自己紹介
- 北村雄一(北村@)
- イラストレーター兼ライター 詳しくはhttp://www5b.biglobe.ne.jp/~hilihili あるいは詳細プロフィール表示のウェブページ情報をクリック
2013年1月13日日曜日
世界は強情なんですよ
時々、聞かされるのである。
中国、韓国の躍進は目覚ましく、日本はこのままでは全部取られますよ、追い抜かれますよ。日本は変わらなければだめですよ。破滅しますよ。なんでみんな気がつかないのですか? なんでしないの? みんな馬鹿なの?
∧∧
( ‥)でっ? そういう人に限って
技術はいくらでもネットで
コピーできるし、
自分の人生も一発逆転できる
そう思い込んでいると?
(‥ )まあ、そういう感じ
ざっくり言って。
いや、その、10年、20年のタイムスパンでそんな大逆転が起きるなら、日本はバブルの時に世界征服できていたよな。
∧∧
(‥ )というか、人類の歴史は
\– まったく違うものだった
でしょうね
(‥ )発展と成長には
何世紀もかかるんだよ
ここ500年は
恵まれず、遅れた貧しい
西欧が世界の覇者にまで
上り詰める時代で、
今はちょうど長い没落の
下り坂の始まりだよね。
しかし下り坂とはいえ、列強は列強。環境破壊やら温暖化やら人口増加やら資源の問題やら色々あるので、地球全体、世界全体がどうなるかあまりに不確定な未来であるけども、まあ、これまで通りのように考えた場合、西欧の完全な没落まで何世紀もかかるのは確実。
しかし、冒頭のような人たちはそうは考えない。あるいはこういう世界の頑健性、あるいは現実の強情さを無視する。
(‥ )こういう奇妙な世界観を
持つ人たちが
自分の人生を一発逆転
できるとも考えているのは
印象的だよね
∧∧
( ‥)まあ、長い蓄積がないと
だめなんだ、と思う人なら
一発逆転なんて発想は
そもそもしないでしょう
からね。
一発逆転できる。そう考えている時点で、蓄積とか技術の伝承とか、そういう地味なことに興味を持たないことは必然ではある。
だが、現実は一発逆転信奉者たちが思うようなものではない。
確かに、躍進目覚ましい隣国をあなどるのは危険だけども、そんなことより、自国の維持に必要な技術や人員、伝承はどう維持するのか? それを検討するのが大事。
∧∧
( ‥)そしてそもそも、
そんな希有壮大な話よりも
自分の生活をどう
成り立たせるのかが
大事ですね
( ‥)あとさ、いやなことを
–□ 言ってしまえばさ、
人生一発逆転って
この発想、恐ろしく
楽天的で、かつ
不注意だよな。
一発逆転できる世界が事実あるとする。
しかし言い換えてしまえばである。その世界は、一発ですべての蓄積が破産する世界でもある、そういうことではないのか?
∧∧
(‥ )実際には、そうではなく、
\– 惰性で生活出来る程度に
現実は頑強で、
変化を好みませんよね
そして破産は、
成功よりは多いけど、
極端に多くもない
(‥ )それを踏まえると
人生一発逆転と
逆転にかけた冒険、
そして、
世の中は馬鹿だ
という愚痴、
これらがセットに
なっているのは
暗示的だよな
世界は惰性でのろのろ動く、巨大で頑健なしろもので、ある望ましい方向へ動かすには長期間、力を加え続けないといけない。まるで恐ろしく粘性が高く、事実上、ほとんど剛体のように振る舞う岩石のように。
∧∧
( ‥)代わりに、失敗、即座に
死亡というわけでもない
だから一発逆転とか
言ってられるわけですよ
( ‥)世界の頑健性に
助けられているのに
世界の頑健性で
道が開けない。
そういうことよな。
ひどくトンチンカンな世界観なのだが、しかし整合的ではある
世界が強情だから成功しない
強情な世界が憎い
しかし、世界が強情だから生きていられる
生きているから文句が言える
そして、しかし、当然、成功しない
望みはあるが、死ぬことはできず、夢はかなわない
死ねないこと、夢がかなわないこと、この2つが表裏一体だ。
つまり残るは、世界に対する憎しみと、一発逆転というかなわぬ夢だけになる。
その行き着く先はどこ?
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