自己紹介
- 北村雄一(北村@)
- イラストレーター兼ライター 詳しくはhttp://www5b.biglobe.ne.jp/~hilihili あるいは詳細プロフィール表示のウェブページ情報をクリック
2015年8月26日水曜日
古代エジプト文明では月までの距離すら分からない
古代エジプトはすごい。ピラミッドはすごい。あんなものを作れた文明はすごい。
古代エジプトがそのまま発展すれば、すぐに機械文明を作り上げ、月や火星にまでいけたのではないか?
∧∧
(‥ )...いや無理だよね?
\‐
(‥ )古代エジプトの算術では
月までの距離すら
算出できないからな
月までの距離を算出するには、三角法を使う必要がある。地球から観測できる月食、星食から角度を求め、距離を出す。
だが古代エジプトにはこの三角法がない。
∧∧
(‥ )古代エジプトの算術って
\‐ そんなたいそうなレベルでは
ないんだよね
分数計算ができる
色々な図形の面積が計算できる
底辺と高さの比例を計算できる
でもそれだけ
(‥ )そして
比率から角度を求め
角度と辺から
未知の距離を求める
三角法を
彼らは持っていないのだ
だから古代エジプト人は月までの距離を導きだす事が出来ない。
仮に未来人が距離さえ入力すれば自動的に飛んでいけるロケットを古代エジプト人に渡しても、古代エジプト人が月までロケットを送り込むことは不可能。
∧∧
(‥ )まあ、何度も飛ばしてたまたま
\‐ 月に到達したロケットがあって
そこから何らかの経験則を
導くことはできる
でしょうけどね
(‥ )現代人のように
あらかじめ計算する
そういうことは
古代エジプト人には
不可能なのだ
そういう数学を
持っていないのだからな
逆に言うと、その程度の数学でもピラミッドを建てられるということである。
∧∧
( ‥)ピラミッドを作ること自体は
それはそれは大変なこと
だけども
あらかじめ構造計算しなくても
経験則から作れる
そういうことだね
(‥ )クフ王のピラミッドとかの
前にすでに幾つも
ピラミッドが建設されて
いるからなあ
有名な屈折ピラミッドが、当初予定された角度では壊れてしまうので、急遽、途中から角度を変えた、という仮説が本当なら、失敗もあった、その経験を踏まえたということでもあろう。
*=>https://www.google.co.jp/search?q=屈折ピラミッド&biw=977&bih=762&site=webhp&source=lnms&tbm=isch&sa=X&sqi=2&ved=0CAYQ_AUoAWoVChMIk_zgxsbFxwIVx…
そしてまた古代エジプト人は火星にいくこともできない。
∧∧
(‥ )三角法を知らないから
\‐ 火星までの距離を
測定できないことも
さることながら
(‥ )火星までの距離を知るには
三角法以前にだ
地動説体系じゃないと
駄目なんだよね
古代エジプト人の世界はどうも天動説である。というか、おそらくそれ以前の問題で、世界の周りを天体が円軌道で動いていると考えていたかどうかも怪しい。
∧∧
( ‥)円軌道を描いて動く
そういう世界観を示したのは
幾何学を確立した
古代ギリシャ人だからね
( ‥)エジプト以上に
‐/ 数学と天文学が
発達していた
古代メソポタミアも
円軌道という幾何学的な
世界観は持っていない
のだよな
さらに、古代ギリシャの幾何学的世界観もそれだけでは駄目なのだ。天動説だったから、という根本問題もあるが、当初の天動説ではそもそも話にならないのである。
例えば天動説というと皆が思い浮かべるのはアリストテレスの天動説なのだが、これはまったく使えない。
∧∧
(‥ )アリストテレスさんの天動説は
\‐ 惑星の逆行という概念が
無いからね
(‥ )紀元2世紀の
プトレマイオスの天動説で
天動説モデルは基礎が出来る
ここで惑星の逆行は
正確に説明できるようになる
天動説というと現代人は鼻で笑うが、実物であるプトレマイオスの天動説体系は非常に良く出来ていて、計算には高度な算術が必要になる。鼻で笑っていたことを自殺したくなるような精密、正確な代物だ。
だがそれでもなお、天動説には根本的な問題がある。プトレマイオスの天動説モデルのままでは、各々の惑星の軌道にまったく関連性がない。これを関連づけるには地動説でなければならない。
プトレマイオスの天動説を地動説に変換して初めて、惑星の逆行が地球軌道と関連すること、逆行の大きさから惑星同士の距離が比として導けることが分かるようになる。
*コペルニクスの地動説は、プトレマイオスの天動説の発展型であるイスラーム天文学を地動説に変換したもの(ぶっちゃほとんどパクリである)。
∧∧
( ‥)コペルニクスさんが地動説を
提案して
それから比例にこだわる
ケプラーさんが惑星の距離を
比として算出して
(‥ )そこでさらに
月、地球、太陽が描く
直角三角形から
月、地球、太陽の距離の
比を出して
月までの距離から
地球軌道の大きさを求め
これを惑星軌道の比率に
当てはめて
ここまでして初めて
火星までの距離が分かる
以上を踏まえれば、古代エジプト人が月や火星にいくことなど出来ないことが分かるだろう。これは技術のあるなしの問題ではない。
古代エジプト人はピラミッドは作れたが、月や火星までの距離が分からない。それを算出する数学を持っていないし、その基礎となる世界観も持っていない。これではどうあがこうが、古代エジプトがどれだけ発展しようが、月や火星にいく事など不可能だ。ピラミッドの延長線に星の世界は存在しない。
∧∧
(‥ )言い換えればですよ
\‐ 現代人は
ピラミッド建設を延長すれば
星の世界にいけるだろう
そう考えているわけだね
(‥ )僕らが子供時代に
習う数学は
古代エジプトも
古代メソポタミアも
古代ギリシャも圧倒的に
凌駕する内容なのだがな
俺たちはその高度さに
まったく気づいて
いないのだ
ピラミッドすげーな、こんなものを作れる文明ならそのまますぐに月までいけたんじゃね?
そう、人は考える。だが実際には、三角法を持たないエジプト文明では月までの距離すらわからず、月にいくことはできない。
そんなことも知らずに古代エジプトすげーと思う人も、学校教育で三角法は習っているはずなのだ。単に僕らは、三角法だのサイン、コサインだの、こんなもの何の役に立つのだ? と馬鹿にして鼻で笑って忘れただけである。
教育において基本知識を詰め込む意味とはここにある。馬鹿にして笑っているものの中に、本当に大事なものがあるってことだ。
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