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2009年11月14日土曜日

独自の仮説を発見するお手軽な方法

 
 さっき、前々から気になっていた本(オレ様鳥進化論者に該当する?)を発注。まあそのうちに届く予定。

 ここで言うオレ様鳥進化論者というのはオレ様理論屋さんの中でも曰く、”鳥はこうして進化したに違いない!!”と独自の理論を展開する人たちなのだが、どういうわけか大抵の場合、どの人も致命的な欠陥を共有する。例えば、

1:進化理論が分かっていない(進化を論ずるのに進化の原動力を知らないとはこれいかに?)
2:系統解析が分かっていない(歴史を論ずるのに歴史を復元する方法論を知らない/使わないとはこれいかに?)
3:祖先形質の復元が分かっていない(過去を論じているのに過去を復元する方法論を知らないとはこれいかに?)
4:扱うデータが異常に少ない(使えるデータのごく一部しか使わないとはこれいかに?)


 こんな感じ。他には多くのオレ様理論屋さんと同様、論文読まない、引用しない、教科書を無視する、解析手段に興味を示さない、仮説の経験的な検証をしないなどなどもおおむね共通する模様。

 でもまあ、そうなってしまうのは分からなくもないし、当然と言えば当然。

 ∧∧
( ‥)なんで?

     (‥ )教科書読んでスタンダードな方法論を理解し、
         それを用いれば、既存のデータを用いる限り
         既存のものと同じ答えがでてくるはずだろ?

 ようするにスタンダードなことをすればスタンダードな意見を述べることになるし、既存の意見に賛成することになる(ぶれがあるにしても容認できる範囲内)。


 反対に言えば独自の意見を述べるには次ぎの方法がありうることになる。

1:新しいデータを追加する(例えば新しい化石を発見する/あるいは使用できる場合にのみ有効)
2:データを作り替える(作り替えた場合、既存のものよりもより整合性の高い仮説を発見した場合に有効)
3:既存の方法論とはまったく違う、新しい解析手段を考える(解析手段そのものの妥当性が有効であることが示される場合にのみ有効)

 とっ、こんな感じ?

 ∧∧
( ‥)1番は例えばシュウ・シンさんのミクロラプトルに基づく
    新仮説とかですね?

     (‥ )2番だと”始祖鳥は鳥ではない”と報道された論文とかが
         該当するんだろうな。

 2番には他にもウプサラ大学のバットさんによるバージェス頁岩を含めた節足動物の初期系統の見直しなんかが該当しそう。ケプラーがかつてやったこともこれに該当するかもしれない。

 ∧∧
( ‥)3番は?

     (‥ )分岐学を提案したヘニング/ヘニックとか
         少数の化石からそれが何を反映しているのか
         調べる数学的手段を提案した人とか、
         そういうのが該当するんじゃないの?

 だが例えばオレ様鳥進化論者は、見た限りではこのどれもしていないらしい。ようするに新しいデータを発見するわけでもない、化石を見つけるわけでもない、データをより整合性の高い形に再編成するわけでもなし、ましてや新しい方法論や解析手段など提案したこともない。

 ∧∧
( ‥)でも、それでもなお独自の理論や仮説を展開しますよね?

     (‥ )以上の1、2、3を使用しないで既存のものと
         異なる仮説を展開するお手軽な方法がある。

1:使用可能なデータのうち一部だけを使う(データセットが既存のものと変わるので違う答えが出てきうる)
2:既存のデータを”全体の整合性とは無関係に”組立てる(少数のデータのみを使う場合、はしょったデータにある不整合は無視できるので特に可能)
3:オレ様な方法で解析する(解析手段が不明か、解析手段の有効性が不明か、あるいはありがちなのが解析手段が間違っている場合)

 ∧∧
( ‥)まあ、そうなると既存のものと違う独自の仮説を
    展開できるでしょうね。

    (‥ )教科書も読まず、論文も読まず、解析手段も理解せず、
        それでもなお独自の仮説を発見しているとしたら
        それは必然的にこういう方法しかないんじゃないのか?

 言い換えればこう。

 一部のデータのみを整合的にオレ様に判断すると誰でも新しい仮説を述べることができる。

 ただしスタンダードからは無視される。

 


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