自己紹介
- 北村雄一(北村@)
- イラストレーター兼ライター 詳しくはhttp://www5b.biglobe.ne.jp/~hilihili あるいは詳細プロフィール表示のウェブページ情報をクリック
2014年5月25日日曜日
ごめん、ちょっと理解できませんね
なんとなしにチョウチンアンコウについて検索したら、
∧∧
(‥ )チョウチンアンコウの光る角
\‐ あれが進化で出来るとは
思えない
あれを作る突然変異が
都合良く起こる可能性は
確率的にありえない...
そういう発言がね
ネットにあってね
(‥ )正気か?
これは、驚きだ。チョウチンアンコウの角、あれは背びれの変形だ。類縁種ではもっと背びれしてるし、そもそも発光器もない。というか、アンコウ鍋のアンコウがそうなのだけども、食った事があるあれをどこへ失念したんだい??
それに、頭部にまで背びれが進出した魚は何種類もいる。確かにその中から背びれを獲物の誘因に使うものは2回程度しか進化しなかったが、複数回起きたことは事実。さらにその中で発光器を発達させたものがいた。
別におかしな話ではない。チョウチンアンコウの”光る角”の進化はかなりよく分かっている。そしてこの経路において、器官がそれぞれ役立っていたことは明らかだ。単に使用方法が変わっただけである。いきなり現れたわけでもないし、その証拠をアンコウ鍋として食っているではないか。それに発光器の構造も基本は単純だ。
∧∧
( ‥)発光器の光は
海水中ならどこにでもいる
発光バクテリアを使用
発光の制御は筋肉収縮による
機械的なものらしいですよね
組織があれば筋肉も
あるでしょうね
背びれはそもそも動くし
( ‥)あれ、基本的には
‐□ 流用とローテクの集積
なのだよな
ああ、思えば、このことはこの前の本に書いたのだ。
そもそもチョウチンアンコウの角を作る突然変異が都合良く起こるって理解がいかれている。絶望的にいかれているのだ。メンデル遺伝を全然理解していないし、中学、高校とかで学んだはずの基礎の基礎がまったく完全に身に付いていない証拠だ。
*変異は隠されているだけで、我々の遺伝子にあらゆるものが大量に蓄積されている。それを示したのがメンデル遺伝である。
そして、器官は完成するまで機能しないし、適応的でないからそんな進化はありえないって発言に至っては魚類を見た事が無いことを示している。
これは頭がいかれているとしか思えないし、あまりにも物を知らなさすぎる。一体全体、学校で何を学んだのか? 一体全体、何をこれまで見てきたのか? 一体、何を読んできたのか? これまでの人生も経験も知識も、どれも何一つとしてまったく全然、壊滅的に役に立っていないじゃないか。
これはさながら、ボトルシップを見て、瓶よりも大きな船が入っているからには、まず船を作ってから熱いガラスを吹いて瓶を作って入れたに違いない。だが船は熱に耐えられる素材ではない。だとしたらこれは人間の技ではない! と言うに等しい。
ああ、そういえば、この前に出した本を評して曰く、分岐図とかの解説とか、ささいで細かな形質の列挙が退屈だ、と書いてる奴がいたけども、
いやだからさ、分岐図はこういうことを理解させるためのグラフなのだ。それ、分からんか?
*以下はアンコウ類の簡略化された分岐図 分岐図とは、ようするに系統樹を表示できるグラフのこと。
**分岐図を見れば分かるように、アンコウ鍋にされるキアンコウでは、より背びれしていた突起が、派生的なチョウチンアンコウ類になると、特殊化して発光器や、光を誘導する器官など、様々なオプションがつくようになる。そして背びれが必要な器官であることも、まだ背びれしている突起も有益であったことも、それは明らかだろう。進化とはこういうものだ。進化論は完成された器官がいきなりワンセットで出現するようなトンデモを想定しているわけではない。そんなトンデモ想定をしているのは、進化論を理解できないままに批判する連中自身だ。
以上の分岐図とその解説は、こちらの本の204ページを参照=>*
そして分岐図というのはこういう風に使うものだ。チョウチンアンコウの角がいきなり出現したとか、そういういかれたことを言う奴がいても、ああそうじゃないよね、と現実を把握するためのグラフ、それが分岐図なのだ。
そんなことも知らないで読書をしてきたのか? 目の前にある必要なものを見逃したお前の眼は、一体何なのか? それって、お前の読書が全く役に立っていないってことじゃないのか?
些細だとか退屈だとか言うのは勝手だけども理解に必要な道具なのだ。道具とはそういうものだ。直角定規が楽しいか? 楽しくないなら直角定規は間違っているのか? そんなことも分からないで本を読んでいるのか? そんな読書に一体全体なんの価値があるのだ? それはただの自己満足じゃねえのか?
自分が分かる本だけに手を出すでない。自分が分かる知識だけで満足するでない。自分が望む本だけを読んで見聞が広がったなどと思うでない。
思い出せ。自分が分かる問題だけを解いていたら、一体全体テストでどうなった? それを思い出せ。絶望と苦痛の時代を思い出せ。あの失望は理不尽な教育のせいではない。現実と遭遇した挫折であることを理解しろ。逃げるな、挫折を直視しろ。
大人は子供時代の挫折からすぐ逃げようとするが、現実はそのままであることを思い起こせ。分かる本だけを読んでも、どこにもいけないぜ。気持ちよくなるだけだろ。
∧∧
(‥ )でも、分からないことも
\‐ いっぱいあるのですよね
(‥ )世間の分からないは
大概はすでに
分かっている、なのだ
あるいは問いと疑問が
馬鹿げているのだよ
あるいはこういうこともある。
世間の分かったは、実はまだ分かっていない。
つまり、ここから先にこそ本当のスリル、得体の知れぬ現実との直面という恐怖がある。
スリルを忘れた見聞と教養というのは、ちょっと理解できませんね。それはただの気持ちのいい、ご都合主義の虚構じゃないのかい?
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