自己紹介
- 北村雄一(北村@)
- イラストレーター兼ライター 詳しくはhttp://www5b.biglobe.ne.jp/~hilihili あるいは詳細プロフィール表示のウェブページ情報をクリック
2014年4月7日月曜日
混沌たるサボタージュ局
2009年に事業仕分けがあった時、地球深部探査船「ちきゅう」は仕分けられてしまったのであった。
∧∧
(‥ )でも実際には
\‐ 仕分けの根拠となった
書類に間違いがあった
(‥ )本来ならその間違いは
問題ないはずだったのだ
ちきゅうは文科省の管轄下にある。ちきゅうの運用費用の申請が文科省から出される。
それに対して財務省が「そうはいうが、これはいかなることか? これほどの予算を割くに値することなのか?」と疑問点を述べる(*ここが間違っていた)。
それに対して文科省が答える(*理屈の上ではここで間違いが正されるはずだった)。
∧∧
( ‥)だから結果的に財務省の
認識に間違いがあっても良い
それは質疑応答の過程で
正されるはずのものである
( ‥)問題はだ、本来はそういう
‐□ 書類のやり取りで
専門家も踏まえて行われる
作業に政治家がからんだ
ことだったのだよな
彼らは、「ちきゅうは3年間かけて1600メートルしか海底を掘削していない」と勘違いした。
「ちきゅうの目的はマントルまでの掘削だが、3年で1600メートル、ではマントルまで一体、あとどれぐらいの予算と月日がかかるのか? 」
彼らはこれを根拠にこの船を仕分けてしまった。
この話=>hilihiliのhilihili: 質問だの反語だの、そんな小手先の問題ではない。資料が間違っている。
*実際には一回の航海で「ちきゅう」は2000メートルぐらい掘れる。そうであるのに、なぜマントルまで掘っていないのか? それはマントル掘削は国際事業であり、具体的にどこを掘るのか参加各国の意思が決定されていないからだ。
∧∧
(‥ )ひとつの事案に1時間もかけず
\‐ 専門家も交えず、
書類でやり取りを
することもなく
やった結果がこれである
(‥ )億単位の金が動くのに
書類を介さず
ただのショータイムにして
ええ格好しいした連中の
やったことがこの結果だ
まあ、良くも悪くも民主主義であったとも言えるし衆愚政治だとも言える。もちろん、衆愚政治はファシズムと同様、直接民主制のあるべき姿でもあるだろう。それは古代ギリシャを見れば明らかだ。そしてまた、古代ギリシャがローマ、つまり貴族による寡頭制に敗北したことから分かるように、直接選挙制の素人臭さは破滅的だ。あるいはクセノフォンが語るソクラテスの言い様からしても、それは明らかだろう。経験が無いのに理想だけで政治をしてしまえるし、それを選んでしまう。これが生の民主主義が持つ恐ろしさでもある。
民主主義のあるべき姿、それは結局、ぽっと出の素人が政治をするということであり、そして、そんな彼らに出来ることなどない、という、当たり前な話でもあった。
本来は、こういう素人臭さは官僚が緩衝することだったのだろうけども、そこに若い政治家が調子にのってずかずかと入り込んだ結果がこれだ。
∧∧
(‥ )そういえば小沢さんは
\‐ 僕らみたいなベテランでも
書類を読むのは大変なんだよ?
ましてや若い君たちに...
と事業仕分けに
反対的だったとは
本当ですかね?
(‥ )あの人は、評価がなんとも
難しい人であるなあ
とはいえ、それが本当なら
あれね、年を取るとは
現実を見据えるって
ことでもあるのだろうな
それが諦めであっても、経験であっても、達観であっても、知恵は知恵だ。
さて
Bureau of Sabotage
∧∧
( ‥)ビューロー・オブ・サボタージュ
略号はBuSab
フランク・ハーバートさんが
自分の小説で登場させた
架空の組織だよね
( ‥)日本語に訳すと
‐□ サボタージュ局
あるいはサボ局だね
ある日、過剰なまでに効率性を求めた人々が政権を手にした。彼らは善意に燃えていたし、効率とスピードを追求した。次々に新しい法律を作り、予算を計上し、しかも、それが月単位ではなく時間単位で行われる、そういう有様だった。どんどん増える得体の知れない部局、会議、事務局、事業、そして次々に変更される法律と指令、混乱は混乱を生み出し、それに対応して新しい法律が作られ、それが次の混乱を生み出し、速度はますます早まった。状況が暴走的となり、ついに社会全体が制御不可能になった絶望の時、その部局は現れた。
構成員と立案者が何ものであったのか、それは分かっていない。彼らの目的はひとつ。政府の決定を遅延させること。サボタージュ工作によって立案を遅らせ、考慮する時間や検討する時間を与えること。
∧∧
(‥ )ハーバートさんのアイデアって
\‐ 異様だけども、時々、妙な
現実感があるよね
(‥ )事業仕分けは予算を決める
関係もあってか
年中開かれるわけでは
なかった
民主党の政権は
自らの失政で3年で終わり
仕分けの悪影響は
ある程度は組織で緩衝できた
だがそうでなかったら
どうなっていたか?
∧∧
( ‥)サボ局が必要だったと思う?
( ‥)その必要性は今でも
‐□ 変わらないな
今でも、どうしても理想を追求する人々がいる。彼らは理想家であるがゆえに、民主主義の名に基づいて統制を行おうとする。ファシズムを糾弾する人々が表現の自由を踏みにじるように、理想的な民主主義はファシズムだ。ファシズムを糾弾する人は自らが少数独裁制を指向する。
「これこそがファシズムでない本当の自由と表現と民主主義である!」
この雄弁には言葉と裏腹にヒステリックな統制しかない。
∧∧
(‥ )漫画の表現規制とかね
\‐
(‥ )決断しないのも間違い
遅れた答えも間違い
しかし義憤にかられた
拙速もまた危険なのだ
∧∧
( ‥)ここでサボ局ですか
( ‥)あるいは混沌だね
‐□
ハーバート自身が作中で暗示しているように、サボ局にも問題がある。政府の力を削ぐ、という任務を持っている彼ら自身が力を持っているのだ。しかし自己破壊をすると自分たち本来の機能を果たせなくなってしまうという矛盾。彼らは自分の局員の身内や子孫を決して雇わないが、それでもなお、組織自体の硬直化とかそういう老化の兆しを防ぎ切ることはできない。
そしてこれは、真面目な人々が陥る問題でもある。ファシズムを声高に批判する人、それ自身が剛直化してしまうように。
∧∧
( ‥)つまり必要なのは
(‥ )混沌だな、顔無き神が
我々には必要だ
そして、混沌は拙速な決断を遅延させることにもなるだろう。混沌はサボタージュたりうる。
∧∧
( ‥)そして混沌には顔がない
(‥ )混沌はべっぴんさんでは
ないのだよ
自由だの民主主義だの
そんなあばずれ共と違って
方向性がないのでね
統制なんて
起きやしないのだ
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