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2016年12月21日水曜日

労働生産性なんてどうでもいいよねえ


 好きなことやってるんだから給料安くてもいいだろう? と言う人が、日本は生産性が低い! と泣きわめく。
 
 
 ∧∧
(‥ )技術者やプログラマーや
\−  イラストレーターは
    好きなことをしているでしょ
    だったら安くてもよいでしょ?
    という主張は
    俺はいやいや仕事をしていて
    俺の給料は我慢代ですのよと
    言ったも同然
 
  (‥ )みんな平気で
      こういうことを
      言っちゃうんだよな
      好きなことをしている
      人を見ると
      思わず本音が出ちゃうんだ
 
 俺の給料は我慢代なのだ。本音では誰もがそう思っているのである。ここには生産性という概念はない。
 
 皆、口では労働生産性ガー、とか言ってるけど、本当は興味なんかないだろう? 
 
 支出は幾らで、それに対する収入はいくらで。差し引きした利益は幾らで、それを単位時間で考えるとこうだ、という発想も理解もない。
 
 ∧∧
( ‥)...のはずなのだが
    日本の生産性は世界で
    第何位という話を聞くと
    鬼の首を取ったように
    それは経営者が馬鹿だからだー
    上司ガー 社長ガー
    と言い立てるのである
 
  ( ‥)生産性という概念なんか
    −/ もってないくせに
       他人を批判する時は
       もう大喜びで
       生産性という言葉を
       使いよる
 
 これは、とてもとても浅ましいものだ。
 
 ∧∧
(‥ )誰もがこれをする
\−  でもこの浅ましさには必然の
    理由があるのである
 
  (‥ )勤労者なるものは
      実のところ
      収入と支出と利益と
      単位時間という計算を
      全く必要としない
      漠然とした世界に
      住んでいる
      この実態が以上のような
      ちんちくりんを
      生み出すのだ
 
 実際、世の中にあるのは、
 
 平均的に言って人間は平均的な存在であるということ
 
 ゆえに必然的に、すべての人間の努力と苦痛は相対的にはまったくゼロであり、まるで無意味、無価値であるということ
 
 ∧∧
( ‥)絶え間なく無意味な努力という
    出血を強いられた人々は
    給料を我慢代だと誤認し
    自分に苦痛を与える他人を
    攻撃し
    自分は努力しているのに
    不当におとしめられている
    という理論武装に
    すがるのである
 
  (‥ )部下が馬鹿だ
      上司が馬鹿だ
      日本が駄目だ
      社会が駄目だ
      もうひたすら他人に
      責任転嫁して
      とにかく
      誰かのせいにしないと
      心が死んでしまう
      それほどまでに
      働くという負荷は
      大きいのだ
 
 そんな彼らの前に好きな仕事をしている人間が現れた。

 それは日光のようにまぶしく、過労で倒れる寸前の勤労者は朝日に照らされた吸血鬼も同然。心の鎧はいともたやすく灰になり、思わずこぼれた本音が
 
 好きな仕事しているんだから給料安くても良いでしょ?

 である。
 
 言い換えれば、
 
 あなたと違って私の給料は我慢代ですよ。私は生産性なんて理解していませんよ、そんな概念にすらたどり着けませんし意識してすらおりません。

 そう自白したも同然なんだが、これを恥かしげも無く言ってしまうのだ。

 心の鎧が焼かれるとはこういうことぞ。
 
 そんな彼らの前に日本の労働生産性は低いというレポートが現れた。すると口実を得た心が溢れ出す。
 
 俺が苦しんでいるのは上司のせいだ、生産性など俺には理解できぬが、悪いことには違いない。悪いのは誰か? 生産性を決めるのは上司だ、経営者だ、俺じゃない。
 
 だからここぞとばかりに口実片手に言いたい放題だ。
 
 ∧∧
(‥ )でも実際には労働生産性って
\−  良く理解できない概念だよね
 
  (‥ )算出自体は単純なんだ
      GDPを就業者数
      あるいは
      就業者数×労働時間で
      割ればいいんだが
      出てくるものが
      なんだか分かりかねる
      ものになっちまうんだよね
 
 例えば労働生産が圧倒的に高いルクセンブルクとかアイルランドは外資の金融産業などの誘致に成功したからであるし、ギリシャやスペインが日本を上回る労働生産性を上げているのは、25%に達する高い失業率のせいだとか、なんだか良くわからないものになってしまう。
 
 ∧∧
(‥ )式は単純なのに
\−  影響を与える因子が
    多すぎるのでしょうね
 
  (‥ )多分
      労働生産性ってのは
      各論でしか
      語れないことなんだよな
      大上段で抽象的に
      論じれるものじゃない
 
 だが、皆はそうは考えない。
 
 ルクセンブルクとか、ああいう小さな国に日本は負けてしまうんですよ! これは馬鹿な上司のせいですよ!!

 とまあ、こんな具合に、憎い上司を攻撃する口実として、本能的に使うのみである。
 
 ∧∧
( ‥)つまり結論は?
 
  (‥ )みんな言いたいことを
      言ってるだけで
      所詮は
      新橋ガード下の上司の愚痴
      ですからね
      真面目に聞いちゃあ
      いけませんなあ
 
 
 多分、これは厚労省の栄養調査が出てきた時の人々の反応のようなものだろう。

 厚労省は所得の高低に関係なく野菜の摂取量が理論値350グラムに足りないから、もっと食べた方がいいですよ、と機械的に述べているだけなのだが、人々の反応は違った。
 
 例えば

 高給取りの官僚は肉と野菜を食べまくって提言し、安給料の僕はラーメンを食べているんだ!!

 とか言い出す有様であったから。
 
 ∧∧
(‥ )ラーメンは高いし
\−  貧乏人が食うようなもの
    ではないんだけどね
    安月給だから
    ラーメン食ってるとか
    言っちゃうのよね
 
  (‥ )しかもあの統計調査で
      出てきた
      高収入、低収入における
      肉と野菜の摂取量の違いは
      金額としてはほんの
      ごくわずか
      年収の差では説明できない
      程度の差でしか
      なかったからな
      官僚が肉食って貧乏人の
      僕が野菜食べられないって
      理解が色々破綻してるんよ
 
 
 かように明らかなように、世の中の人間は言い訳の口実が欲しいだけだ。だからどんな真剣な怒りも意見も、それだけでは取り上げるに値しない。だって口実だろ? 言い訳だろ? そんなもの取り上げる価値があるものか?

 そしてこれは次のことを示している。
 
 すべてが言い訳であり、言い訳が現実を操作できないのであれば、答えは単純である。
 
 俺もお前も、私もあなたも、我々全員、ここで死ぬのだ。
 
 
 
 
 *注:新橋ガード下の上司の愚痴 漫画「絶望先生」で出てきた、改題された「国家の品格」のこと。
 
    

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