ふと思い出した。昔こんなやつがいた。もっともらしく色々なことを、それも断言口調で言うのだが
(‥ )間違っているんだよな・・・
∧∧
( ‥)あなたのメモリーによると、共通の友人(?)が彼を
-□ 次のように評していますね「あいつは知ったかぶりの嘘つきだ」
共通の友人といったら彼はいやがるかもしれない。彼はくだんの人物を嫌っていたから。
∧∧
( ‥)くだんの人は自信満々に色々なことを語っているんですね
-□ ただ、しばしばそれが間違っていたり、
事実と整合しないことがあるので、
多くの人から避けられる傾向があったと。
(‥ )知らないなら知らないと言えばいいし、分からないなら
分からないと言えばいい。おかしいなと思ったら
なぜだ? なぜなんだろうね? ただ単に
そう言えばいい。
くだんのその人間はそれができなかった。
言い換えれば、それは知ってる、そのことなら分かっている、それはおかしいから間違いに違いない!! と言うと、どうやらおかしなことになるらしい。
∧∧
( ‥)奇妙と言えば奇妙ですね。
おかしいから間違いに違いない、それは知っている、
これがどうして危ういことになりうんでしょうね。
(‥ )僕らは誰しも何もかも知っているわけではない
単純にそういうことじゃないか?
何もかも知っているわけではない。だとしたら
それは知っているが、これは知らない。それは分かるが、ここから先はどうなるの? 理解できないのは、オレが何も知らないってことなんだろうなあ・・・・
∧∧
( ‥)というのが妥当だと。
(‥ )まあそうだよな。
反対に言えば、くだんのその人物がしばしば煙たがられたというのはある意味、非常に驚くべきことだとも言える。
∧∧
( ‥)なんで?
(‥ )一般の人はそんなことしない、そんなことをする人を
敬遠するってことだからさ。
つまり人間の多くは、自分が知らないことがあることを知っている、分からないことを分からないとおよそ正直に言える、あれ? なんでこうなるんだろうと疑問に思っても、ははーん、オレ様が正しくてお前らが馬鹿なんですね? なんてことは考えない
(‥ )ということだよね?
∧∧
( ‥)ああ、言われればそうですね。
考えてみればそれは大変な能力ではなかろうか。
それにしても今にして思えばくだんの彼は
(‥ )オレ様理論屋さんと似ているのかもね。
∧∧
( ‥)まあ、そうかもしれませんね。
例えば種の起源を読んでもいないのにダーウィン批判をする。現在進化理論を知らないのにオレ様独自の進化理論を考える。祖先復元の方法を知らないのに過去の推論をする。ニュートンがどうやって万有引力を導出したのかも知らないのに、それを論理的で完璧だと考える。固体のマントルをどう融かせばいいのか地質学者が考えていることも知らないで、隕石が落ちればマグマどろどろだと思う。地質図も読まないでクレーターの中央丘が火山だと思い込む。
∧∧
( ‥)知らない、分からないのに、知っている、分かったと
言っているのだと。
(‥ )最低限こうだよな。
発言が事実と整合していない、一般的な教科書の内容と
食い違っているということは、文献を読んでいないことは
明らか。
とはいえ、だからこそ興味深い。
∧∧
( ‥)なぜに?
(‥ )一般の人の動作とも違う、研究者の動作とも違う。
そして現時点での妥当な解とは異なる解答に
飛びついている。
これはおそらく、妥当な解を彼らが発見できないことを示している。たぶん、問題の解答探索がうまく機能していない。
∧∧
( ‥)それのどこが興味深いんですか?
興味本位で彼らの心をのぞきたいわけじゃ
ないんですよね?
(‥ )中性子の内部構造を知るためにこんな実験をした
人がいるそうな。
高速度に加速した電子を水素と重水素に照射して電子の散乱する具合を観測した。
∧∧
( ‥)水素と重水素の違いは中性子の有無だから
(‥ )電子の散乱の差は中性子の内部構造を
反映しているものと考えることができる。
ではこう?
オレ様理論屋と一般人、研究者のふるまいの差を計れば人間の問題解決における内部構造の差を観測できる。
∧∧
( ‥)つまり推理に関する人間の心の構造を
そこから観測できると。
(‥ )明らかな差があるってことは
構造を推論できることに他ならない。
ようするに、オレ様理論屋さんというのは人類の問題解決能力とその構造を知る手がかりになりうる存在
∧∧
( ‥)だとあなたは考えると。
( ‥)とっ、推論してそういう研究がないかを
-□ 調べている。