自己紹介

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2015年4月28日火曜日

死者の夢は作り物であった

 
 夢を見た。死んだ知り合いと話をしていた。
 
 いや、知り合いといっては相手に失礼かもしれぬ。なぜなら最後の数年間、仲は良くなかったからだ。
 
 ∧∧
(‥ )昔の人はそういう夢を見ると
\‐  死者との対話
    意味あることと
    占ったものですけども
 
  (‥ )違うねえ
      あの受け答えは
      彼がするものじゃなかった
      あれは俺の脳が
      勝手に作った
      あからさまな
      人工物だったよ
 
 とはいえ、こんな夢を見たことには理由があろうし、思い当たる節がある。
 
 ∧∧
( ‥)ガンの本を読みましたと
 
  (‥ )ガンは細胞と遺伝子の
      暴走である
      その説明自体は事実だが
      説明になっていない
      ただの例え話で
      原因の解説ではないのだ
 
 ガンの本を幾つか読んでも、何をいってるんだからさっぱり分からない。しかしふと思いついた。細胞のガン化。これって、ようするに自然淘汰だよね?
 
 ∧∧
(‥ )人間は数十兆の細胞で
\‐  出来ている
    細胞同士には競合があり
    自己増殖に有利な変異を
    起こした細胞は
    子孫を必然的に増大させる
    細胞のガン化は進化によって
    加速される
 
  (‥ )つまり人体内部における
      自然淘汰と進化で
      ガンが必然的に
      発生するのだ
 
 そう思って調べたら、論文や本があることが分かった。
 
 [ Cancer The evolutionary Legacy] Mel Greaves

 Amazonでは中古しか売られていないが和訳もあった
 
「がん 進化の遺産」メル・グリーブス ブレーン出版 2002年

=>Amazon.co.jp: がん―進化の遺産: メル グリーブス, Mel Greaves, 水谷 修紀: 本
 
 
 ∧∧
(‥ )訳が少し難解ですね
 □‐
 
  (‥ )イギリス英語なんで
      大変だったと
      後書きにある
      原著も買ったし
      場合によっては
      付き合わせれば良い
 
 本の内容はそのままだ。自然淘汰によって人体の細胞には必ずガンが生じる。
 
 ∧∧
( ‥)つまり人間が寿命を
    伸ばせば伸ばすほど
    確率論の必然から
    確実にガンになる
 
  ( ‥)前もいった話だな
    ‐□ 細胞の集合体である人間は
      個体として
      存在出来る時間が
      必然的に限られている
 
 細胞のガン化を阻止するあらゆる仕組みがある。細胞に対し、意図的に寿命を設定する、分裂回数を可能な限り制限し、これを逸脱しても被害を最小限に抑える構造、さらには細胞における遺伝子の逸脱を察知した時、細胞もろとも自殺を発動する遺伝子の存在。
 
 そこまでしても、細胞のガン化と個体としての統制の喪失は時間の問題である。いずれ遅かれ早かれ、どこかの細胞が死を拒否して不死化する。不死化した細胞が人体を破壊する。不死化によって個体が崩壊する。
 
 ∧∧
(‥ )人体の不死化というのは
\‐  理論上あり得ない
    そういうことですよね
 
  (‥ )だから
      彼の夢を見たのだな
      あの人は人間の不死化を
      信じていたからなあ
 
 彼も、寿命を延ばすとガンの発生確率が増大して手に負えなくなる、というのは知っていた。だがこれはどちらかというと経験的な事実でしかなく、理解そのものではない。
 
 一方、彼は今西錦司とグールドを信用していて自然淘汰説は葬り去られたと信じていた。

 そんな彼である。人体内部における自然淘汰と生存競争によって個体は必然的に崩壊する。彼がこの説明を聞いたとしても、理解できないだろう。
 
 ∧∧
( ‥)それに思い至ったから
    あなたは
    亡くなった人の夢を
    見たのですか
 
  (‥ )多分ね
 
 そしてここから言えることもある。
 
 人間とそれを支配する遺伝子たちが自分のコピーを作り、存続するには、個体が死なねばならない。
 
 というか、どうしても個体は崩壊するからそれしか方法が無かろう。
 
 同一個体を作る細胞はひとつの受精卵から生じたクローンのはずなんだが、クローンとて同一ではありえない。自然淘汰と生存競争で遅かれ早かれ、個体としての統制を喪失してしまう。 
 
 それゆえ、崩壊する前に子孫を作らなければいけない。
 
 これはつまり
 
 ∧∧
( ‥)自分のコピーを最大限に
    増大させる
    この利己的な目的のためには
    自分が死ななければならない
 
  (‥ )自分の利己的な利益を
      最大にするには
      自分が死ぬ必要がある
      これを踏まえるとあれだ
      不老不死を実現した瞬間に
      人類は絶滅するのだろうな
 
 いや、正確にいえば、不老不死族と寿命制限種が共存して、不老不死種は全滅し、残るのは寿命を意図的に制限した個体たちだけである。そういうことになろう。
 
 それにしても、冒頭の彼、不老不死を望み、永遠の生を渇望して死んだ彼は、こんな話を聞いたら多分激怒するだろう。だがしかし、事実はこういうことだろう。
 
 それを考えれば、夢に出てきた彼はもちろん彼ではない。あれは自分の脳が作り出したまったくの別物だ。少し悪いことをしたようにも感じる。
 
 ∧∧
(‥ )まあ後はもっと
\‐  資料を調べることですね
    これってまさに
    個体は遺伝子の
    乗り物でしかないし
    そもそも
    そうでないと存続は不可能だ
    そういう話だしね
    すでに言及があるのでは?
 
  (‥ )こういう理解が先にないと
      以上のようなことが
      書かれているのに
      それを読んでも
      見落としている可能性が
      あるからな
 
 まあ、ゆっくり調べれば良いのだ。


 これはhilihiliのhilihili: 個体の存在は100%完全であるわけではないの続き
 
 
 

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