分かった、ということは現実を理解していることではない。あるいは分かったという実感があるからといって、その理解が妥当であるとは限らない。
∧∧
( ‥)そもそも科学の歴史がそうでした。
(‥ )分かったと思っていた、正しいと思っていた理論が
間違っていた/妥当ではなかった、そういうことが
”分かる”連続だった。
よりよく言えばこう? 現実を説明できるより良い理論を発見してしまいました。
∧∧
( ‥)古い、良く説明できていた理論Aが”旧分かった”で、
(‥ )新しくて、より良く説明できる理論Bが
”新分かった”
∧∧
( ‥)でも世の中の”分かった”は理論を把握した、
”この理論はこういう体系です(に違いない)”
と”自分なりに理解した”ということですよね。
(‥ )そうねえ、科学の分かったに対して、世間が科学に
対する理解はいわゆる俗語で言うところの
メタな話っていうかねえ。
メタ理解って言うの?
∧∧
( ‥)サイエンスライターの分かりやすい文章ってのは
メタ理解ってことですかね?
(‥ )ゆえに不正確になるとも言えるかもね。
不正確が単純に”解像度が荒くなる”のだとしたらまだしも問題は少ないけども、不正確さが、バグを持ち込むとその”メタ理解”は致命的。
∧∧
( ‥)でも理解しやすい、分かりやすいってのは
しばしばバグったメタ理解ですよね?
(‥ )だから理解した、分かった、という実感で
確信を持つのは危険なんよね。
そういえば前にも書いたように、世の中的には地球の内部はどろどろに融けた溶岩で出来ていると思われているらしい→*(某博物館の人に聞いた限りでもやっぱりお客さんの多くはなんとなくそう思っているそうだ)。
∧∧
( ‥)でも、分かりやすい勘違いですよね?
火山からは溶岩がぼこぼこどろどろ流れてきて
ますからね。
(‥ )だからきっと内部は融けているに
違いないってね。
だけども地震波、地殻内部における温度上昇をそのまま当てはめて(しまって)考える温度、圧力の増大による物性の変化その他もろもろを組み合わせると、マントルは固体じゃんよ、岩石(おそらくはカンラン岩)やがな、融けてなんかいないよ(逆に言うと温度を算出できる)、という話になる。
∧∧
( ‥)でも、溶岩が流れることから内部がドロドロに違いないを
類推したのなら、それ自体はメタ理解とは
言わないかもしれません。
(‥ )科学理論を理解したっていうよりは、科学的な作業の
第一歩という感じだからなあ。
でも、隕石衝突でクレーターができると地球に穴が開いてマグマがぼこぼこぼこ〜〜〜っと流れる、火山噴火どっかーんだと考える人たちはどうだろう? 中には科学の啓蒙書を読んでそういうことを思いついている人もいるみたいだから、ここまでくるとなんかちょっとメタっぽい? 科学のオレ様理解というの?
鳥の進化仮説をオレ様全開で論じているどこぞの掲示板。最近はクラス進化論まで飛び出すなど、もう絶頂な感じなんだけども。あっこでは隕石衝突で地殻が吹き飛べばマントルの融点が(融ける程に)下がるとか、衝突で岩石が融けるから火山噴火が起きるとか論じていたのを思い出す。
∧∧
( ‥)メタっぽい?
(‥ )どうなんだろうねえ。ただ、幾つかの正しい
知識や記述に基づいて解釈しているみたいだから
ちょっとメタっぽいかもね。
しかしながら、地球のクレーターの地質調査でそんな火山噴火どっかーんな痕跡がでてきたことあったっけ? ということは言えるだろうし、人間が爆薬で作ったクレーターにも中央丘ができたのはなんでだろうとかなぜ考慮しない?
∧∧
(‥ )岩石は融けるでしょ?
\-
(‥ )ああ、表面が融けた衝撃変成の結晶とかもあるからね。
あれ、感激だよなあ。
だから融けることは融けているよねえ。
∧∧
( ‥)熱水活動の痕跡があった例もあるみたいですよね。
(‥ )まあね、でもそれを言ったら東京で温泉付きの
マンションが販売されたのってどうしてだと思う?
ということになるんじゃないの。
分かった、これが正しいという確信ってなんだろうか? 実のところそれは、分かったという実感を申し述べているだけで、その科学理論をどの程度理解したのかとか、そのメタな理解が現実とどの程度整合的であるのかとか、そんなことはまったく語ってもいないし、保証もしてくれない。