自己紹介
- 北村雄一(北村@)
- イラストレーター兼ライター 詳しくはhttp://www5b.biglobe.ne.jp/~hilihili あるいは詳細プロフィール表示のウェブページ情報をクリック
2013年7月4日木曜日
作り手は客のことなんか考える必要はない
hilihiliのhilihili: あれから27年が経過した。人生は有限なりの続き
作り手は客のことなんか考える必要はない。少なくとも有効な物差しがある場合は。
∧∧
( ‥)この薬は臨床試験で
–□ これこれな効果があり、
副作用は以下以下。
注意事項はしかじか。
(‥ )でも苦いからこの
゜– 薬でいいです
∧∧
( ‥)...いいけど、こっちを
–□ 呑まないとあんた
死ぬよ。
(‥ )まあ、有効な物差しが
あるっていうのは
こういうことだ。
確かに客の要望なんかどうでもいいのだ。物差しが有効であり、その物差しが妥当である時、物差しに沿って制作し続ければ良い。
買うか買わないか、その結果どうなるのかは客の自由であり責任だ。自由を行使して買わずにいて、結果的に死んでも、お客自身は幸せであった、そういう可能性だってありうる。
買うか買わないか、望むか望まないか。それはすでに物差しによって判断される領域じゃない。それは客が判断することで、その結果どうなろうが、死のうが発狂しようが、トンデモくんになって一生を棒に振ろうがどうでも良いことだ。
∧∧
(‥ )まあ、1粒100万円の
\– 薬じゃ駄目でしょうけどね。
どうしてもドンブリ一杯
服用しないといけない
というのも駄目ですし、
使用するたびに激痛に
襲われるのも問題でしょうね
(‥ )物事を規定するのは
妥当性の物差しだけでなく
経済とか実用性とかの
問題もからんでくる、
そういうことだね。
あとあれな、薬の例だと
妥当性がかなり明瞭だけど
デザインとか漫画だと
そこんところが
不明瞭になってくるね。
でも、まあ、デザインでも漫画でも究極的には同じなんだろう。作者がこうでなくちゃいけない。そしてこうなんだ! それを打ち出した時、お客の九割が消えたって別にかまわないんである。
∧∧
( ‥)それで収入が減ったとしても
(‥ )作品を作り続けられる
収入さえ確保できていれば
それで生産し続けられる
からな。そしてそれは
それ自身のブランドになる
まあ、問題ないわけよ。
しかし、それを嫌った彼は言った。作者のことを考えない作家の姿勢は許せないと。
∧∧
( ‥)でも、物語を書こうとして
いた彼は、そのまま消えた
( ‥)まあ、当たり前かもね。
–□ 彼は物語を書こうとした
だけど、その主張は
消費者のものでしか
なかったからな。
作り手になるべき人が消費者目線なのだもの、そりゃどうにもならんだろう。
∧∧
( ‥)こんなのが欲しいなあ、
これ、売れるんじゃね?
そういう着眼点は
必要なんですけどね
(‥ )でもそっから先はもう
作り手だ。もはや
消費者足り得ないよ。
消費者目線だなんて、出来もしない事を言うものではない。作り手でありながら自身の消費者目線とやらを信じるだなんて愚かだとしか思えない。
一方、客のことを考えていない! 彼がそう批判した作家は今だに仕事をしていて、宣言通りアニメを作り、デザインまで一新して打って出ている。
∧∧
(‥ )批判した彼は消えて、
\– 今、何をしている
でしょう?
(‥ )まあ、おいちゃんよりは
まっとうな人生を
歩んでいると思うがね。
∧∧
( ‥)あなたはお客目線では
考えない?
(‥ )考えないなあ。
考えようが無いし、
考えちゃいけない
と思うよ。
実際、お客のことを考えたら、おそらく嘘ばっかり書いていただろう。
∧∧
( ‥)分かりやすい嘘をね
( ‥)分かりやすい。それは
みんなの心理に沿って
恣意的に組み上げられた
嘘である、からな。
例えばこう書いたのではないか?
鳥の進化は今、百家争鳴の状態が続いています。次々に羽毛を持つ恐竜が見つかり、鳥と恐竜の境界線があやふやになってきました。始祖鳥が鳥の祖先ではない、という説さえも浮上してきています。鳥の進化の研究は振り出しに戻った状態で、目が離せません。
∧∧
(‥ )ひとつひとつの情報は
\– 多少、事実が入っていますね
(‥ )でも全体としては大嘘だな
しかも困ったことにな、
こういうことをまじで
書くライターがいるからな
あやふやになったのは、お前の理解力だろう。
∧∧
( ‥)あなたならなんて書きます?
(‥ )ざっくり言うとこんな感じ
鳥の進化をめぐる仮説は確かに紆余曲折があった。だが、これは今から30年あまり前に、”実は1世紀前の見解が正しかった。言い換えればここ1世紀の間、私たちが採用していた仮説はただの根拠のない回り道だった。”、ということが分かった。それだけのことだった。
鳥が恐竜であるという見解は確実であったが、データが増えるにつれてさらに堅牢なものとなり、様々あった色々な仮説も急激に収束した。分岐図を見る限り、基本的に、鳥は地上から飛び上がったのだろう。ただ、最後の最後、”自立的な前肢による飛翔”が進化するその過程で、樹上生活という局面があった可能性がある。ただし、これは始祖鳥やミクロラプトルの系統上の位置によって答えがぶれる。現状、このぶれを押さえるにはデータが足りないが、化石記録による解像度の限界にほとんど近いところにまで迫っているようであり、これ以上の確定は少し難しいだろう。
より確かなことを言うにはジュラ紀の化石記録が必要で、現状、それが見つかるまでしばらくは小休止が続くと思われる。多分、10年以上。ともあれ、ここまで進化の詳細な過程が分かってきた例は珍しい。
∧∧
(‥ )あまり分かりやすいとは
\– 言えませんね
(‥ )だから言い換えて
しまうとあれなのさ。
お客の都合など知らん。
というか、自分に仕事を持ってくるのは編集者であって、客と言えるのは実は彼らだ。そして本の内容を監督するのは監修者であり、要望を申し述べる研究者たちであって、読者対象は大学生であって、なにより科学の本であるからには科学のルールに従わねばならぬ。
∧∧
( ‥)つまり物差しがある
( ‥)買うか買わないか、
–□ お客の都合なんて
そんなこと知った
こっちゃないさ
∧∧
( ‥)...まあ、それはともかく
仕事してくださいよ
これは半年以上先の話
今は別の仕事をしている
わけですからね
( ‥)いやー、今日はまだ
–□ 稼ぎが0だからねえ
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