自己紹介
- 北村雄一(北村@)
- イラストレーター兼ライター 詳しくはhttp://www5b.biglobe.ne.jp/~hilihili あるいは詳細プロフィール表示のウェブページ情報をクリック
2013年5月30日木曜日
自分を愛するな
その本は1886年の本だった。
∧∧
(‥ )背表紙がとれてるね
⊃_–
(‥ )でも、紙自体は健在だな
コピーは最小限に行って、必要な部分は後日、書き取ることにする。
∧∧
( ‥)127年前の本ですよ
(‥ )150年以上前の本も以前
コピーしたけども、
あれに至っては紙も
ぼろぼろになっていたな
もちろん、保存条件次第でもあるだろう。
∧∧
(‥ )日の当たるところ、
□ 表紙がなくて空気に触れやすい
状態、そういう状況だと
紙は数年で黄色くなったり
しますからね
(‥ )だけどあれだね、
電子メディア
電子媒体と違って特別な
読み取り器は必要ないし、
機械の変遷に翻弄される
こともない。
大いなる長所だな
少なくとも普通の紙でも
100年は保つわけだ。
もちろん、紙の性質も紙次第なので一概には言えないけど。
∧∧
( ‥)電子で描いた絵も
□– プリントアウトしておいた
方が良いのでしょうね
(‥ )絵もそうだけども、
何のために本を作るか?
それは後の人に何事か
伝えるため。
これは本においては
特に顕著だよね。
たとえ絶版になっても、本自体は著者よりも長生きできる可能性を絶えず持っている。そのための古本だ。
∧∧
(‥ )まあ、ほとんど消滅してしまう
\– 運命なんですけどね
(‥ )そりゃあそうさ。だから
次々に書くわけだよ。
∧∧
( ‥)電子化の際に本を裁断する
場合がありますよね。
それを見て嘆く著者がいる
しかし、樹々を伐採して
くだらない本にする人間こそ
くだらないではないか、
それを見て樹々は嘆くだろう
そう指摘する人もいる。
(‥ )それはこじゃれた言い様
だけども、物事が今ひとつ
分かっておらんよね。
人間も木も生物だ。殺し合って相手を食いつくし、相手の構成物から自分のコピーを作る。そこに容赦はない。あるのは自己目的化したエゴだけだ。機械的に相手を踏みにじり、無限に収奪する機会をのがさぬコピーのコピー。
∧∧
( ‥)死んだ人は火葬されて
二酸化炭素と水に戻り、
樹々に吸収され、そして
伐採されて本になる
(‥ )お互い様さ。
人が自らを託した
自分の本の末路に
涙するように、
人を食って実った樹々は
自分の実がリスに食われて
嘆くのだ。
人も樹々も紙も容赦ない
エゴイストだよ。
人のようには嘆かないが、例えば彼らは毒物やタンニンを実にしこんだ。嘆くどころか相手を殺す気概でもって対抗措置を打ってくる。
ああ、しかし、消費者だけがこの渦巻く敵意に気づかない。
( ‥)理由は簡単なんだよね。
消費者は消費するだけ。
別に生存と殺し合いの
ゲームの渦中にいるわけ
ではないからな。
∧∧
( ‥)この場合の消費者は
媒体、という意味ですね
土も墓も、媒体であり実りの土台ではあるが、それ自体はゲームに参加しているわけではない。
∧∧
( ‥)消費者を墓と呼ぶと
激怒する人もいる
でしょうけどね
(‥ )人は皆、墓だよ。
骨は物質でしかない。
思い出は劣化していくが
それでもその思い出が
埋葬されて
残っているのは
生きている人の内だろ?
人は連綿と続く墓以外の
何ものでもなかろうよ。
∧∧
(‥ )いずれにしても、
\– 本の存続ゲームの中で
あなたの圧倒的な劣勢は
覆し難いですけどね
(‥ )本の存続そのものよりも
本が消滅し切る前に
たった一人でいいんだ。
次が現れれば良し。
それこそが焦点だ。
それでもなお、
劣勢は否めないけどね。
自分の人生が成果も無く、無駄に終わることは、想定していなければならぬ。
∧∧
( ‥)だけど? それでも
まだましな選択肢だったと?
( ‥)僕を愛して、自分を見て
そう叫んだ連中が、
なぜ僕を見てくれないの?
なぜそんなものを見てるの
僕を見てよ、これを見てよ
そう罵った連中が
どうなったか....
それを見ただろう?
誰がお前など愛するものか。
誰がお前ごときの作ったものなど見るものか。
誰がお前のありもしない才能など評価するものか。
お前は真っ先に自分を殺すべきだったよ。自分を愛するべきではなかったのだ。
( ‥)もしそうしていたら奴は
上京もせずに
持ち込みもせずに
なじめないコミケで浮く
こともなく、
無駄に歳を取り、
同人誌も作れず、
絵もうまくならず
不摂生な生活で過剰な
肥満体と化して、
尻尾巻いて故郷に
逃げ帰ることもなかった
だろうな
∧∧
( ‥)まあ、そういう人も
いましたね
自分を愛する者にはその報いが待っている。目的のためなら他人も消費者もことごとく踏みにじって良いが、自分を愛するのは犯罪だ。
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