自己紹介
- 北村雄一(北村@)
- イラストレーター兼ライター 詳しくはhttp://www5b.biglobe.ne.jp/~hilihili あるいは詳細プロフィール表示のウェブページ情報をクリック
2013年7月31日水曜日
海水売りがへこへこと歩く
理解出来たが、理解が正しいのか分からん。
∧∧
( ‥)ありがちですね
( ‥)理解は理解自体を
‐□ 保証してくれないのだ
当然だよね。
さて
hilihiliのhilihili: どんな誤差を次世代にの続き
例えばある掲示板で鳥の進化を論ずる俺様理論屋くん。神様が生物を作った、というのは頭ごなしに馬鹿にするくせに、生物は目的を持って進化している、そう思い込んでいる。
∧∧
( ‥)進化が目的を持とうが、
神様が生物を作ろうが
目的を持つ、という
点では同じですね
( ‥)宗教を馬鹿にしているのに
‐□ 信仰者と同じなのだよな。
教科書を読まない愚か者とは
こういうもんよ
これはつまるところ、人間は宗教や神を馬鹿にするくせに、思考方法は馬鹿にされる方も馬鹿にする方もまるで変わっちゃいない、ということでもある。
そりゃあ、変わるわけないのだ。同じ人間なのだから。それにホモ・サピエンスは宗教を信じる猿なのだ。種族的にそうなのだからどうにもなるまい。神を否定しても、そいつは自分の神を作っているだけなのだ。
∧∧
(‥ )進化に目的がある。
\‐ 生物はデザイナーが作った
ものである。これは、
世界は調和的で目的と
役割を持つ、という
考え方ですよね
(‥ )興味深いことにさ、
ナウシカって
目的と役割の強制から
脱出する話である一方で、
目的と役割を強調した
話でもあるのよね。
世界浄化計画を押し進める墓と、それを拒否して計画を破壊し、人類が進化する可能性にかけるナウシカ。
∧∧
( ‥)これだけ見ると、杓子定規に
計画経済を押し進める指導部に
自由市場を認めろ、と
収穫した野菜を持って
詰め寄る田舎のお姉さんの
対立に見えますね
( ‥)その一方ではさ、
‐□ 腐海は調和と共生と
揺るぎない目的に
向かって進む生態系として
描かれているのだよね
事実、腐海で暮らす人類、
森の人も、虫の卵は虫に
お願いして、
分けてもらうんだ、
とか言ってるからね。
いやあ、いくら腐海が人工生物による人造の生態系で、なおかつ浄化という目的を果たすように作られたからといって、そんな調和だの共生だの、初期の目的だの、1000年も保持するわきゃあないでしょう。
∧∧
( ‥)人造でも生物なら繁殖時に
コピーミスが生じるし、
変異が発生して、必ず
進化が起きますからね。
(‥ )1000年もあれば
浄化なんていう役割を
放棄して、
コストパフォーマンスが
良くなった変異体が
腐海の大部分を
占めてるよね。
浄化計画なんか、一瞬にしてぱーである。
∧∧
(‥ )変異を起こさないように
\‐ 調整するって言ってもね
(‥ )そんな単一クローンの
集団なんか、
寄生虫や病原体の前に
ひとたまりもないからね
安定して存在なんか
しないよね。
仮に病原体には免疫系で対抗できる、としても、結局はうまくいくわけないのだ。変異を起こさないようにする、と言っても、確率は0ではない。そしてごくごく低くても起きればそれが突破口になる。
∧∧
( ‥)”変異を起こしやすい変異”が
生じたら、その一回の変異、
それだけで終わりですから
( ‥)だからあれだよね、
‐□ 遺伝子操作で生じた
粘菌の暴走を
食い止めるため、
腐海が自ら食われることで
粘菌を自分たちの系に
取り込んで調和を
取り戻す。あれは
作者である監督さんの
世界観や自然観が
現れた場面だよなあ。
*戦争のための遺伝子操作で生じた粘菌の変異体。すべてを食い尽くして拡大していく粘菌を阻止するかのように突進したオームたちは食われるが、それと同時に粘菌に取り込まれた腐海の胞子が発芽、逆に粘菌を食って成長し、粘菌は一気に拡大した新たな森に取り込まれて世界は均衡を回復する。オームの目的は粘菌の打倒ではなく、自分たちの世界にむかい入れることだった。これが作中の展開。
だが、実際にはそんなこと、あろうはずがない。
一見するとそう見えるようなことは事実として起こりうるけども(例えば侵入生物が初期は大量にはびこるが、やがて数を減らして現地の生態系に取り込まれていくように見える場合)、実際にそこにあるのは生態系の役割や目的や調和ではない。生存競争と力の均衡だ。
