自己紹介
- 北村雄一(北村@)
- イラストレーター兼ライター 詳しくはhttp://www5b.biglobe.ne.jp/~hilihili あるいは詳細プロフィール表示のウェブページ情報をクリック
2014年9月9日火曜日
サーベルタイガーは激怒するだろう
弱肉強食、生存競争、これらは人間の心に深く響く言葉であるらしい。
これを聞いて有頂天になる人間もいれば、烈火の如く怒り狂って否定するものもいる。前者は自分が今のままで良いのだ、と存在を保証された気になっているし、後者は存在を否定されたと思って怒っているのだ。
∧∧
(‥ )実際は
\‐ 優勢な者が
劣勢な者に置き換わる
優勢か劣勢か
その判定は状況によって
変化する
単純にそういうことだよね
(‥ )人間というのは
度し難い猿なのだな
自分の社会的地位を
保証してくれるものを
渇望し
自分の社会的地位を
脅かすものに対して
攻撃的になる
まあ当たり前だけどね
先にも話題にしたこのベストアンサー=>弱者を抹殺する。不謹慎な質問ですが、疑問に思ったのでお答え頂ければ... - Yahoo!知恵袋
例えば、弱肉強食とは相手の肉体を構成する元素を自分と自分の子孫のものにすることに他ならない。
つまり優勢なものが劣勢なものを置き換える。
∧∧
(‥ )でも全ての生物は
\‐ 最後は食われるのだから
弱肉強食には
意味がない
回答者はそう答える
(‥ )でもそれ、
生態系の中で
元素が循環するという
話なんだよな
つまりこう言えばよいか、
”すべての生物は最後には食われるのだから弱肉強食に意味はない”
これは、生態系の中では元素が循環するのだから、元素という富の偏りは生じない、そういう主張であると。
∧∧
( ‥)そんなことはないと
(‥ )元素はどこかに滞留するし
その勝負の分かれ目は
持っている遺伝と
その優勢、劣勢で
決まるのだ
つまり、すべての生物が最後は食われるのだから弱肉強食には意味がない。この主張は、金は最後には使われるのだから経済の中で富の偏りは生じえない、と言うようなものだろう。もちろん、これは正しくない。
たぶん、回答者は人類が持つ特性のひとつ、仲間同士で助け合う相互扶助。それと遺伝子の保全、このまるで違う二つの事柄をごちゃまぜにした。そしてこの結論が整合的であるように用語を組み立て文章を作成した。それがこの混乱の原因ではないのか?
∧∧
(‥ )確かに質問者の質問自体が
\‐ 弱者を助けるのはなぜか?
優秀な遺伝子だけを
残すべきだ
というもので
ようするに
相互扶助と優生学を
ごちゃまぜにした
質問なんですよね
(‥ )質問が混乱的なんで
回答も混乱した
そういうことかもな
しかも、理解がおそらく混乱的だから回答はさらに混乱的になっている。
一見するとそう見えないとしたら、それは文章のつじつまを合わせる一方で、おかしな部分や矛盾した部分、理解の混乱が用語の中に歪みとして押し込められているからだと言える。
言い換えると、多分、回答者の文章を見た時に、これはすばらしい、と言う人は文章だけを読んでいて、用語の意味は知らないのではなかろうか。
例えば、回答者は人間が相互扶助で弱者保護をするのは遺伝子の変異を保全するためだ。と申し述べているが、これもこうした歪みのひとつだ。これが人類の生存戦略である、という言い様からすると、おそらく回答者は遺伝的な変異を増大させることは人類にとって良いことだ、つまり人類の適応度が上がる、と考えている。しかし、実際にはそんなことはない。
∧∧
(‥ )あまりに有害な変異が
\‐ 多くなると
破滅的な結果だって
起こるからね
(‥ )非常に好意的に言うと
回答者の思考は
ロジカルシンキング
なのだろうな
思うにこうではなかったか?
環境変動に対応するには遺伝的な多様性が必要である。これは事実だ。
しかし、これを聞いた時に、回答者は、遺伝的な多様性が大きければ大きいほど適応度が上がる、そう思ったのではなかったか?
∧∧
( ‥)ある意味、論理的な
結論だよね
多様性が必要である
なれば
多くの多様性も
必然的に必要なはずだ
( ‥)言葉の上では論理的だね
‐□ だけどもこれは量の話でな
人間には塩分が必要だ
なれば
大量に塩分を取れば
もっと良くなるはずだ
そういう誤謬なんだけどな
たぶん、論理的に考える人はこういうことをする。ロジカルシンキングの元において、言葉とは定義されたものだ。定義された言葉は一律の意味を持つ。変異は良い、そう言われれば、多い変異も良い、そう受け取るのは論理的だ。白い馬が馬という単語に包含されるように、多い変異は変異という言葉に包含されるからである。
∧∧
( ‥)でもそれは間違いである
塩分は必須なれど
ラーメンを食べ過ぎた人が
塩分過剰で死ぬがごとく
(‥ )でもさ、論理的な思考だと
塩分は良いと言われれば
量と関係なく
塩分は良いことに
なっちゃうんだよね
論理的で理路整然とした文章は、しばしば用語の中に歪みを押し込んでいる。それゆえ、用語が持つ本来の意味を自分が知らない場合、要注意だ。いくら文章全体が理路整然としていても、用語の意味を検討しないと文章の正しさは見えてこない。
そして忘れてはならぬ。論理とロジカルシンキングは”量”を扱うことすらできないと。論理という道具は、塩分は必須ではあるがラーメンの食い過ぎは体に悪い、ということすら扱う事は出来ないと。論理を振りかざすとき、これを忘れてはいけない。
これはhilihiliのhilihili: そして欲望だけが残ったの続きだ
ついでにいうとこの件で検索をかけたら、サーベルタイガーのような強い肉食獣は滅びたけど、草食動物は生き残っているではないか。弱肉強食とは誤りである、という意見も見つけた。
∧∧
( ‥)ああ、それは
間違いだよね
(‥ )サーベルタイガーは
おそらくは
人類に獲物である
草食動物を根こそぎ
滅ぼされたから
滅びたんだよな
5万年前よりも後、今の地球は人類が大型動物を片っ端から滅ぼして抹殺した世界だ。ごくわずかな、脚の速い動物だけが生き残り、大型動物たちは消え去った。そうして彼らの体を構成していた元素は我々のものへと変換された。現在の動物界で最大級の元素の滞留を持って、強大な富を築いたのは人間だ。その力の根源は圧倒的な武力にある。これに対抗出来る動物はほとんどいなかった。
しかも化石記録を見る限り、サーベルタイガーは獲物である草食動物たちよりも後まで生き延びたように見える。これまで獲物にしなかったものも食べて食いつないだ、そういうことかもしれぬ。それでも人類の力にねじ伏せられ、ついに滅び去った。だから、以上の言い様をサーベルタイガーが聞いたら、多分、激怒するだろう。
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