自己紹介
- 北村雄一(北村@)
- イラストレーター兼ライター 詳しくはhttp://www5b.biglobe.ne.jp/~hilihili あるいは詳細プロフィール表示のウェブページ情報をクリック
2015年6月13日土曜日
テレビが凋落しなかった時空
駆け出しはタダ同然にこきつかわれるけど、実績ができると支払いが急激に上がる。億万長者とはいえなくても、金持ちになれる。
∧∧
(‥ )それを夢見て
\‐ 若者が芸人を目指す
(‥ )そういう若者が
ばんばん出てくれば
中には売れる奴もいる
ごくごくまれだがな
そういう人間を使いに使い、支払いの金額が急上昇したところで使い捨てる。
その頃には次の”有望な若手”が出現しているだろう。
∧∧
(‥ )高収入を餌にして
\‐ 人を集め
結果的には人間を
安く使い捨てる戦略だね
(‥ )漫画とかもある程度は
そういうところが
あるけども
テレビに比べれば
もっと良心的だよな
漫画は本であり、本は印税だ。刷って売れた分だけ出版社は儲けるし、その一部が著者へと還元される。
本に過去の実績の有る無しは関係ない。本を出した時点で全員が同じスタートラインに立てるのだとも言える。あくまで、これは単純化した理想論ではあるが、そういうことだ。
この意味において本はかなり平等だし、実力主義だとも言える。
漫画はこれがゆえに、娯楽の王から滑り落ちることはない。
∧∧
(‥ )でも芸人さんの場合は
\‐ 大物には大変な金額が
支払われるから
スタートラインが
そもそも平等ではありえない
(‥ )だったら若手なんか
使わずに
大物を使えば良い
そう言うこともできるけど
今時のお笑いは伝統芸じゃない。円熟したお決まりの芸をやっていれば受けるかというと、そうではないだろう。
∧∧
( ‥)そして人間のピークは
40歳
(‥ )これを越えたら
金食い虫の
芸無し人間に
なっちまうわけだな
40過ぎたら頭脳がボケ老人に近似であると自分を見なすべきだ。解探索がうまく働かなくなる。まだまだ若いなどど強がりを言ってはいかんのだ。
これがゆえに、自覚しようがしなかろうが、40を越えた人間はあらゆる防衛手段を取るようになる。
非好意的かつ悲観的に表現すると、だから芸人はある時点から派閥を作って親分をきどったり、映画を撮ったり、素人に発言させて自分がそこに突っ込みを入れて話を膨らませるとか、そういうことをするようになるのだろう。
要するに衰えた才能を外注するのである。
∧∧
(‥ )お金のある人が
\‐ 若者を養って育てる
理想的な仕組みだとも
言えるけどもね
(‥ )でも漫画はもっと
理想的かもな
漫画なら先生が描いていると称して、アシスタントが描く、作る、そういうことができる。
ライターでもそうだ。売れたライターはゴーストライターを使うが、これはようするにアシスタントだ。悪く言うと若手の搾取であるし、良く言うと富の分配と若手育成である。
∧∧
( ‥)本は著者の顔が出ないから
この仕組みがうまくいく
( ‥)でも芸人にこの真似は
‐/ 無理だよな
彼らは
どうしても顔と声を
出さなければ
いけないからね
例えばの話、ラジオのパーソナリティーが初音ミクであるとする。そうしてお葉書の読み上げや受け答えは全部、構成作家が書いた通りに初音ミクが読み上げるとする。
∧∧
(‥ )そうしたら芸人としての
\‐ ミクさんは不滅の存在になれる
(‥ )中の人を変えてしまえば
永久に若いままだ
芸風だって自由自在だよ
漫画ではいわばこれと同じことができる。
だが人間の芸人ではこれができない。しかも熟練の大物と若手の格差が巨大すぎて、人間を置き換えることも十分にできない。
なればテレビの未来は確定だ。もはや衰えて面白い受け答えができないくせに金食い虫に成り果てた大物と、ただただ消耗される、その場限りの流行りで輝く若手だけとなる。
ここには刹那的な笑いしか存在しないだろう。まさに虚無。
∧∧
(‥ )実際はさテレビが
\‐ ネットに負けるなんてことは
ありえるはずが
ないんだけどね
彼らはプロだものね
(‥ )ネットは無数の素人で
テレビがプロであるなら
娯楽の提供の点で
テレビが負けるはずがない
少なくとも一方的に
浸食されるなんてことは
ありえないのだ
だが、実際にはそうではない。現実の動態は、多分、芸人の報酬に巨大すぎる格差があるという時点で、予測と正反対のものとなった。
そのことを考えれば、平行世界のどこかでは、テレビが娯楽の王様として未だに健在である時空もありえたのであろうか?
∧∧
( ‥)でも少なくとも
僕らのいるこの時空は
テレビが凋落する時空である
( ‥)プロは存在意義を
‐/ 自ら破壊し自殺した
残された素人たちは
娯楽を自分たちで
作るしかなくなったのだ
難儀な世の中よ
面白さは自分たちで探しまわるしかないが、芋がそうそう見つからないように、簡単には手に入らぬ。
ここ数日で面白かったことというと、住宅街の中にぽつんと存在する台地と、その上に広大に広がった墓地。乾いた墓石、そびえる鉄塔、墓地の一角に小さな神社があり、その階段が気になっていたので降りてみたら、それは台地の斜面をジグザグに駆け下りていた。その先の狭く、カクカクと曲がる路地を抜けると駅に出た。
今度はこの道を通ろう。
あれは、少し良かった。
∧∧
(‥ )地味な娯楽だねえ
\‐
(‥ )広い墓地と狭い路地は
良いぞ
自分の存在が不安なまでに
確定されるからな
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