性淘汰というとシカの角とかクジャクの尻尾とかそういう事例があるんだけども、それこそどこぞのオレ様鳥進化論者さんたちが跋扈する掲示板では、そういう形質は一種の病気というか病的なものだー、とかそういう意見が出ていたことを思い出す。
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( ‥)昔、はやった定向進化論ってやつですね。
(‥ )種に寿命があって、種が衰亡すると異常な
デコレーションが発達するとかな。
昔はやったというよりも、ダーウィン以前からあって、ダーウィン以後になってもどういうわけか生き残り、さらにはマルクス主義と親和性がよかったせいか、マルクス主義と合体したような姿になって一世代前ぐらいまで生き残っていた。あの掲示板を覗くとタイムスリップしたようなめまいを覚えるのだけども。
( ‥)ともあれ、定向進化論とかマルクス主義がふつーの発想で
人間的に親和性があるからくっついたり、それと関係なく
何度もリバイバルするんだろうけどもね。
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( ‥)一定方向に進化するってのが人間的な発想だと?
というか、Aがこうだった、Bがこうだった、だからそういう法則があるのだろう、という所まではまっとうな推論なのだけども、一定方向に進化するずら、とか、病的にでっかいから病気でしょ? という説明になってない説明をチョイスしちゃうのがまっとうではないけども人間らしいっぽい。
例えばテタヌーラの分類階級は下目で前足の指が3本の肉食恐竜であると定義できる、と嘘八百を人に教えるとどういうわけか相手がそれを真に受けるようなもん。定義が嘘うんぬん以前に、こんな言葉に意味はない。ないけども知った気にはなれる。説明それ自体が本当に有効な説明であるかどうか以前に、その説明を聞いて知った気になれるかどうかがむしろ問題で、知った気になれればそれで相手は信用するらしい。
一定方向に進化するように見える(現在の生物を見ると生物には無数の変異があるのに、ある変異だけがチョイスされてそれだけが累積する)のはなぜなのか? と問うている時に、一定方向に進化するんでしょ? では説明になっていない。あるいは現在の生物を見ていない。でもなんか人間はこういういい加減な説明をされても分かった気にはなるらしい。あるいは安心できるから取りあえず鵜呑み?
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( ‥)まあ、分かってはいることに
なるんでしょうけどね。
(‥ )これはこれこれだ。そう説明文をつければ
その説明文では応用がまるで効かないとしても
”分かったことにはなる”からなあ。
例えばシカの角は性淘汰なんかじゃなくて、あんな異常な形質は病的に見えるから病気でしょ、これもまた説明になっていない。病気だとしてもなぜその種族が一様にその状態なのかが問題になるのであって、一定になっているから一定になる傾向があったのだ、というのでは説明とは言わない。
なぜ病的な状態がはやったのか、そのプロセスを説明して検証できるような型式にしなければいけない。そういう型式にしてそして検証して初めてまっとうな意味で理解したと言うことができる。
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( ‥)確かに病気でしょ?という説明でも”分かる”という意味では
説明になっているんですけどね。
(‥ )でも、病気に見えるから病気でしょ? ふーん、じゃあ
その仮説を君はどう検証するんだね? と
言われたら困るだろうな。
病原菌でも探すかね? てきとーな説明で分かった気になるのはいいのだが、てきとーな説明だから検証する時に困ることになる。
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(‥ )ダーウィンさんは長い間変化しない種族と系統を示して
□- 定向進化を否定したんですよね。
(‥ )種族を発展させる力なんてそんなの
あるわけないってね。
もちろん、定向進化論も進化しない生物の存在を説明できる。その生物は活力を失ったのだ、そう言えば良い。だけどもそれは
”長い時間変化していない”
を
”活力がないので変化していないのである”
と言い換えただけで、説明とは言いがたい。せめて変化しない種族はミディ・クロリアンが減少しているはずだからミディ・クロリアンをさがそー、とかてきとーなメカニズムを言えば自説を検証すると意気込む点ではなんぼかましになるかもしれない、先行き真っ暗だろうけども。
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( ‥)生物おのおのの進化の速度というか
変化の速度が違うのは。
(‥ )種族を取り巻く環境や生存競争相手が違うからだ、
というのがダーウィンの説明なんだけども。
これなら検証できるし、性淘汰も検証できるし、事実として検証されてきたわけで。
( ‥)説明って実際にちゃんと検証可能な
型式にするべきだよな。
∧∧
( ‥)まあそうでしょうね。
そして思う。性淘汰も自然淘汰も進化学も系統解析も科学哲学も知らないで、例えば鳥の進化をうんぬん論ずるってのは、そうねえ、小説家のように仮説を生産して楽しむ分にはいいけども、科学とは現実を操作するほど応用が効くものだという観点からすると、さてはて、正当化できるとは言いがたい。科学はSFでもなければ小説でもないよねえ。