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2016年4月24日日曜日

現実の把握に失敗した魔法には罪と罰がある

 
 昔、ある漫画でこういう場面があった。
 
 今の地球では魔法使いの存在は知られていない。魔法世界も地球との交流を極力避けている。だから魔法使いは人知れず、困った人や病人を助けている。もしも魔法が認められれば、この状況はもっと好転するはずだ。
 
 ∧∧
( ‥)これを見たあなたは
    次のように思いました
 
  (‥ )そうか魔法は絶対に
      存在してはいけないし
      存在しても病人を直しては
      いけないのだ
      魔法はあくまでも
      闇の中のかすかな存在で
      あるべきだ
      そのことを確信したね
 
 実は、魔法というのは本来、現在の天文学、化学、医学を総合した学問であった。
 
 天体は地上界に影響を及ぼす。
 
 物質は四元素で成り立ち流転する。
 
 地上界の存在である人体は天体と四元素、さらに複数の対になる属性で決定づけられる。
 
 これらすべてを考慮した理論体系が魔法であった。魔法の上位存在は天文学であり、錬金術など下位存在でしかない。そして医学は魔法を踏まえた技術であった。
 
 ∧∧
(‥ )でも当時の医学ときたらねえ…
\−  最初の頃は血液が
    体内を循環していることすら
    分からなかったし
    血を抜く放血とかしてたし
    そもそも病原体という存在も
    19世紀まで
    知られていなかったし
    腐敗や発酵も理解できていない
    当然、消毒の必要性すら
    分からない
 
  (‥ )顕微鏡を発明し
      病原体を見つけ
      因果を探る方法論を考え
      錬金術を越えた化学による
      様々な薬物を使用し
      その効果を試し
      人体解剖を行って
      徹底的に人体の把握を行い
      事実上の地図を綿密に
      作り上げ
      以上すべての把握と
      その訓練を行う
      こうして生まれたのが
      現代医学
 
 このように人体の徹底的な把握と、病原体、薬物の作用を掌握して、初めて治療というものが十分な効果を持つようになった。
 
 現実の把握に基づき、具体的な操作が可能になる。単純だが冷酷な事実がここにある。
 
 ∧∧
( ‥)自動車の整備工は
    自動車の仕組みを把握し
    電気、冶金、物性、熱力学を
    掌握しなければならぬのと
    同じですなあ
 
  (‥ )魔法はこれが無いんだよね
      当たり前だけどね。
 
 
 当たり前である。そもそも掌握に失敗した科学が魔法だったのだから、魔法に現実の把握などできているわけがない。
 
 ∧∧
(‥ )呪文を唱えれば病人が治癒する
\−  魔法のこういう考えって
    呪文や使役する精霊さんに
    めんどくさい現実の掌握を
    丸投げするってことなんだよね
 
  (‥ )これってアホな経営者が
      難しいことを
      安易にプログラマーに
      丸投げするのと
      同じなんだよな
 
 プログラマーなんだからこれぐらいできるでしょ?
 
 いや、できませんよ!

 なんでできないの? プログラマーでしょ? ちゃちゃっとできるでしょ?
 
 こういう丸投げを平気で言うのが間抜けな経営者であるし、これと同様、魔法使いが病人を治すとは、無知蒙昧な丸投げなのだ。
 
 ∧∧
( ‥)逆に言えばプログラマーは
    魔法使いや
    何でも出来る便利な精霊だと
    考えられているわけだね
 
  (‥ )現実の掌握が出来る人は
      現実を見て
      これは出来る
      これは出来ないと
      判断しているけども
      アホな社長や上司は
      これができないわけだ
   
 それと同様、魔法で病人を治せるというのも、現実を把握しないまま物事を丸投げすることに他ならぬ。
 
 つまるところ、たとえフィクションとは言え、魔法が普及すれば病人だって直せるはずだ、という冒頭の場面が持つそらぞらしさはこれに由来することになる。
 
 ∧∧
(‥ )漫画家さんもそんなことを
\−  言いたかったわけじゃない
    だろうけども
    結果的には
    そうなってしまっているのだと
 
  (‥ )だからさ魔法は
      現実の侵犯を最小限にする
      べきなんだよな
 
 それが魔法という現実の掌握に失敗した理論が背負うべき罪であり、そして罰である。
 
 例えフィクションであってもそうであるべきなのだ。我々人間の頭脳は現実を不十分とはいえ把握し、生き抜くようにできている。現実の侵犯を過大に行う物語を、人間の脳は良しとしないであろう。
 
 
   

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