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2015年1月25日日曜日

百人隊長クラスティヌス

 
 この戦いが終わったら...
 
 ∧∧
(‥ )死亡フラグって言われる
\‐   演出方法だね
    死っていうのは
    大事な想いを
    抱いている人にも
    ふいに訪れる
    そういう意味合いや
    無常観や悲劇を込めた
    やりかた
 
  (‥ )今日見た言い様によれば
      歴史上一番古い
      死亡フラグというと
      カエサルの百人隊長
      クラスティヌスが
      発したものだ
      というのだが....
 
 いや、あれってそうなの?
 
 一世紀近く続いたローマの内乱。三頭政治が崩れ、勝ち残った実力者カエサルとポンペイウス、互いが軍団を率いて行なわれた最終決戦。数に勝る敵は有利、我は不利。その状況下で百人隊長の彼が言ったのは
 
 わしの後に続け。以前にわたしと同じ中隊にいた兵士たちよ。お前らの最高司令官に契約した務めを果たせ、もはやこの一戦が残っているだけだ。この戦いが終わったら、カエサルは彼の威信を、われわれはわれわれの自由を取り戻すだろう。

 今日こそ最高司令官よ、生きていようと、死んでいようと、ともかくこのわしに、かたじけないとお礼の言葉を言わせてみせますぞ。
 
 「内乱記」講談社学術文庫版 pp210~211


 ∧∧
(‥ )これは死んでも構わぬ
\‐   突撃だ!
     という話だよね
 
  (‥ )そして百人隊長
      クラスティヌスの功績は
      彼が言った通りである
      カエサルにそう
      評価されるわけだ
 
 これは決意のまま突撃して、言葉通りの結果を得たということだろう。願いが断じられた死亡フラグとか言う単純な演出とはちと違う。そしてカエサルはそれに報いた。
 
 カエサルは軍事指導者でありながら奇妙に書き物がうまい人であった。それに政治家でもあるから時にはごまかしを行なっている。例えば、脱出したポンペイウスを追ってエジプト王国へ侵入し市街戦をするはめになった際、アレキサンドリア大図書館を焼いてしまったことを直接は書かなかった。暗示するにとどめたのである。*以上の和訳版ではpp229に出てくる話がそれ。
 
 そういう意味では彼の書いたことが何もかも本当であるわけではなく、演出もあるのだろう。
 
 とはいえ、最終決戦時、優勢であったポンペイウス軍をカエサルは打ち破った。数でまさる敵騎兵が自軍右翼を包囲、押しつぶそうとするのを、用意して右翼後方に隠しておいた部隊ではねかえし、敵の弓兵を殲滅し、前進して突撃した軍団はついにポンペイウスを潰走させた。
 
 そしてクラスティヌスは、彼の言い放った言葉通り、奮戦して大きな功績を上げつつ、そして戦死した。顔の真っ正面に剣を突き立てられて死んだという。
 
 ∧∧
( ‥)そしてクラスティヌスさんは
    その功績によって
    内乱記に名を上げられる
    ことになったと
 
  (‥ )彼は不滅の存在に
      なったのだ

 
 
 ちなみに、「プルタークの英雄伝」岩波文庫版においても、カエサルの話、ポンペイウスの話でクラスティヌスの話が出てくる。話は内乱記とほぼ同じだ。つまりこの点でカエサルの演出はほとんど無かったと考えてよさそうである。彼は敵陣に突っ込んで奮戦している時、剣を口に突き立てられ、首まで貫かれて絶命したとされる。この戦いが終わったら生きているにせよ、死んでいるにせよ、いずれにしてもインペラトール、あなたに礼を言わせてみせましょう。彼の言葉は現実となった。
    



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