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2015年1月30日金曜日

道徳とは村八分とリンチのことである

 
 以前、新宿の駅で電車を待つために並んでいたことがある。
 
 新宿には幾つかそこが始発の路線がある。その日はそれで使うために並んでいたのだ。
 
 どこでもそうだが、始発の駅だと座れる。でもすでに並んでいる人がいる場合、次発の電車に乗るための列に並ぶ必要がある。
 
 実際、その路線のそのホームには、先発の列はここ、次発の列はここ、と列を作るべき場所が表示されている。
 
 並んでいると、外国人のおじさんとおばさんが列に割り込んだ。まあ、おじさんおばさんと言っても40代ぐらいだろう。西欧系という風ではない、少なくともゲルマン系にはあまり見えなかった。ラテン系ではないだろうか? 南米の方かもしれないなとは思ったが、実際のところは分からない。
 
 二人が、特におばさんの方が列に割り込むから、列に並んでいた日本人のおばさんが怒って文句を言った。こうしなきゃだめと彼女の体を押した。
 
 外国人のおばさんは、はあ? という顔である。
 
 おじさんの方は少し困った様子だ。
 
 自分のすぐ隣なので、一応、説明を試みたのだが、自分の英語が駄目なのかもしれないし、そもそも彼らが英語圏の人間ではないのかもしれないし、通じたのかどうかは分からなかった。

 とはいえ、おじさんはおばさんに何事か言っていた。英語ではどうもない。
 
 ホームに電車が入って扉が開くと、外国人のおばさんは並んでいる列を無視してさらに割り込んでいった。とはいえ、結局、席には座れなかった。
 
 おじさんは、こっちを見て、困りました...という顔をして、後から自分も列車に乗り込んだ。これは正当である。
 
 周囲の人たちの反応を見るに、列を無視して割り込み、乗り込んだ外国人のおばさんに対しては、全員が不快感を感じたらしい。文句の声が上がったし、小突いたりもしていた。
 
 ∧∧
( ‥)ここから分かることは
    明白である
 
  (‥ )ルールを守らないよそ者は
      徹底的に排除しなければ
      ならない
 
 以上はまれな事例だ。だがもし、この先このようにルールを守らない人間が増えれば、列を作って行儀良く待つことで得られる利益の保証はなくなる。保証が無い以上、ルールを守るものは誰もいなくなるだろう。守っても意味がないからだ。
 
 結果的に、全員が損をすることになる。
 
 それを防ぐためにはどうすれば良いか?
 
 ルールを守らない人間は排除し、抹殺せよだ。
 
 ∧∧
(‥ )日本の秩序は
\‐  村八分のルールで
    運営されている
    そう吐き捨てる人もいるけど
 
  (‥ )秩序というものは
      もともとそういうものだ
      吐き捨てる連中は
      それが分かって
      いないのだね

 
 倫理とか道徳というものが、もともとそういうものなのだ。
 
 倫理と道徳は、裏切り者を村八分にしてリンチして排除して、吊るし上げて殺すことで初めて成立する。
 
 人間はプログラム通りに行動する機械ではないし、社会を構成する部品でもない。利害関係がばらばらな個人の集合でしかない。
 
 人間は人間なのだ。機械じゃない。
 
 それをまとめるものこそが、利益と協定と遵守と排除と暴力だ。
 
 ∧∧
( ‥)ろくでもない仕組みだけどね
 
  (‥ )他にやりようがないのだよ
 
 というか、実のところこれは人間だけの仕組みではどうもないらしい。例えばミツバチは群れを作る利益がもはやあまり無いという。より正確に言うと、母親である女王の子供、つまり働き蜂から見ると自分の妹を育てる意味があまり無い。これは女王蜂が乱交に近い交尾をすることで生じてしまうことなのだが、その結果、働き蜂たちはむしろ自分で産卵して子供を育てる方が良い。
 
 *働き蜂は交尾をしていないが、雄なら産める。
 
 ∧∧
(‥ )実際、それをするものもいる
\‐
 
  (‥ )だけどみんなから
      ボコられちゃうのだよね
      生んだ卵も発見次第
      全て殺される
 
 つまり、全員がズルをしたい
 
 しかし、他人がズルをすると自分が割を食ってしまう
 
 それゆえ、自分はズルしたいのだけど他人のズルは許せない
 
 それゆえ全員が抜け駆け出来なくなっている
 
 相互監視と制裁でズルが許されないのなら、母親である女王蜂が産む卵を育てることで妥協しよう
 
 ∧∧
( ‥)道徳の正体とはこれだと
 
  (‥ )仲間を遵守せよ
      しかし裏切り者は殺せだ
 
 外国人労働者や移民を増やせという経団連などの主張は、それが進行したらある時点で全員の怒りを買うことになるだろう。行列に並んでいたのにそれをよそ者に無視された。それがたびたび起これば全員がこれまで得ていた利益を奪われることになる。利益を奪われれば怒りだすこと必至。共通の怒りを持てば、その怒りをぶつけることは正当となる。法律は人間に入力されたプログラムではない、至上命令でもない。法律とは、全員の賛意があって成立している約束事でしかない。つまり法律とは株券だ。それに価値を与えるのは全員の認識だ。認識が変れば法律の価値は暴落し、法律は紙くずになる。そうして別の見えざる法律が暫定的な通貨として流通しだす。
 
 つまり暴力が正当化されるのだ。移民推進の言い出しっぺたちは群集によって家から引きずり出される。首に縄をかけられて死ぬまで道路を引きずり回される。そうして建物から吊るされ、油をかけられて焼かれることになるだろう。
 
 それこそが道徳であり倫理というものだ。
 
 あの小さなトラブルでさえ声を上げる人がいた。もっと多くなれば怒る人は多くなる。それが臨界に達したら集団は別のフェーズへ移行する。超法規的な手段が全員の賛意で承認される。裏切り者狩りが始まり、抹殺が開始される。これは必然。
 
 ∧∧
(‥ )日本は移民に頼らず
\‐  自力で状況を
    打開しなければいけない
    そういうことですかね
 
  (‥ )言い換えるとあれな
      僕の考えた理想の移民が
      最強の労働者だ
      今の若者は駄目だ
      そう言っている老人たちは
      実際には
      自力で問題を
      解決することを
      拒否したのだな
 
 たんに過去の遺産にすがりついて、これが減ってしまうのは嫌だ嫌だ、と泣きわめいている、歩くことも出来ぬほどに太った近視眼のデブでしかない。
 
 彼らはすべてをあきらめて、自由意志を放棄して空想の世界に逃げ込んでいるに過ぎぬ。
 
 これが老いというものだ。老いるとは悲しいものだ。
 
 そして一方、日本社会は村八分で成り立っていると吐き捨てる人は、実のところ人間を機械だと考えているのだろう。プログラムされた道徳に沿ってただ行動するだけの機械。彼らは人間をそう思っている。そうでなければ、人間が示す本来の姿を見て絶望したりはしない。
 
 ∧∧
( ‥)あるいは
    村八分と吐き捨てる人は
 
  (‥ )彼ら自身が
      プログラム通りに
      頑迷に行動する
      人工知能のような存在だ
      そういうことだろうな
 
 

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