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2014年1月31日金曜日

いつから眼をそらしていた?

 
 例えば引用するに曰く
 
 進歩的であること、つまり全体社会に急速な改革をもたらす政治体制を支持し、反対勢力を認めるのろまな昔ながらの民主政治を軽蔑しがちであることが、インテリの本性に備わっている傾向なのです。
 
 過去を打ち砕いてしまって合理的な未来を築く国家機構。それはインテリらしい知的な考えです。
 
 ファシストでなかったインテリは、たいがいは共産主義者で、国家権力とか、抑圧とか、一党独裁制とかいった点からいうと、いずれも同じ穴の狢(むじな)だったのです。
 
 ファシズムとか共産主義という言葉は、両者間に戦争があったにもかかわらず、本当の意味での両極性を表わしてはいない。いずれも少数独裁集団主義といった名称のもとに一括できるのだ、とそうオーウェルは考えたわけです。
 
 「1985年」サンリオ文庫 pp271 アントニー・バージェスの言葉より引用。
 
 ∧∧
(‥ )「1985年」
\‐   作家バージェスさんが
     オーウェルさんの
     「1984年」の
     向こうを張って論評と
     共に描いた小説だよね
 
  (‥ )もう29年前の本か
   □‐  原著は1978年に
      出ているんだな
 
 384ページに、
 
 小説家は未来小説を書くのをあきらめた
 
 と彼が書いたように、この本はオーウェルの「1984年」を論評すると共に、現実のイギリスをパロディ的に描いた中編小説「1985年」が掲載されているという、珍しい形式の本。
 
 原著が出た1978年当時から見た7年後の近未来である1985年のイギリス。そこは労働組合がすべてを支配する社会。組合長が命じればたちまち大規模なストが発生して社会が機能麻痺を起こす世界。主人公は消防士たちがストライキを行っているため、火事が延焼するのを見守るしか無く、その果てに妻を失うのである。焼けこげた死体も同然の妻が死に際に言った言葉は「奴らをあのままにほおっておかないで!」という怒りと憎しみの叫びだった。そこから始まる物語。
 
 ∧∧
(‥ )当時のイギリスって
\‐  ストライキだらけ
    でしたからね
 
  (‥ )おらあ子供だったけども
      伝え聞くイギリスの
      有様と景色は
      悲惨なもんでな
 
 サッチャーを党首に据えた保守党が選挙で勝利するのは、「1985年」が出版された翌年の1979年、それ以前のイギリスのイメージたるや、社会を麻痺させる勢いのストライキに次ぐストライキで、ひどく暗く陰惨だった記憶がある。
 
 ∧∧
( ‥)2013年の春に
    サッチャーさんが
    亡くなったとき
    組合系の人たちですかね?
    彼女の死を揶揄するような
    珍妙な人形で練り歩き
    ましたよね
 
  ( ‥)サッチャーのせいで
    ‐□ 生活が苦しくなった
      良く言われることだな
      まあ、小説を読んで
      伝聞を聞いただけの
      こっちが何か言うこと
      ではないのだろうな
      なんといっても、
      当時の自分は
      子供だったからね
 
 そうは言うけども、では、労働党がそのまま政権にいた時代が続いた未来は、果たしてどうであったのか?
 
 ∧∧
(‥ )まあ、揺れ戻しがあるから
\‐  永続的に同じ政策と政党が
    続くわけないのですけどね
 
  (‥ )どっちを選んでも
      未来は誤差でしか
      自由がない
      行き着く先はいつも
      収束するのだ。
 
 そういう意味でいうと、サッチャーのせいだ、と他人のせいに出来るのはとてもとても幸せなことではないか。
 
 ∧∧
( ‥)他人のせいにしようが
    なんだろうが、
    どうせ、同じ未来が
    来たはずではないか
    そういうことね
 
  ( ‥)現実ってのは
    ‐□ こっちが望みもしない
      やってきた未来だからね
 
 未来に希望など馬鹿馬鹿しい。未来は誤差の範囲で決定済みで、既に周囲にあふれておるではないか。
 
 ∧∧
( ‥)だからこそ希望を
    夢見るのだと?
 
  (‥ )出来もしない理想の人生
      輝ける理想の社会を
      夢見るのだな
 
 そして言葉は冒頭に戻る
 
 ∧∧
(‥ )理想を夢見て、
\‐  それをすぐに見たくて
    少数独裁制を夢見る
    理想社会を建設できると
    信じ込む
 
  (‥ )実際には自分の挫折を
      投影しているだけ
      なんだがな
 
 ああ、だから、
 
 こうすれば良いのにお前らは馬鹿だから分からない、俺が全権を掌握すればこんな腐った社会なんてあっという間に….
 
 そう、恨みを抱えて絶叫するインテリたちが、みじめに挫折し、崩れ落ちていくそのさまたるや、これがもうたまらない。
    

 しかしそれでもなお、幸せなはずなのだ。
 
 なんといっても、ここに来てしまったのは自分ではなく、他人のせいである、そう信じ込んで眼をそらしているのだから。
 
 
 
 

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