自己紹介
- 北村雄一(北村@)
- イラストレーター兼ライター 詳しくはhttp://www5b.biglobe.ne.jp/~hilihili あるいは詳細プロフィール表示のウェブページ情報をクリック
2014年6月15日日曜日
偶像崇拝と統治の現実
∧∧
(‥ )サウジアラビアからの
\‐ 留学生さんが
仏像を破壊した
というニュース
(‥ )イスラームにおいて
偶像崇拝は禁止だから
そういうことなのかな
タリバンによるアフガニスタン、バーミヤン石窟と仏像の破壊は有名だ。
∧∧
( ‥)でもイスラームと
ムスリムが無条件に
仏像破壊
あるいは仏教迫害を
行うわけでは
ないですよね
( ‥)イスラームからすると
‐□ 預言者ムハンマドの
啓示が最後にして完全だが
他の啓示も
それに先行するものとして
存在を認めているからね
イエスの預言に従うキリスト教、さらにアブラハムやモーゼの預言に従うユダヤ教。そもそもアラブ民族はユダヤ教徒と同様、セム語族であってお互い似たようなものである。イエスもユダヤ人なりアラブ人なり、そういう人の一員だった。当然、イエスが金髪碧眼の北欧系の白人などというわけがない。そしてセム人は無数の預言者を生み出した。セムの人々はそういう文化を持つ人々だってことだし、イスラームはその中から誕生して、それらすべてを包含しようとしたのだとも言える。
∧∧
(‥ )でもインドと仏教は
\‐ サンスクリット語だから
ブッダさんはセムではなく
インド・ヨーロッパ語族だよね
(‥ )しかしイスラームが
征服地を広げると
ブッダも預言者の系譜に
組み込まれたのだよな
*この場合、仏教とその偶像と崇拝は、神からの啓示、預言者であるブッダの言葉をゆがめた結果である、ということになろう。実際、仏教において仏像が現れるのはアレクサンダーとギリシャ人による征服とガンダーラ美術が発端だ、というのなら事実としてそうだということになる。
**確かに、仏像を拝んで良しとすることは、ブッダとその教えを骨抜きにする、という指摘は正しいのだろう。少なくとも、肝心なのは仏典であるという発想からするとそうなるはずだ。
**無論、だからといって現在の仏教徒の心証を無視して仏像を破壊して良い、というわけでもない。
ともあれ、少なくともアフガニスタンあたりのムスリムには、ブッダもまたムハンマドに先行する預言者である、このような理解があるのは確からしい。
例えばタリバンに撃たれた少女の国連での演説はそういう世界観を踏まえたものではなかったか? という話は以前にしたネタ=>hilihiliのhilihili: 仏教徒もまた啓典の民
しかし、すべてのイスラームとムスリムがこういう理解を持っているわけではないことも、まったくの事実
∧∧
( ‥)というか
仏教徒も啓典の民であるとは
仏教と接触した
イスラーム東方における
それも外縁の
認識なり解釈だろうと
( ‥)ブッダも預言者である
‐□ この発想は
アフガニスタンとか
あの近辺に
限られている可能性だな
考えてみれば当然だと言える。アフガニスタンはインドを統治したムガール帝国発祥の地でもある。チムール帝国の再建ができぬと分かった帝国最後の皇帝バーブルはアフガニスタン、さらにはインドに攻め込んで新たな国を打ち立てた。それがムガール帝国。
かつてモンゴル帝国が崩壊してゆく混乱から抜き出たチムールは、モンゴル皇室の女性と結婚することで正当性を得て、中央アジアにモンゴルの正当後継者である大帝国を築き上げた。その子孫であるバーブルの帝国がムガール、つまりモンゴルと号されたのは当然なんだろう。
∧∧
( ‥)でもかつてのモンゴル、
トルコ人と違って
いまやチムールも
子孫のバーブルも
イスラーム教徒である
(‥ )バーブルは酒を飲んで
戦に負けたりして
いるんだけどな
あの人の人生、
なんか魅力的だよね
*注:トルコ人はもともと中央アジアの民族で、漢語で言う突厥などがそれ。モンゴル人と同様、遊牧騎馬民族なのでイスラーム世界においては優秀な騎馬戦士として売買、重宝された過去がある。こうした奴隷兵士(マムルーク)が打ち立てた王朝や、征服者として建設した国家がマムルーク朝やセルジュク朝、オスマントルコ帝国であり、さらにはチムール帝国、ムガール帝国でもある。
いずれにせよ中世以後、アフガニスタンからインドまで、ここに侵入したイスラーム教徒は仏教やヒンズー教を統治する必要があったわけで
∧∧
(‥ )ここらの人は
\‐ 仏教徒も啓典の民であり
ブッダもイエスと同様
ムハンマドに先行する
預言者であると解釈する
(‥ )必要性に迫られたって
ことなのだろうな
だが、言い換えるとそういう統治の現実と直面しなかった地域のイスラーム教徒は以上のような発想を持たない、ということになる。
∧∧
( ‥)サウジアラビアの人は
そういう現実に
直面したことがないって
ことですかね
( ‥)少なくとも
‐□ 直面したと考える
理由はないよね
あったとしたら、それはムハンマドの最終的な勝利で、アラブ人の偶像崇拝者を打ち倒した時が、多分、最後だろう。キリスト教との聖像崇拝論争も、むしろローマ帝国との対立で語られることだ。それは支配でもないし、統治でもないように思われる。それに、征服されたエジプトなどのキリスト教徒は、もともと三位一体ではなく、単性論者が多かったのではなかったか? そして初期の大征服が終われば、ローマはシリアよりも向こう側だ。アラビアからははるかに遠い。
∧∧
(‥ )つまり偶像が存在する世界
\‐ しかも、それが
生活に組み込まれていて
覆せない現実がある
日本に留学することで
そういう現実に
初めて直面した
そういうことなんですかね?
(‥ )個人の資質もあるから
そう簡単に
一般化できることでは
ないのだけどね
どう見るべきなんだろうね
現実と直面した時、人はどう反応するか試される、そういうことかもしれぬ。
∧∧
( ‥)異教徒に課す人頭税を
原理主義的に復活させて
結果的にムガール帝国を
衰微させた
アウラングゼーブさんとか
(‥ )原理主義的に
正しくても
現実の統治に
合っていない場合
さてどうするか?
理解力と法的な解釈、
対応の見せ所よな
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