自己紹介
- 北村雄一(北村@)
- イラストレーター兼ライター 詳しくはhttp://www5b.biglobe.ne.jp/~hilihili あるいは詳細プロフィール表示のウェブページ情報をクリック
2015年8月18日火曜日
天才にスパゲッティは再現できない
昔、電子計算機が実現した時、人はこれで人間の知能と知性を電子的に再現できる。そう楽観的に考えた。こういう楽観論はほんの一世代前には当たり前だったらしい。
∧∧
(‥ )アシモフ博士が
\‐ ロボット三原則を考えたのも
ロボットが普及したSF
『我はロボット』を書いたのも
博士から見て一世代後の
1990年、2014年には
ロボットが人間の手伝いをして
いると予想したのも
当時はそれが当たり前だった
(‥ )当たり前の発想で書かれた
当たり前の予想だった
そういうことだろうな
だが実際にはそうではなかった。人工知能は今もってまったく実現されていない。
∧∧
( ‥)なぜでしょうね?
(‥ )時々思うのだけどさ
とびきり頭の良い人間が
人工知能を作ろうとしている
わけだよな
でも人工知能は
頭の良い人間には
作れないと思うのだよね
少し話がずれるけども、以前、ネットで、生物学で読むならこの一冊が重要だ! そうおされている本があった。
そこの管理人が押している本は、ダーウィンの「種の起源」ではなかったし、フィッシャーや木村資生の本とかでもなかった。
もっと理論的で数学的な本だ。
生物の成長とパターン形成はタンパク質の分散と濃度を元にした方程式で示すことができる。
∧∧
(‥ )でもこの本
\‐ 生物関係の人はほとんど
読んでいない本ですよね
(‥ )理系の中でも生物系は
数学が苦手という傾向が
あるけども
それだけじゃないんだよな
なんでかというと、その本、ほとんど全然役に立たない本だからである。確かにその本に書かれたような事例は生物の世界であるにはあるし、その本に書かれたような成長パターンを示す生物もいるにはいる。
だがより正確に言うと、ある生物が成長する過程で、そういう成長パターンを示す場面もあるにはある、と言うべきだろう。
∧∧
( ‥)つまりほとんどの場合
そんなことなんか
していませんよと
( ‥)生物は蛋白質を使って
‐/ 体作りや代謝を実行する
だとしたら
蛋白質分子の拡散と
その組み合わせで
生物の成長も代謝も
数学的に記述でき
方程式で示せるはず...
とはならないのであった。実際に明らかにされてきた生物の胚発生はもっとめちゃくちゃだった。
∧∧
(‥ )確かに蛋白質分子を
\‐ 使っているから
拡散と濃度が重要なのは
正しい
そして複数の蛋白質の濃度の
組み合わせでパターン形成する
これも正しいのですけどね
(‥ )問題はそれが
方程式で示せるような
きれいな仕組みではなく
ぐだぐだな仕組みだった
そこなんだよな
例えば卵の前端に供給された分子が後方へ拡散していく。これだけでもう前後のパターンが形成できる。
はずなのだが、この分子を前方に偏らせる分子が存在する。これがないと前後軸がずれる。
以上のように前後が決定された後、これを手がかりに別の分子が発現し、前後のパターンをより明瞭にする。
だけで済むはずなのだが、実はこの分子は供給が二通りある。そして一方が多すぎるのだ。だったら供給を止めれば良いのだが、そうはならなかった。後ろのものを失活させる役割を担った分子が存在する。そしてその分子を後方に局在化させる別の分子も存在する。
∧∧
( ‥)もうなんというか
いかにも泥縄
お前ら後から付け足し
付け足ししただろと
分かる仕組みでね
本当だったら2つだけで
済むはずなのに
これだけで5つ
正確には言えばもっと多くの
遺伝子と蛋白質が
制御に関わるというね
(‥ )原理は確かに
拡散、濃度、
結合による発現の促進
あるいは反対に抑制
これだけなんだ
だけどこの単純な
原理原則から
こんがらがった
複雑怪奇な仕組みが
作られている
世の中にはスパゲッティコードというものがある。ひっちゃかめっちゃかでどうやって動いているのかよく分からないプログラムのことだけども
∧∧
(‥ )生物はまさにこれだと
\‐
(‥ )そしてだな
知能の根源である
神経の配線もこうやって
作られてるわけだよ
つまり知能は
スパゲッティコードから
産まれてくる
だとしたら
頭が良い人間に
人工知能なんか
作れるわけないよな
∧∧
( ‥)でも人工知能のような
複雑な機械を作るには
頭が良い人でないといけない
これは矛盾だね
(‥ )だからいつまでたっても
人工知能って
実現出来ないんじゃね?
そしてこうも予測できる、計算機の容量がついに人間を越えて、機械が人類以上の存在になる特異点、シンギュラリティの発生は今から一世代後、2045年である。この予測は完膚なきまでに外れるだろう。そして、2045年の人間は一世代前の我々とその予測を、ああ子供の頃、そういう未来にわくわくしたよなあと、郷愁の想いと共に振り返るだろう。
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