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2016年12月10日土曜日

謎掛けの成功とネタ切れ回避の挑戦と迷走とそれなりと

 
 hilihiliのhilihili: さて、次はどんな後悔をしようか?の続き
 
 ∧∧
(‥ )昨日はダリ展を見に行ったけど
\−
 
  (‥ )客の反応が興味深かったな

 
 
 ダリと言えばシュルレアリスムである。だから初期の作品での観客の反応はやや薄い。ましてや、当時の芸術界で流行っていたモダニズム、それをダリも試しに描いてみた作品、つまりキュビズムとか印象派のさらに先、点描や少し野獣派っぽいとか、さらに抽象芸術だとか、そういう作品になると観客の反応はもっと薄い。
 
 ∧∧
(‥ )...なにを描いているか
    分からねえぞ
 
  (‥ )まあこれでは
      反応は当然
      薄くなるよなあ
 
 ∧∧
( ‥)でもシュルレアリスムの
    作品になると
    お客さん、俄然食いついて
    ましたよね
 
  (‥ )見ていく人の後をついて
      じょじょに次々に
      眺めていくのだけど
      俺の前のおっさんがさ
      なんか必死で体を
      上下に動かして
      絵をのぞきこむのよ
 
 まるで目の前に女の子がいて、スカートの下からパンツがみえないか? とのぞきこんでいるかのような仕草。
 
   なに見てるの?
 ∧∧ あの、おっさん
( ‥)
 −( ‥)さあ? なんだろうな?
 
 まあ、そのおっさんは例外的にしても、シュルレアリスム時代の作品だと、観客の食いつきが非常に良いことは明白だった。例えば「姿の見えない眠る人、馬、獅子」はその典型である=>姿の見えない眠る人、馬、獅子 - Google 検索
 
 ∧∧
(‥ )個々の事物は具体的で
\−  謎掛けのような題材に
    興味引かれてみると
    確かに馬、人、ライオンが
    見える仕掛けである
 
  (‥ )謎、興味、理解
      それを可能ならしめる
      流れと具体性、写実力
      それが観客を動員するのだ
 
 一方、写実的であるにも関わらず、人生後半、原子と原子力に着想を得た作品だとやや食いつきが弱くなる。
 
 例えば
 
 素早く動いている静物=>fast moving still life dali - Google 検索
 
 ラファエロの聖母の最高速度=>the maximum speed of raphael's madonna dali - Google 検索
 
 ∧∧
(‥ )技量は上がっているけど
\−  シュルレアリスム時代の
    作品よりも食いつきが悪い
 
  (‥ )観客からすれば
      何が素早く動いているのか
      何が最高速度なのか
      分からないからかも
      しれないし
      単に具体的なものが
      雑然と並んでいるように
      見えてしまうから
      かもしれないな
 
 確かにここには不可解はあっても謎がない。

 謎がなければ絵解きと理解したという快感もないだろう。
 
 むしろ不可解という不信感だけが残るのだ。
 
 それを考えると、ダリがポルト・リガトの聖母のような、全体のおごそかな雰囲気で観客を魅せるような作品を描いたのは当然かもしれない。

=>the madonna of port lligat dali - Google 検索
 
 ∧∧
(‥ )雰囲気で観客を圧倒すれば
\−  謎解きの快感がなくても
    快感は残るでしょうからな
 
  (‥ )ダリはシュルレアリスムの
      作品で名声を得たのだよな
      そうして商業的な成功を
      おさめて
      その後は今ひとつな作品を
      作ってみたり
      宝石デザインに
      手を出してみたり
      謎解きの快感から
      おごそかな美的快感へ
      方針転換してみたり
 
 ∧∧
(‥ )...なんかこれ普通に
\−  漫画家やイラストレーターの
    紆余曲折と同じだよね
    ある作品で大成功
    でもその後が
    迷走するような感じ
 
  (‥ )さりとてだ
      謎解きなんかいつまでも
      続けてられないしな
      成功を収めたら
      方針転換するに限る
      でもその後では
      必ず迷走する
      しかしそれなりに
      成功例を出してみせた
      よくやった人生だよね
 
 しかしこれ、一歩間違えればまったく売れず飛ばず、そのまま埋もれた人生だったとも言える。
 
 ∧∧
( ‥)もしシュルレアリスム時代に
    具体的なものを
    描かなかったら?
    単なる謎を描くだけで
    観客に不可解しか
    残さなかったら?
 
  (‥ )その場合、観客が
      食いつく条件を満足できず
      成功できず生活が
      ぎりぎり出来る程度で
      美術史に記録は残っても
      ほとんど知られていない
      画家として終わった
      そうであった可能性も
      あったんだろうな
 
 そしてシュルレアリスム以後の紆余曲折が迷走とも取れるし、挑戦とも取れるし、ネタ切れになりかねない分野の放棄と新境地の開拓でもあり、そしてそれなりな成功であると受け取れることを考えると...
 
 ∧∧
(‥ )それを考えるとこれ
\−  他人事ではありませんね
    イラストレーターとしても
    物書きとしても
    他人事ではないでしょう
 
  (‥ )具体性がないと駄目
      謎解きを
      投げかけないと駄目
      しかし
      謎が溶けないようでも
      駄目である
      うむなるほどね
      絵に限ったことではないな

 
 ∧∧
( ‥)じゃあ本の題名を
    謎掛けにするか?
 
  (‥ )あーうん? それは
      ちょっとどうかな?
 
 まあ確かにそういう本も題名も多いっちゃ多いのではあるが。それはつまり、謎掛けすればいいってものではない、ということでもあろう。
 
 ∧∧
(‥ )どうしようか?
\−
 
  (‥ )どうしようかねえ?
 
 
 
 
  

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