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2015年1月7日水曜日

1000円と1000ペン

 
 性のある生物は、母親と父親の遺伝子をそれぞれ半分ずつ受け取る事で、1セットの遺伝子をそろえて、生存競争というゲームに挑む。
 
 *厳密に言うと子孫を残すゲームなので、生存競争ではなく、ダーウィンの言い様に従えば”存続をめぐる争い”だ。
 
 ∧∧
(‥ )そういう点では
\‐  生きるとは
    もらった手札で勝負する
    ゲームであると
 
  (‥ )手札にはそれぞれ
      ポイントが書いて
      あるんだよな
 
 ただ、それぞれのポイントが不変であるとは限らない。場に応じて、ポイントのカウントが変化してしまう場合がある。
 
 ある意味、遺伝子とは、状況によっては価値が下落したり、あるいは反対に上がったりする株券や紙幣に近い部分があるのかもしれぬ。
 
 ∧∧
(‥ )1000円の手札と
\‐  1000ペンの手札が
    あるけども
    現状、1000ペンには
    価値が無い
 
  (‥ )だから持っていても
      しょうがないんだ
      1000ペンの手札を
      持っている奴は
      勝負で不利になる
      場合によってはそのまま
      ゲームの場から退場だ
 
 だから1000ペンの手札は数が増えないままだ。
 
 ∧∧
( ‥)ところがある日
    1000ペンの価値が上昇
    反対に円が暴落
    1000円=500ペンに
    なったとしましょうか
 
  ( ‥)どうなるのかは明白だ
    ‐□ 1000ペンを持つものが
      勝ち残り
      世代を重ねるごとに
      賭場で流通する
      1000ペンは増えていく
 
 こんな大暴落、大高騰はそうは起こらないけども、単純化すればこういうことである。
 
 これゆえ、例えるなら、生物は現在出回っている紙幣だけでなく、現在は価値が低い紙幣も蓄えるようになった。
 
 ただしこれは、生物は先を見越して、価値の無い紙幣をどんどん蓄えるようになったということではない。
 
 手札を単一の紙幣、例えば1000円だけにしてしまう者が、一時は賭場の大半を占めるほどになるが、紙幣が暴落すると彼らは丸ごと消える。そういうことがたびたび起こるので、結果的に1000円以外の紙幣も貯め込むプレーヤーが残っている。それだけの話である。
 
 しかし、だからといって、1000ペンをせっせと貯めるプレーヤーが出るわけでもない。
 
 理由は単純、先に見たように、自分の手札に現状では価値の無い紙幣が大量にまわってきた場合、ゲーム会場で負けて、そのまま退場を余儀なくされてしまうからだ。
 
 勝ち負けは将来ではなく、今、この場の利益で決まる。そうである以上、いつか高騰するかもねという希望的観測で1000ペンをどんどん貯め込むことはできない。
 
 つまり、生物が先を見越して何かをするということは原理的にありえないし、出来ないのだ。
 
 人間は出来るぞ! と言う人もいるかもしれないが、1000ペンが不利になる以上、経済的な壁にはばまれてしまう。結果は同じである。未来予測が出来るからといって現状が変るわけではない。
 
 だから、1000ペンは時々手札に混ざる程度にしかならない。
 
 ∧∧
(‥ )1000ペンをせっせと
\‐  蓄積するようなことは
    起こりませんよ、と
 
  (‥ )ここしばらく
      話題にしている例の話
      ”人間の生存戦略とは
      弱者保護によって
      有害遺伝子も含めて
      将来にそなえて変異を
      蓄積することである”
      これが間違っているのは
      以上が理由だね
 
 1000ペンを貯める仕組みはゲームの参加者、そのほぼ全員が持っている。別に人間の専売特許ではない。
 
 では人間は他の生物よりもたくさんの1000ペン紙幣を集めるようにしているかというと、そんなことはない。なぜなら出来ないからだ。
 
 1000ペンをせっせと貯め込むと、退場を余儀なくされる。そうである以上、”人間が行なう弱者保護は有害遺伝子の蓄積にあるという解釈”は、実際には動作不可能だ*。
 
 ∧∧
( ‥)つまりありえない
    
  ( ‥)人間の生存戦略は
    ‐□ 弱者保護による
      遺伝的多様性の保持
      これを言った人
      あるいはこれを信じた人は
      人間はなぜこのような
      生物なのか?
      という問いに答えていない
 
 いや、答えてはいるのだ。
 
 なぜ人間は弱者保護をするのですか? といういわばwhyな質問には答えている。
 
 問題はである
 
 弱者保護をするという人間の動作はどのようにして成立するのか? この、いわばhowの質問にはまったく答えていない。
 
 どのようにして成立するのか? これに答えていない回答は、結果的にはなぜなのか? という質問にも答えていない。
 
 これでは回答とは呼べないだろう。
 
 ∧∧
(‥ )でもご本人は
\‐  答えているつもりかも
    知れませんね
    将来何が有利になるか
    分からないから
    現状不利な変異でも
    蓄えるようになったのです
    そう述べているわけだからね
 
  (‥ )つまりあれだ
      回答者は
      howの質問に
      回答を試みたし
      ご本人も質問者も
      それに納得しているわけだ
  
 ただ、その説明は結果的に失敗している。
 
 人間の弱者保護はもっと単純で目先の利益にかなった行動なんだろう。言い換えれば、目先の利益にならないのなら弱者保護を打ち切るだろうし、事実としてそうしている。現実は多分、もっと即物的で冷淡で経済的だ。
 
 
 
 
 *今、価値がない紙幣をせっせと蓄積することはありえない。

 これについて補足すると、例えば、1000ペンを持つことがかっこいいとか、そういう実用以外の付加価値を作り出して、一時のバブルを形成するとか、そういう状況はありうるのだろう。
 
 ∧∧
(‥ )でもそれは付加価値を
\‐  創出出来た場合だね
  
  (‥ )人間の生存戦略は
      有害遺伝子の保護と蓄積
      この論法は
      そういうものでは
      ないからな
      こういう解釈をする
      必要はないね
 
 あと、一応言っておくと、これは1000ペン差別ではないか? という人もいるかもしれないが、それは馬鹿げている。そもそも1000ペンは誰でも持っているのである。1000ペンどころか、500ガマだの1万パソだの20ベベだの色々な手札が私たちの中にある。
 
 手持ちの札から1000円が少なくなれば不利になる。これは目をそらせない事実だ。だからといって手札から1000ペンをせっせと捨てる必要もまた無い。
      
 
 これはhilihiliのhilihili: それは一律に塗りつぶす理解ですが、それで良いのですか?の続き
 
 
 

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