少なくとも紀元前6世紀以前に成立した古代ギリシャの物語「イーリアス 」
トロイア王国と、そこに攻め寄せたギリシャ連合軍の戦い、すなわちトロイア戦争を舞台にし、題名のイーリアスは王国のいわば首都である都市イーリアスのこと。
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( ‥)でっ? ようやく
読み終わったわけだが
物語を一言で言うと
(‥ )勇者アキレウスによる
友人の仇討ち
もう少し説明すると、
友人パトロクロスをトロイアの王子ヘクトールに殺されたアキレウスがヘクトールを倒す話。
もうもう少し説明すると、
地中海の海辺に位置するトロイア王国の首都イーリアス。これを包囲して9年目。攻囲するギリシャ軍に伝染病が流行り出す。この病はアポロン神を祭る神官の娘を捕虜にしたことが原因だからこの娘を即座に返すべし。かように進言した勇者アキレウスに対し総大将アガメムノンは、神官の娘は返すがその代わりにアキレウスが捕虜にした娘を奪う。これを侮辱とみたアキレウスは戦争をボイコット。
アキレウスがいない今、トロイア軍と王子ヘクトールによる猛攻にギリシャ軍は戦列を支えきれず、防御を固めた上陸拠点内部にまで攻め込まれ、名だたる勇士も討ち死にし、損害甚大、もはや潰走寸前。
あんまりだよアキレウス! せめて私の出陣と助太刀を許可してほしい!
わかった、我が友パトロクロスよ。出陣は許可する。ただし生きて戻れ。
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(‥ )しかし残念
\− パトロクロスは奮戦するも
王子ヘクトールに討ち取られ
これに怒ったアキレウスが
ついに出陣
トロイア軍を圧倒し蹂躙し
ヘクトールを倒し
その死体を戦車でひきずり
友人への弔いであると
塚の周りをぐるぐる周る
息子に対する
この仕打ちを見かねた王様が
深夜、アキレウスを訪ねて
息子の遺体の返還を求める
(‥ )息子を失った父親と
友人を失った勇者
二人は共に泣き
アキレウスは求めに応じ
ヘクトールの遺体を返還
葬儀のために
12日間の休戦を約束し
トロイアはヘクトールの
葬儀を盛大に行う
これにて完
この後、伝承としてはギリシャ連合軍はアキレウスも失ってしまうが、知将オデュッセウスによる木馬の奸計によってついにイーリアスを攻略。王国は滅亡し、都市は劫掠され、ギリシャ連合軍参加者はそれぞれ帰国するのだが、それについて物語は語らない。
*ちなみに同じくホメロスによる物語「オデュッセイア」には少しだけ物語の続きが語られる。総大将のアガメムノンは意気揚々と帰国するも浮気していた奥さんに殺され、知将オデュッセウスは遭難して10年間も地中海を彷徨うことになった。
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( ‥)でっ? イーリアスを
読んだ感想はどうだね?
( ‥)合成弓を使って
−/ 青銅の鎧を貫通させて
重症を負わせる場面が
出てくるな
あと、数百年後のギリシャ・ポリス国家で使用されたものとは、鎧の様子がずいぶん違うのではないか? ということがうかがえるし、ミケーネ文明のものとおぼしき猪の牙を使ったヘルメットが出てくる。
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(‥ )後、前から聞いた通り
\− 戦車の使い方が
ホメロスの時代には
もうわからなくなっていた
ことが分かるね
(‥ )合戦場所までいくと
戦車から勇者が
飛び降りて
白兵戦するからな
そういう使い方が
ないわけじゃないけど
間違いだよねえ
興味深いことに、誰々と誰それが戦ったという具体的な見せ場では戦車から飛び降りて一騎討ちなのだが、描写が漠然としている場面では、どうも車上から武器を繰り出しているのではないか、つまり戦車本来の使い方で戦っているのではないか、という感じがする。
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(‥ )本来の伝承に
\− 手をつけていない部分は
不明瞭だけど正確で
物語として脚色が入った場所は
具体的だけど不正確
そんな感じですか
(‥ )物語の元になった
後発のギリシャ人が
先発のミケーネ文明を
滅ぼした事件から
ホメロスが作品を作るまで
600年ぐらい経ってる
過去の記憶のいろいろは
失われて漠然とし
物語の見せ場は
脚色されて詳細だけど
不正確になった
そういうことだろう
ちなみに、戦死者の結構な数が、投石によるものであるのは興味深い。
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( ‥)石って強力な武器だからな
(‥ )鎧ごと骨や頭蓋を
へし折るからな
あれおっかないのよね
石はなめちゃいけない。2018年の1月23日、草津白根山が噴火、その噴石で自衛隊員1名が亡くなった時、自衛隊は石も防げないんですか? と戯事をほざいたジャーナリストがいたが、彼ら文化人が無教養であることは、かように明らかであった。