魔法というのは、それを信じる人も否定する人も原典にはあたらない。いい加減なまた聞きをただただ書き連ねるだけである。
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(‥ )ピタゴラスさんが
\− 五芒星を教団のシンボルに
したのは
健康の女神ヒュギエイアを
かたどったから
理由はメソポタミアの
イシュタル女神の象徴が
五芒星だったから
メソポタミアでは
五芒星に惑星が配置され
ピタゴラスたちは
五芒星に五大元素を配置した
(‥ )という以上の話は
ほぼほぼ嘘
勘違い
憶測を事実と思い込んだ
あるいは根拠薄弱
あるいは根拠が不明でしたね
ピタゴラス教団が五芒星をシンボルにしていたのは事実だが、五芒星に四大元素+αを加えて作図した、というのは15世紀ぐらいの魔法書にいきなり現れるものらしく、まず間違いなく、後付けの都市伝説。
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(‥ )2世紀ローマの
\− 劇作家ルキアノスさんの
記述では
ピタゴラス教団の人は
健康をあなたにと挨拶して
五芒星をシンボルにした
としか書いていない
(‥ )健康はギリシャ語で
ヒュギエイア
これは確かに
女神でもあるけど
ギリシャの神々って
名詞や概念ごとに
存在するからな
例えば死を意味するギリシャ語タナトスは死の神タナトスでもあるけど、それは名詞の擬人化でしかないとも言える。
同様に、あなたに健康を! と言ったとしても、それが名詞としてのヒュギエイアなのか、女神としてのヒュギエイアなのかわからない。
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(‥ )というかさ
\− ヒュギエイアさんって
アテネ市では
信仰されたけど
あくまで地方の信仰であり
女神であって
ギリシャ全土の
有名なものでは
ないみたいね
後にローマに広がるけど
それはまた別の話
(‥ )アポロドーロスの
ギリシャ神話にも
どうも見当たらん
ヒュギエイア女神は
今でこそ有名だが
本来は地域的な
新しくて目立たない
信仰っぽいよね
2世紀の書物、「ギリシャ案内記」にはヒュギエイア女神が安置されている場所がギリシャのあちこちで言及されている。しかし、これより800年も遡る、前6世紀の人物で、しかもアテネから遠く離れたサモス島出身のピタゴラスがヒュギエイア女神をわざわざ信仰に採用するとは、ちょっと考えにくかろう。
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(‥ )他の話も怪しげですな
\− 金星が地球と会合する
場所をつなげると
五角形になる
これは事実だけど
五芒星が金星と
イシュタル女神の
象徴になったという話は
...こっちは作り話みたいね
(‥ )会合が軌道上の
5点で起こる
これ自体は
バビロン第一王朝
アンミサドカ王の
時代に記録された
そうだけど
そこから五芒星が金星の
シンボルになった
という解釈を導くのは
無理さね
実際、その時代から五芒星をイシュタルに割り当てていたら、後代ではもっと普遍的なシンボルになっていたであろう。確認が取れないとか明確ではないとか、そういうことはないはずだ。
あるいは、メソポタミアでは五芒星が5惑星を象徴した、というかなり有名な説も、現状でははっきりした確認が取れなかった。
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( ‥)五芒星と魔法陣の起源は
かなり曖昧なのだな
(‥ )ピタゴラスが
教団のシンボルにした
ぱっとしない
何気ないことだけども
この時点から五芒星は
魔的な属性を持つように
なっていった
そう考えるべきだろう
皆が魔法の話をいい加減に書き記すので、五芒星の話は大きく膨らんだが、そのほとんどは嘘、大袈裟、また聞きの勘違いであった。
実際のところ、五芒星が顕著に特別視されるようになったのは古代ギリシャからであり、それは五芒星が黄金分割で構成されているからであった。つまり、特別視の動機がまんまピタゴラス教団なのである。彼からすべてが始まった。そう考えてよかろう。