**これは要するに同じ物事を説明する仮説や理論は複数ある、ということでもある。例えば、今西進化論が自然を説明できるからといって、今西進化論が正しいわけではない。ただし、一見すると正しい理論と似た解答を与える場合があるので、結果だけは正しい場合がありうる。
***天動説と地動説はどちらも天体の動きを説明できるが、両方とも正しいわけではない。だが、結果はどちらも正しい。たぶん、あの監督さんが以上のような自然の理解をしているにも関わらず、物語のオチ、それ自体はダーウィニズム的だった、という不思議な展開は、これが原因ではないかと個人的には予測する。
∧∧
(‥ )宮崎駿さんの自然観って
\‐ 今西進化論的ですかね
(‥ )マルクス主義の
決定論と目的論から
逃れようとする一方で
調和、共生、全体主義を
掲げる今西進化論に
向かう。
なんというかね、
これは人類の業だよね。
人類の歴史の中では、
目的に向かう、とか、世界の本来あるべき姿は調和である、とか、人間はそこから外れた調和を乱す存在だ、だから調和の世界に向かわねばならない、
そういう世界観が長く続いた。
∧∧
( ‥)今も続いているでしょ
( ‥)そういう点ではね、
‐□ ダーウィンの進化論は
人類史における転換点
なんだよな。
目的論を排除し、種の誕生を論じていながら、種という概念をも破壊して、機械的に淡々と世界を説明する。
∧∧
( ‥)それも確率的にね
( ‥)確率とか統計学とか
‐□ これも目的論の排除と
同じぐらいに画期的な
ことだったのだよな。
人間が確率を自在に
理解できないのは、
放射能騒動を見れば
よく分かるからね。
*この放射能がどのぐらい影響するのか? という効果の話と、どれがこの症状の原因なのか? という因果関係の推論の話と、これが原因だと言えるのか? という統計的に検証する話がごちゃまぜになってる。
言い換えると、今でもダーウィンの自然淘汰説をまるで理解できない人がいるのも、今西進化論とかマルクス主義的に解釈された進化論を信じる人が、今もなお存在するのも、当然と言えば当然。
目的論の排除と種の概念の破壊、統計学の使用。これは人間の思考と相容れない、そういうことなんだろう。
それを考えると、ナウシカの最後に、ええっ、と思う人がいるのも、納得できる。
*ナウシカたちは汚染に対抗できるよう遺伝的に調整されているので、浄化された環境では死んでしまう。つまり腐海が世界を浄化し尽くした時に絶滅する運命。計画の遂行者である墓だけがその運命を阻止する技術を持っているけども、ナウシカは、もはや現実と齟齬をきたしている浄化計画に従うことを拒否。人類絶滅のリスクをあえて増大させる代わりに、墓を殺して計画という牢獄から解放される道を選ぶ。
∧∧
( ‥)決定論的に考えれば
人類絶滅確定なんですよね
(‥ )でも、あれは
たいした危機じゃ
ないんだよな
人間には新たな変異も生じれば、メンデル遺伝に従って変異のストックが大量にある。浄化にしたがって必要な汚染物質が少なくなれば、それでも生き残れる個体が増えて、人類は浄化された環境に適合するだろう。単純にそれだけの話なのだ。
∧∧
(‥ )でも、そう考えない人から
\‐ すれば、ナウシカの決断は
いわゆるバッドエンドに
見えてしまうと
(‥ )なんか想像しちゃうのよ
あの時代、
海は汚染物質が集積して
死の世界になって
いるのだよな。
だからさ、浄化が進んだ
さらに未来。
人々は新しい環境に
かなり適合しているの
だけど、それでも
汚染物質がまだ必要で、
腐海の植物を庭に植えたり
海水を売って歩く人とか
いるんだろーなーって。
∧∧
( ‥)すごい牧歌的な雰囲気
だったりしてね
(‥ )氷売りや金魚売りの
おっさんみたいなのがな
村々や家々の間を
へこへこ歩いてるの
かもしれん。
子供電話相談室では、ヒソクサリと一緒にしたらクワガタが死んだけど、なんでー? という質問に、あのね、僕らと違って、クワガタは腐海の菌類と一緒にはできないんだよ、とか、そんなやり取りしてるんだろう。
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