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( ‥)ようするにですよ
( ‥)今ならみんなだって、
-□ 1984年が実は正真正銘の
ユートピアを描いた物語だと
理解してくれるのではないかな
自由が欲しい、オレの権利が侵害された。そう言ってきた人々は、市場原理主義という呵責ない競争社会、完全無欠の自由競争を目にした時、恐怖した。
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( ‥)平均をはるかに越える人間で
ないと勝者になれない世界。
自動的に人間の大半は落伍者
ですよ。
(‥ )だからさ、みっともなくオロオロ
泣き叫ぶのさ。文化がどーした
社会のモラルが壊れる、
伝統がなんだと、色々
耳にきれいなごたくを並べてね。
なんのこっちゃない。自分が分不相応な地位と報酬を手にしていたのがばれて恐慌をきたしているだけじゃないか。
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( ‥)社会のためにって
言うのですけどね
( ‥)社会のためにっていうのなら
-□ 人間の大半は処分されなきゃ
ならん。そういうことは
あまり真面目に言うことじゃないな
平均以下が足手まといなら人間の多くがいらないことになる。当然、組織と集団が最適になるまで処分は続く。社会のために貢献したから、というのを真面目に受け取るなら、なあ、じいさんよ、もう働けないなら、あんたは山に処分しようねってことになるだろう? そいつはやばい発言だ。
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(‥ )でも、1984年ってそういう
\- 社会じゃないんですよね
(‥ )競争もない、国際的な大企業もない
だいたい、搾取している支配層が
存在しない社会だからな。
一応、歴然とした階層はあるのだけども、一番トップクラスの連中がマンション住まいで絨毯があってワインが飲めて召使いがいるってレベル。
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( ‥)舞台は一応、英国ですけど
-□ 現実の英国と比べたら
格差なんて無いも同然ですよね
(‥ )150年前の英国なんか、
中流の貴族でさえ、とんでもない
土地を所有していたものな。
なんだかんだいって、1984年の世界。一応は社会主義の国家なのでそれなりに平等だ。
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( ‥)おまけに外敵が存在しない
-□
(‥ )ずっと戦争しているけども
それは戦争ごっこだからねえ。
戦争を無限に継続しよう、という取り決めでやっている戦争は戦争とは言わない。外敵が存在しない以上、技術の発展も科学も仮説の経験的な検証も放棄できる。それが1984年の世界。
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( ‥)事業仕分けに対する批判も
-□ 基礎技術を売ったら日本は
負けてしまうってものですし
(‥ )外敵が存在する、征服される恐怖が
あるから金のかかる技術や科学の
投資をやめられない。
過労死しても仕事をやめられない
賃金を上げられない
外敵が存在するという恐怖と事実が、「技術と科学なんかやめてさ、ステーキにしようぜ」、とか「江戸時代の方が幸せそー」というたわ言をひねりつぶす。そもそもノスタルジックに語られる江戸時代も外敵の出現で終わりを迎えたのだ。外敵が存在する世界では幸せになるのは無理であり、そして
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( ‥)そこでは自由に責め殺されるのだと
(‥ )低賃金で働く自由、安い品物を
売る自由、金儲けをする自由、
安く買いたたく自由、新しい
製品を開発する自由、そうして
既存の市場を破壊する自由。
人にたかり分不相応な賃金をせしめ、学ぶことも無く幸せに暮らしていた人々を、自由という存在が恐怖に陥れる。新技術、新製品に対して既得権益を握る老人のあわてふためきようを思い出してみればよい。
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( ‥)でも1984年の世界にはそれが
全部ないのですよね。
( ‥)敵もなく、自由もなく、
新しいことを知る必要もない
まさにユートピアさ。
自由は隷属なり
無知は力なり
戦争は平和なり
すなわち
選択肢の制限で安定を
無理解によって革新の阻止を
取り決められた競争によって競争の無力化を
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( ‥)でも、現実はそうじゃないんですよね
選択肢は無数にあり、革新的な技術は
出現し、人は競争をやめるわけがない。
(‥ )あわれ悲し、幸せを望んだ人、
そんな願いはかなわねえ。
さよならユートピア。夢はさっさと死ねばいい。そしてこんにちは、過労死以外を認めない地獄へようこそ。