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2015年4月20日月曜日

個体の存在は100%完全であるわけではない

 
 得体が知れない説明というと、例えば、”ガンは細胞の反乱である”、とか、”ガンは細胞の暴走である”という説明で。
 
 ∧∧
(‥ )確かに反乱や暴走では
\‐  あるのでしょうけどね
 
  (‥ )だけど
      説明が擬人的だ
      うんぬん以前に
      説明になって
      いないんだよね
 
 なぜ反乱したのか? なぜ自動的に暴走するのか? そこが知りたいのであって、反乱しています、暴走しています、ということを知りたいのではない。

 そもそも反乱だの暴走というのは実際に起きている現象を単に申し述べているだけで、説明でもなければ原因でもない。
 
 ∧∧
(‥ )でっ、実際には
\‐  細胞のガン化は非常に
    原理が単純で
 
  (‥ )単純に自然選択に従って
      進化が起きてるだけ
      みたいだな
 
 人間は個体である。私たちがそう胸を張っても、所詮は個別な細胞の寄せ集めなのである。細胞は全体に奉仕するように設定されてはいるが、細胞がそれに従う道理はない。
 
 ある変異が細胞で生じ、その細胞が他の細胞よりも人体内部で子孫を増加させる場合がありうる。そのような変異は人体内部で生じる自然淘汰において有利に働く。しかもこの過程は淘汰によって累積、加速されるので、変異細胞から生じた子孫細胞は、自動的に遺伝子が不安定になっていく
 
 ∧∧
( ‥)そして幾つもの変異が
    有利なものとして固定され
    最終的に子孫細胞から
    ガン細胞が産まれてくる
 
  ( ‥)ついには本来の性質すらも
    ‐□ 消失して転移し始める
      ガンとしては大成功だが
      個体としては末期だな
      やがて
      ガン細胞が個体を
      殺してしまうので
      そこですべての細胞が
      ガンもろとも消滅する
 
 このように、進化的に説明するとガンの発生と悪化への過程は単純で分かりやすい。

 だがどういうわけか、こういう説明はあまり多くないらしい。
 
 ∧∧
(‥ )なんででしょうね?
\‐  
 
 (‥ )分からん
     書き手にとって
     進化的な説明には興味が
     わかなかったせいかも
     知れないし
     ガン化の過程が
     遺伝的にどう進行するのか?
     それが分かってきたのが
     最近だからかも
     しれないな
 
 あるいはそれとも、細胞の反乱、暴走、という説明になっていない説明が、なんとなく分かりやすかったから、そこで理解が停止したのであろうか?
 
 統制された通常の細胞は社会を形成する善である。そして統制に従わないガン細胞は悪者である。
 
 そして悪者が人体という社会を破壊する。

 そういう社会的、道徳的な説明で全てを納得した。そのせいで進化的な説明が普及しなかったのであろうか?
 
 ∧∧
(‥ )確かに生物の遺伝子の中には
\‐  細胞のガン化を感知すると
    細胞の自殺を発動するものが
    あるよね
 
  (‥ )さながら強制自爆だ
      個人の欲よりも
      社会の秩序を優先する
      道徳主義者なら
      高邁な意思を
      感じるのかもな
      もちろん
      実際には即物的で
      その遺伝子は進化上
      有利であるから
      進化してきた
      それだけだけどね
 
 細胞の集合である個体が次の子孫を作るまでの間はガン化を阻止する。それは有利でありえよう。
 
 しかし、進化上有利である特徴は、どの時点で、どの時間で、どの長さで、異なる時間尺度でまるで違うものとなりうる。

 ガン細胞に自爆を強制させる遺伝子が進化上有利であるといっても、それは長い目で見ればの話。

 短い目でみれば細胞にとって有利なのは無制限の増殖と不死化と強制自爆の解除だ。つまり時間の尺度を変えれば話は正反対である。そうである限り、ガンは必ず生じるし、人間の寿命が長くなれば長くなるほど状況は悪化するということになる、
 
 ∧∧
( ‥)つまりあれだ
    個体と称する
    統制された集合も
    実際には裏切り者の排除を
    完璧には実行できない
    そればかりか
    裏切り者の排除が
    進化で生じたもので
    あるにも関わらず
    進化自体がその裏をかいて
    統制を崩壊させる
 
  ( ‥)個体は個物に思えるが
    ‐□ 実在なんかしない
      あるいは存在が
      100%完全ではない
      そう言えば良いのかな?
 
 そして自然選択が存在する以上、実在が不完全である個体の存在には限界がある。必ず存在が瓦解する。そう言うこともできよう。
 
 あるいはこうも言えようか、個体が個体と言える状況でいられるのはごく限られた時間内だけで、必然的に起こる統制の崩壊を食い止めていられる間だけ、我々は個体でいられると。
 
 

      

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