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2016年12月11日日曜日

すかしたこと言って死んだ奴らで家が作れるぞー!

 
 その人はいった
 
 芸大に入った時にさ、先輩に好きな画家は誰か? と聞かれたからダリと答えたんだよ。そしたら「ダリは素人受けする画家だからね」と言われてさ、その時はむかついたんだよ。でもさ、それは正しかったんだよね。
 
 ∧∧
( ‥)あなたならそれになんと?
 
  (‥ )そうねえ
      そういう
      すかしたことを
      言ってると
      お前餓死するぞ
      と答えるかな
 
 まあ、芸大の先輩だからね、そんな程度の経験ではね、分からないよね。
 
 ∧∧
(‥ )絵は売れなきゃいけない
\−  素人受けする絵でないと
    絵は売れず
    収入の道を断たれて
    餓死するのみ
 
  (‥ )素人なんて絵を買わないよ
      絵を買う金持ちは素人じゃ
      ないんだよ
      パトロンは他の人間には
      分からない
      より高度な感性と
      美意識で金を使う
      文化的な人々なんだ
      そう主張することも
      可能ではあるけどね
 
 まあ、そういうこともあるだろうね。
 
 内輪で何事かがエスカレートして、おかしな基準でおかしなものが高額で売買される。そして、そういう無駄を誇示することがかっこいいと見なされる。そういう状況はありがちではある。
 
 例えばの話、日本のアニメとか漫画を、大した才能も無いのにぱくって、これは俺独自の芸術だと言い張って、それを孤高のパトロンを気取りたい金持ちに高値で売りつけてる奴らがいるじゃあないか。
 
 ∧∧
( ‥)つまり実際そういうことも
    あるんだけどね
 
  ( ‥)でもなそういうのって
    −/ バブルな上に
       流行に非常に左右される
       ものなんだよね
 
 それにそもそもお金持ちは、俺はこんな無駄なものにこれだけの大金を支払える余裕があるんだよ? という無駄自慢と力の誇示をするために、くだらないことに金を支払っているのである。
 
 くだらないことにあえて金を使っているのだ。
 
 彼らは感性や美意識で行動しているのではない。彼らは内輪の社会を胸をはって歩ける通行手形を買いたいだけなのだ。
 
 ∧∧
(‥ )絵が素晴らしいからとか
\−  アーティストと美意識を
    共有しているから
    買っているわけでは
    ないのである
 
  (‥ )だからなダリのように
      写実的で古典的で
      分かりやすい絵を描くこと
      これは非常な
      武器になるのだ
      分かるってことは
      共有され流通しうるもの
      つまり貨幣たりうる
 
 反対に言えば、そういう分かりやすい写実を素人受けする、と笑ってすませるようでは、それこそが素人というのである。

 ∧∧
( ‥)そんな素人は餓死して
    当然なのである
 
  (‥ )おうおうちゃっちゃと
      餓死すればいいんじゃい
      餓死した連中の体を
      重ねて家をつくるのだ
 
 作るならロシアがいいなあ。馬上の敵兵が動かないから恐る恐る近づいたら、馬ごと凍りついた凍死体だったという話がある土地柄である。家を建てるにもってこいだろう。

 あるいはロシア人も凍えて逃げ出したフィンランドがいいか?
 
 例えば、
 
 例えば冬戦争に参加したコンスタンチンは、トロールの待ち伏せに合い、部隊は全滅。生き残ったものの負傷し、捕縛された僚友たちの中からコンスタンチンを立たせたピンクのトロールがきしむような声で青いトロールに話しかけた。
 
 ムーミン、こいつ将校だわ
 
 …スナフキンのところへ連れて行こう
 
 連れて行かれたのは森の中で、目隠しをはずされた先にあったのは、凍死したロシア兵を重ねて作った簡素な小屋であった。中に入ると小さな火がヤカンの水をわかしたところで、もうもうと巻き上がった蒸気は天井の兵士の顔に霜となって張り付き、ガラス玉のような凍ったたくさんの眼球が、連行されたコンスタンチンと2匹のトロールと、そして立ち上がった男を見つめていた。
 
 そいつはヤカンの湯を、部屋に据え置かれたテーブルの上の小さな二つのカップに注ぐと、ひとつを自分の前に、もうひとつを空っぽの椅子の前に差し出した。座れという仕草だ。
 
 君がコンスタンチン君か

 男だって? コンスタンチンは震えながら思った。トロール共はそいつを人間の男だと言っていた。確かにトロールにはそう見えるのかもしれない。しかし、しかし、目の前にいるこいつは、人間のコンスタンチンにとって、人のような何かでしかなかった。
 
 私はスナフキンだ。
 
 きしむような、奇妙ななまりのある声だ。人間の声のスペクトルと波長もずれている。
 
 君に会えて私は嬉しい。
 
 人と違う表情筋が作るそいつの笑みを見て、コンスタンチンは、目の前が真っ暗になった。
 
 
 ∧∧
( ‥)小屋をつくるには
    たくさん必要だぞ
 
  (‥ )画家なんて
      次々餓死するんだよ?
      おつりがでるくらいさね
 
 なんといっても、働いてもいないのに、自活もできていないのに、それは素人受けだよね、とかすかしたことを言っている連中が毎年春になると、大量に世に送り出されるのだ。

 大人はなんと優しいのだろう。すぐにも死んでしまうようなひ弱な子ガエル共を、凍えぬように、春になってから送り出してやる。
 
 だが、毎年毎年送り出して、冬は毎年毎年やってくるのだ。

 これなら小屋どころか死体で豪邸が建てられよう。
 
 ∧∧
( ‥)ラバン! ラバン!
    奴らの血で池が作れるぞー!
 
  (‥ )しぼりとれー!
 
 
  

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