自己紹介
- 北村雄一(北村@)
- イラストレーター兼ライター 詳しくはhttp://www5b.biglobe.ne.jp/~hilihili あるいは詳細プロフィール表示のウェブページ情報をクリック
2014年7月28日月曜日
私は確かに捕まえた(多分)
地球の歴史ではごくまれに、生物の絶滅がほぼ一斉に、しかも大規模に起こることがある。これが大量絶滅と呼ばれる現象で、生物の化石が豊富に見つかるようになるカンブリア紀以後、特に大きなものが5回あった。
∧∧
( ‥)それがいわゆる
ビッグファイブ
( ‥)これ自体は事実なんだが
‐□ この出来事を過剰に
神秘のベールに包んで
しまう人がいるのだな
例えばこう。
大量絶滅が起こるからこそ、それまでの覇者が滅び、新たな生物が進化する。絶滅こそが生物の進化を促進する原動力なのだ。
これは意外と多くの人が主張することであるし、信じ込む人も多い。もちろん、以下に述べるようにこれは正しくない。
∧∧
(‥ )主張している人や
\‐ これを信じている人は
自分たちが大量絶滅という
出来事を神秘のベールで
包んでいるとは
思っていないでしょうけどね
(‥ )だけどさ、
”絶滅が進化を加速する”
この文章は動力を
明らかにしていないの
だよね
いや、彼ら自身は言うのだろう。というか言っているのだ。絶滅が進化を促進する、加速する。と少なくとも、動力源を説明している”つもり”になっていることは疑いない。だがしかし、
∧∧
( ‥)ゾウが絶滅したら
どうなるの?
(‥ )ゾウみたいな動物が
別の動物から進化する
はい、これは説明ではない。
確かに地球の歴史では、ある生物が滅び去ると、別の似たような生物が現れる。そういうことの繰り返しだった。
∧∧
(‥ )でもこれは実際には
\‐ あれなんだよね
ある生物が存在する
その生物は他の生物に対して
生存競争を通して
”圧力”を加えている
(‥ )その生物がいなくなる
しかし周囲の”圧力”は
存在している
だとしたら圧力のなくなった空白に、他のものが入り込む。水を取り除けば周囲の水が流れ込むように、地面を掘って穴ぼこをつくればそこに流れ込む土砂によって平らにならされるように。
生存競争は測定されているし、観察もされている。つまりこれはごく単純な、言って見れば力学的な説明であり、実在だ。こういうのを説明と呼ぶのであって
”ある生物が滅びればその地位は別の生物が進化によって埋める”
という表現は経験則だ。これは説明でもなんでもない。
∧∧
( ‥)それを踏まえると
大量絶滅で進化が起こる
とは説明でもなんでもない
( ‥)事実な、この”説明”は
‐□ 大量絶滅の間に起こる
絶滅と進化を説明して
いないんだよね
例えばビッグファイブ最後の2つは三畳紀末と白亜紀末に起こった、では三畳紀末以後と白亜紀末期の生物が同じか、というと
∧∧
( ‥)全然違うよ、と
(‥ )そもそも絶滅は絶えず
起こっていること
だからね
というか、大量絶滅、それ自体が、普段はランダムに起こっている絶滅が、ある時期に集中する、そういう出来事である。
つまり絶滅は絶えず起こっている。それは本来、自然淘汰や生存競争で起こるような出来事であって、つまり進化の結果だ。競合によって生物の有様は変貌しあるいは置き換わる。私たちはそれを”絶滅”と呼ぶ。絶滅は結果だ。原動力ではないし、そして絶えず起こっている。大量絶滅がなくとも生物界は進化し、変貌し続ける。
∧∧
(‥ )つまりやはり
\‐ ”大量絶滅で進化が起こる”
とは説明ではない
(‥ )普通に起こっている進化を
見落としている見解で
進化を説明しようとする
無茶ぶりだ
こんなものは
説明ではないのさ
まあ、だから”大量絶滅で進化が起こる”とは、根本的にたわ言だ。
だがしかし、ここから分かることがある。
大量絶滅で進化が起こる、これを信じる人は、進化の動力、あるいは常日頃起こっている進化の過程に興味がないか、知らないか、あるいは全然理解していないか、そのどれかだ、ということになる。
∧∧
( ‥)多分、メンデル遺伝や
遺伝子頻度の変動や
動態を知らないのだろうと
( ‥)というかだな
‐□ 進化とは
遺伝子頻度の変動だ
ということすら
知らないのだと思う
例えば、なぜ人間は進化しないのか?? こういう質問は、神による天地創造を信じる創造論者に限らない。
天地創造を鼻から馬鹿にする人間も、これとまったく同じことを尋ねる場合がある。
∧∧
(‥ )でも、例えば北米先住民の
\‐ 血液型の頻度を見ると
O型が非常に多かったり
反対にA型が非常に
多かったりする
(‥ )ほら、進化してるじゃん
なのだが
これは”進化とは遺伝子頻度の変化である”という理解に基づくと理解できること。
反対に言うと”大量絶滅で進化が進む”と考えている人は、北米先住民の血液型の頻度、と言われても、はあ? それの何が進化なの?? としか思わないのではないだろうか。
∧∧
( ‥)そしてそれを裏付ける証拠も
あるのだと
( ‥)以上のような人の書いた
‐□ 文章を読むとな
出てくるのだよ
曰く、遺伝子が都合良く変化するわけがない
曰く、ショウジョウバエを暗黒で世代交代させたら大きな変化が出た。これは通常では考えられないことなので、なにか未知の機構が働いているに違いない
つまり多分、彼らはこう考えている
進化とは
遺伝子Aが遺伝子Bに変貌する過程だ
と
∧∧
(‥ )でもそれは間違いなんだよね
\‐ 変異は絶えず起こっていて
メンデル遺伝で隠されて
蓄積されているから
遺伝子AもBもCも他色々
すでにあるわけだよね
(‥ )でもそれが
理解できていない
そしてこういう大前提が理解できていないから、”遺伝子AがBに直接変化する”、とか考え始める。そう考えるから都合良く進化するのはおかしい、とか、こんな急激な進化は通常では考えられない、とか、そういうことを言い始めるのだ。
∧∧
( ‥)つまり
( ‥)ああ、捕まえた
‐□ やっと分かったぞ
彼らの奇怪な世界観と
理解を失敗する原因が
多分、自分は人々の心に接近できたのだと思う。だがしかし、これはなんと奇妙な体験か。
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