自己紹介
- 北村雄一(北村@)
- イラストレーター兼ライター 詳しくはhttp://www5b.biglobe.ne.jp/~hilihili あるいは詳細プロフィール表示のウェブページ情報をクリック
2015年2月22日日曜日
自分をビリヤードの球であるとする
駅で聞く人身事故のニュース。自分が使う路線には関係ない。そうして電車に乗って家に帰る車内の中でふと考えた
自分がビリヤードの球であったとする。ただし重さはこのままで、それに見合った大きさであったとする。
∧∧ どのぐらいの大きさかね
( ‥)
‐( ‥)まあゲームに使える
大きさではないなあ
そして線路上に人がいる。相手も球であると考える。どっちも大人、重さも同じだとする。
さらに両者共に限りなく完全に近い剛体だとする。
電車の速度で移動する玉である自分が相手に当たったらどうなるか?
あなたは止まって
∧∧ 相手はすっ飛んでいくね
( ‥)
‐( ‥)存在するのが
自分だけなら
そういうことになるな
だが実際には違う。車内には何百人、あるいはそれ以上の人間がいる。
さらに車両はそれよりもずっと重い。1両30トンだとしてもそれだけで70キロの人間430人分だ。
つまり実際に起こるのはビリヤードの球というほぼ同じ質量の衝突ではない。ここで起こるのは何千:1という質量差がある物同士の衝突である。
これを考えた場合、さて、どうなるか?
電車側からすれば
∧∧ 何も感じないよね
(‥ )
‐( ‥)以前、先頭車両に
乗っていた時に
人身事故があったけど
実際
何も感じなかったよな
音も衝撃もない。
考えてみれば当たり前だ。電車の前の人間なんて、振ったバットに当たる虫も同然である。フロントガラスに当たって破壊が起こるとかならともかく、そりゃ何も感じないだろう。
そして両者が限りなく剛体に近い場合、小さな方は遠くへすっ飛んでいくだけだが
実際には破壊が
∧∧ 起こるよね
( ‥)
‐( ‥)運動エネルギーの
ほんのわずかでいい
破壊へ変換されたら
死ぬよなあ
飛び降りの場合、その破壊力は重力加速度と人体の重さだけだ。死に切れないことがあるとはうなずける話。
それに対して電車のエネルギーは、文字通り桁違いに大きい。
確実に死ぬ手段として
電車を選ぶ人は
∧∧ 多いみたいだよね
(‥ )
‐( ‥)合理的な選択だけどさ
迷惑なんだよねえ
以前、人と落ち合うために急いでいる時、まさに人身事故が起こって、電車が一時、止まった。
くそがあ、死ね、この野郎、と思ったものだが
すでに死んどるがな
∧∧
( ‥)
‐( ‥)思うのだがな
死んだ本人は
あんな姿になることを
望んだのか?
思い出すのは、かけられた毛布の向こうに見えた血の気の無い、男か女かも分からぬ薄汚れた腕である。いや、あれが人間本来の皮膚の色なんだろうか? マネキンなどの人工物ではない、均一なプラスチックや塗料ではない。もっとディテールのある色だ。CGに本物らしさを出すため使う、意図的でカオス的な効果を思わせるものである。そんなものになる。
本人は、ああいうのを本当に望んだのか?
あれが望みの結果か?
死ぬ人が死んだ後のことを
∧∧ 考えるのですかね?
(‥ )
‐( ‥)死ぬ理由はあったのだな
でもその後のことを
考える理由はないよなあ
それを思うに、電車を遅らせるなよ馬鹿野郎、一人で死にやがれ、そう怒る方が正常なんである。
世界で起こる悲惨のひとつひとつを考えている余裕は誰にも無いし、そんなことをする必要性もないし、そもそも人間はそのように設計されていないだろう。
確かに、人身事故に怒る人々の方をこそ、異常とののしる感受性の強い人もいるが、それを言う彼らも、悲惨のすべてにかける声などもってはいまい。
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