物理科学は公式や方程式で正確無比に現象を記述できる。だが歴史科学は違う。歴史科学が扱うものは方程式で示せない。だから歴史は憶測である。ゆえに物語こそが残されたデータから歴史を読み解く有効な手段となる。
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( ‥)よく聞く意見ですけど、
あからさまな間違いですよね?
歴史は憶測ではないし
データから推論できるものだし、
物語は有効な手段ではありません
( ‥)ああ、だが、以上のたわ言の
問題はもっと根源的な部分に
こそあるのではないか?
物理科学は方程式や公式で、現象を正確無比に記述できる
∧∧
( ‥)大間違いですよね?
(‥ )誤差がかならずそこにある
だから物理学の人々もばらつきのある
データと、導きだしたグラフを
照らし合わせて、合っていそうか、
合っていなさそうか、検討する。
でも人によっては言うのではないか? それは観測機器や精度の誤差だ。
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( ‥)しかし、地球と太陽の影響を強く受ける
月の振る舞いは、他の惑星の運動より
複雑になるのです。
(‥ )つまり観測機器や精度の問題だけじゃない
関わる要素や、そういった要素の
影響力の大きさの問題だよね。
でも人は言うのではないのか? 要素さえ考慮すれば正確無比である。
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( ‥)これは明らかにおかしい考えですよね?
( ‥)ああ、そうなんだよな。
観測から導いた方程式や公式がある
方程式と現実とのずれは誤差や考慮しなかった要素の影響である
方程式は現象を正確にとらえている。
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( ‥)おかしな言い様です
(‥ )現実から、現実とはずれがある
”現実を正確に説明できる方程式”を
抽出した、そう言っている。
言っていることがおかしい。
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( ‥)ようするにむしろあれです。
観測を近似的に説明できる方程式を
見つけた、だからこの方程式は
正しいんじゃね? ですよね。
( ‥)逆に言うとあれなんだ。
現実の背景に数学的な関係性が
実態として存在しているが、
現実はそれを不器用に反映するだけ
あるいは、我々の理解がそれを
十分に把握できないだけで、
本当は完全に正確である。
そういう信念がないと
先のようなことは言わない。
∧∧
( ‥)つまり最初の言い様は色々な意味でおかしい
宇宙は方程式で記述できるはずだのに、宇宙の
歴史は物語で記述すべきと言っている。
変ですよね?
( ‥)単純に考慮すべき要素が多いから、
あきらめて、自分の心理が満足する
物語をつむぐことで満足しているの
かもしれない。
だが、ふと思った。
実はそうではなく、連中はデータの背景に潜む(と勝手に確信している)数学的な関係性と、データから適当につむいだ物語とを、等価だと思い込んでいるのではないか?
∧∧
( ‥)...そんな馬鹿な
(‥ )いや、だがそこを検討するべき
だと思うのよ。
例えばいないか? 理屈で考えるとこうであったはずだ!! と過去について安易に断言して、あまつさえ、論理的にこれは正しいと口をすべらせてしまう連中が。