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2010年7月2日金曜日

老人と確信

 
 疑似科学であろうが、オレ様理論だろうが、

 
    (‥ )行き着く先は同じなんだよな
 ∧∧
( ‥)ああ、まあねえ

 自説の防衛に徹して、それ以上、ただの一歩も前に進めない。

 こんな話。ある博物館にご年配の人がやってきた。そのじいさんはこう言った。この展示物は化石ではなくて現生動物なのではないでしょうか? 係の人は言いました「おじいさん、これは復元された模型で、元は化石なんですよ」

 ∧∧
( ‥)でも、おじいさんは引き下がりませんでした。

    (‥ )おじいさんはいいました。
       「でも大きさが違うだけで形がまるで同じです!!」

 聞いただけだが、なんでもそんな話。

 おじいさんは子供の時、その博物館でまったく同じことを言って、まったく同じ返しを係の人にされたらしい。当人によると「えらい人がいっているんですからお前のような素人が口だすな」みたいなことを言われたそうなのだが。

 ∧∧
( ‥)まあ、本人の自己申告ではそうであるということですね。

    ( ‥)もはや確認のしようはないだろうな。
        じいさんが子供だったというのなら、言ったと言う
        その人はもうご存命ではあるまい。

 じいさんの気持ちも分からんでもない。あの展示は復元模型はあるものの、化石がない。おまけに復元模型は現生種をそのまんま大きくしたような模型だったし(そういう点だけでは確かに配慮がちょっと足りないのかもしれない、もっとも50年は前のものなんだけど)。

 ∧∧
( ‥)でも、おじいさんにも出来ることが
    あったはずなんですよね。

    (‥ )本を読め、調べろ。それから聞け。

 翅の脈をみれば一目瞭然、明らかに現生種ではない。じいさん、半世紀以上の間、何をしていたんだい?

 ∧∧
( ‥)素人にそこまで求めるのは酷だ、とも
    言えますけどね。

    (‥ )酷だろうがなんだろうが、
        それは本人が中途半端なのがいかんのさ。

 素人だっていうのなら「おかしいなー、なんでかなー」と言っていればいい。調べるのならちゃんと調べればいい。あの古生物はちょっとした本なら必ず載っている(私も描きましたよ)。子供だって知っている。図書館にいけば、うまくすれば化石の写真も見つけられる。現生グループは図鑑になっている。系統的な評価はないにしても、分類的な形質の評価も図書館で見つけられる。比べれば最低限こうは分かる。

 これは現生種ではない。

 だけども、そのじいさんは以上のどちらでもないことをした。


    (‥ )半世紀の間、何をしていたのかね?
 ∧∧
( ‥)まあねえ、調べてないのに、なんで
    オレが正しい、子供時代に不当な扱いを受けた!! と訴えることが
     できようかと、そういうことですね。

 思いつきと思い込みで半世紀以上。長いがただの一歩も進んでいない。

 ∧∧
( ‥)どのオレ様理論もそこへ至るのだと。

    (‥ )最初に至った答えからただの一歩も出られない
        そういう運命だってことだろうな。

 もしもオレ様理論屋さんの心理や解答探索の手続きが、

:最初に思いついた仮説に拘泥する
:最初に思いついた仮説でデータを説明するだけで満足する
:データとの整合性の度合いを計る方法論を持たない

であるのならば

 ∧∧
( ‥)最初の手持ちのデータから導いた仮説に満足して
    その仮説で説明できた、という程度でさらに満足し、
    整合性を計れないから、整合した、で十分であると
    確信すると。

    (‥ )前にも言ったけども、仮に彼らがそう動作しているとすると、
        少ないデータでそうそうに満足して検証しないし、
        自説は反証されなくなるんだよな。

 オレ様理論屋さんや疑似科学信奉者はなぜ本や論文を読まないのか? というのは第三者から見れば当然の疑問であるけども、たぶん、彼らご本人達にとってはそういう”正論”は理不尽極まりない要求でもあるんだろう。

 ∧∧
( ‥)まあねえ、もし以上のように考えているのなら
    すでに真理をつかんでいるのだから、
     より多く、さらに読め、と言われるのは
     理不尽でしょうね。

    (‥ )すでに分かっている(と思い込んでいる)ことを
        さらに理解しろ、説明できないことがあれば
        理論を破壊することもいとわずに、もっとデータを集めろ
        そんな要求は彼らには理不尽の極み。


 ∧∧
( ‥)まあ、以上の解釈自体が検証されていない
    あなたの仮説なんですが。

    (‥ )まあねえ、心理学の本も読み進めていないからなあ。

 とはいえ、世の中には満足した上でまったく調べなくなる人たちがいること、このこと自体はまぎれもない事実。

 ∧∧
( ‥)さっきのおじいさんとか。

    ( ‥)半世紀の間、ぜんぜん調べなかったというのは
        驚きだよな。

 まあ、確信していたのだから調べる必要がなかったのだ、そう言われればそうではあるんだろう。
 
 だけども、その長い長い時間、持ち続けた思いと怠惰に、では一体どんな意味がある?

 そしてどのオレ様もそこへ至るのだとしたら、さてあなたならどうする?
 

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