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2021年8月14日土曜日

諦めの物語

  
 生きるということはエントロピー増大の法則に反する行為なので、非常に大量のエネルギーを必要とする。これゆえに生は苦痛の信号に溢れる結果となった。
 
 ∧∧
( ‥)そうである以上
    あなたは
    科学で問題が解決する
    ことを認めない
 
  (‥ )科学が現実を操作できる
      あるいはそれに
      類似の基準で
      発達したから
      操作自体は
      できるんだけどね
 
 しかし、今の科学が強大な力を発揮できるのは、実のところ石油あってこそ。その膨大なエネルギーがあってこそであった。
 
 ∧∧
(‥ )つまり科学で問題を
\−  解決できるわけではない
 
  (‥ )今のコロナ対策だって
      石油が生み出す
      膨大なエネルギー
      あってこその成果だからな
 
 ワクチンの開発も、その輸送も、全ては石油あってこその成果。

 何一つとして問題は解決されておらず、石油が尽きた時に全ては終わるのだ。
 
 いや、石油があってもどうにもならないことすらあった。
 
 ∧∧
( ‥)例えばあなたが描いている
    科学史漫画の主人公は
    ニネヴェ図書館だけども
 
  (‥ )彼女の故郷って
      今のイラクなんだよな
 
 イラクは石油産油国であるが、しかし、どうにもならなかった。ありあまる石油で国土を緑化するとか、膨大な農業生産を誇るとか、輸出するとか、そんなことはなかったし、かつてのアッシリアの首都ニネヴェ(現モスール)はISISとイラク軍の争奪戦で廃墟になった。
 
 ∧∧
(‥ )アッシリア自体
\−  どうにもならなかったよね
    バビロンのような
    宗教センターにはなれず
    気候は悪化して
    国を維持するために
    略奪戦争を
    行い続けざるをえず
    戦争に特化するために
    独裁制に移行する過程で
    かつての市民軍も
    同郷市民という紐帯も
    放棄せざるをえなかった
 
  (‥ )まさに
      天の時、地の利、人の和
      このすべてが無い状態で
      力づくで存立して
      覇王になって
      滅びた国であり首都だよね
 
 それを踏まえれば、科学で問題を解決しようなど無理な話であることは確かだった。石油と科学と政治、この全てがそろって、それでもなお、世界を制御することはほとんど無理なのである。
 
 科学で問題を解決するなんていう物語を描けるわけがない。
 
 ∧∧
( ‥)でも反対に言えば
    諦めの物語を描くことは
    できるよね
 
  (‥ )まあ一般人の趣向には
      合わないけどな
 
 水戸黄門を見ればわかるが、人間は安易な解決策を喜ぶし、そもそも安易に解決できると考えているものだ。人は存在が不自然であるがゆえに、その趣向は虚偽になってしまった。だから虚偽を喜び、尊ぶ。
 
 しかし、自分にはそういう物語は描けない。そして人は描けるものを描くしかないのである。
 
  

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