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2013年11月23日土曜日

絶望時代

 
 小学校の時、こんな女教師が担任になった。絵を描く時、筆を短く持ってはいけません。短く持つと火傷する、という設定にしてみんなで注意しましょう。
 
 ∧∧
(‥ )あなたが絵を描いていると
\‐  火傷する、火傷する、とか
    クラスメートがはやしたてた
    記憶がありますね
 
  (‥ )はあ? と思ったものだ
 
 もちろん、筆を短く持とうが、長く持とうが、そんなこと絵の出来には関係ない。
 
 だが、あの女教師はどうも子供を煽ることでこういう自分の思い込みをクラスに強制させて、それで統治しようとしていたふしがある。
 
 同級生に、ちょっと汚い身なりで落ち着かない子がいた。ある日、彼女はその子にいった、あなた、顔を洗っていませんね? 汚いから洗ってきなさい。
 
 彼が教室を出て行くと、女教師はいった、あんな汚い顔、洗ったらきれいになるはずですよ! 子供たちが笑った
 
 彼女はこういう手を使う。
 
 ∧∧
(‥ )あなたのことも悪く言っていた
\‐  みたいですね
 
  (‥ )後で聞いたら、
      名前の漢字が悪いとかな
      そんなことを言ってたらしい
 
 なんでも、”一”とつく人間にはろくなものがいない、とか
 
 ∧∧
( ‥)なんでしょうね?
 
  (‥ )正しい人間なんだろ?
 
 彼女は、当時のテレビで流れていたCMについて怒るように言った、あんなCMはふざけています! 私が大臣だったらあのCMの停止を命じます!
 
 ∧∧
(‥ )そんな権限、大臣に
\‐  ありましたかね?
 
  (‥ )彼女が言う意味では
      ないだろうなあ
  
 明らかにルールよりも”正しさ”を優先させている。これは正しさというものが恣意的なもので、ルールではない、ということを示している。

 確かに、正しさは自分の暴力的な言動や思い込みを正しいと保証してくれる、便利なものである。
 
 ∧∧
( ‥)でも正しさはそれ自身の
    正しさを保証してくれないから
    無意味なんですけどね
 
  ( ‥)彼らは正しささえあれば
    ‐□ それで良かったのだ
 
 例えば聞くに、2×3と3×2は別である、かけ算の順番は正しくなければいけない。そう教える教師もいるという。これは数学が持つ抽象的でつぶしが効く性質をおおいに勘違いしたもので、頭がいかれているとしか思えない。
 
 ∧∧
( ‥)だけどこれが正しいと
    教える教師がいる
 
  (‥ )水に良い言葉を聞かせると
      きれいな結晶ができる
      こういうオカルトを教える
      先生や授業が批判されるが
      ようするにだね
      正しさとはオカルトである
      そういうことなんだよ
 
 正しさに正しさはない。そこにあるのは思い込みと設定だけで単なるオカルトでしかない。
 
 ∧∧
(‥ )その点、科学は良いですよね
\‐
 
  (‥ )科学はある時から
      正しさが変わって
      しまうのだ
 
 それまで有効だと思われていたものが、がらっと変わってしまう場合がある。
 
 その時の様子ときたら見物だ。新しい理論についていけずに、必死に自分の業績を防衛しようと、がーがー文句を言って稚拙な理屈を振りかざすが、次々に見つかる新しい証拠、押し寄せる裏切りと孤立、時代に取り残され、なすすべもなく朽ち果て、すべてを失っていく老人たちの無様な姿ときたら、これがもうたまらない。
 
 ∧∧
( ‥)あなたはどうします?
 
  ( ‥)正しさは科学ではない
      ゆえに正しさは
      それ自身では自分を
      組み替えることが
      できない。
      ゆえにだな
      みんなの正しさを
      破壊しにいかねばならん
 
 自分で死なないなら殺さねばならぬ。これは必然。
 
 自殺できないのなら、介助してやらねばならぬ。それは必定。
 
 それに、正しさを失って絶望に歪む顔ときたら、これがなかなかにいけている。
 
 特にこれからは夢が終わる時代だ。学生運動、政権交代、ついえた夢、やってこない革命、破綻した理論、過ぎ行く時の前に衰えゆく肉体、低下する思考能力、こぼれおちる記憶。色褪せた過去。
 
 さあ、諸君、絶望の時間だ。
 
 
 
 

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