黄砂の鉱物に付着する、
      そう考えたのだろうな。
      それ自体はありうるよね。
 
 そこまではかなり正しい理解ではないかと思うけども、あの日の砂嵐の最中、PM2.5の濃度が上がったのは中国由来の堆積していた黄砂も巻き上がったからだ、という解釈は正しくないだろう。
 
 
 ∧∧
( ‥)PM2.5が単に大きさを示す
    指標であるのなら、
    関東の粘土粒子とかが
    舞い上がってもPM2.5の
    濃度は上昇するでしょうからね
 
  ( ‥)黄砂自体も混ざっている
    –□ はずだろうけど、
       あんな砂嵐が起こるなら
       そんな微量の黄砂が
       あっても存在感ないよね
 
 考えてみれば、うわっ、すげー黄砂、これは尋常じゃないぞ?? と僕らが思っていた時点で、通常よりも別なものが圧倒多数で混ざっていたということなのだ。
 
 見方を変えれば、堆積していたPM2.5が舞い上がった、という解釈は、世間一般ではPM2.5という単語が、硫酸エアロゾルのような、有害物質を指し示す言葉になっていることを示している。それもむしろ、「中国産の有害物質」、しかも固体、という意味合いではないか?
 
 
 ∧∧
( ‥)それを考えると、先の仮説は
    「堆積していた中国産の汚染物質
    が舞い上がった仮説」という
    べきですかね。
 
  (‥ )それが正しい言い様なんだ
      ろうな。
 
 さて、

:3月10日の黄砂みたいなのは関東ロームから飛んできた土ぼこり仮説
:3月10日の黄砂みたいなのは、堆積していた中国産の汚染物質が舞い上がった仮説

 このふたつの仮説が例えばある
 
 ∧∧
( ‥)土ぼこり仮説を採用した人は
    舞い上がった仮説を否定する
    でしょう
 
  (‥ )否定するだろうね。事実、
      今、僕はその仮説をここで
      否定しているわけだ。
 
 *あるいはより正確にいうとこう。地上に自らの重みで、あるいは雨に付着するなどして落下してくる黄砂はあるはずだが、そんなものを普段、気にしていない時点で、その存在は無視できるほどわずかだよね。という意味。
 
 ∧∧
( ‥)反対に舞い上がった仮説を
    支持する人は、土ぼこり仮説を
    否定するでしょう。
 
  (‥ )事実、それを採用した人は
      気象庁は黄砂を煙霧と
      言い換えることで事態を
      誤摩化している、そう
      見なしているわけだからね
 
 巻き上げられた土ぼこりではあっても、結局、中国産の有害物質が混ざっているではないか、だからこそ、PM2.5の数値が上がったのだ。そういう主張だから。
 
 ∧∧
( ‥)このままではどっちの仮説が
    正しいのか分からない
 
  (‥ )言い換えるとこういうこと
      になるわけだね。
 
 仮説は自分自身の正しさを保証できない*
 
 
 ∧∧
( ‥)理論は理論自体を保証しない
 
  (‥ )優劣を決めるのは仮説でも
      理論でも、正しさでも
      確信でもない。物差しだ。
 
 ∧∧
( ‥)あなたとしては
 
 ( ‥)あの日、採取したほこりは
   –□ 黄砂よりもずっと大きかった
      畑や赤土と区別できない、
      どれも透明な似た鉱物が
      混ざっている。
      そういう物差しを使う。
 
 ∧∧
( ‥)それ自体は物差しというより
    データですよね
 
  (‥ )そうだね、むしろ仮説と
      以上のデータとの整合性、
      それを物差しとして
      使った場合、
      土ぼこり説を採用する。
      そういうことだな。
 
:採取したものが黄砂の特徴と一致せず、むしろ関東ロームの土と一致するのなら「土ぼこり説」を採用するべきだろう。

:黄砂自体は飛来するという予報だったし、割合として少数であるにせよ混ざってはいるのだろう。

:しかし、PM2.5という単語、それ自体は別に中国産有害物質を指定するものではない。そうである以上、堆積した有害物質が舞い上がったからPM2.5の数値が上昇した、という仮説を取る必要はない。

:ただし、あの黄色く染まった大気の、そのほとんど全部が関東ロームの土ぼこりであっても健康には悪いので注意が必要です。似たようなことが起きたらせめてマスクしてください。

 もちろん、以上の見解は機会があればアップデートしなければならない。理解は分かったではない。理解は仮説だ。分かったとは知的に死ぬことを意味する。理解を追求する以上、それは避けるべき。
 
 
 ∧∧
(‥ )でも、この問題、非常に
\–   やっかいなことが色々と
     混ざっていますよね。
 
 (‥ )定義、誤解、マスコミ不信
     理解が混乱する典型的な
     事例だよね。
 

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