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2016年4月22日金曜日

魔法漫画は露出漫画と似ている

 
 この世に四つの元素があり、それらの元素の組み合わせで物質は成り立つ。さらに乾、湿、冷、温などのような特性と、天空を運行する惑星が司る性質と属性が作用して地上界は流転する。
 
 これが魔法であり、錬金術などというものは魔法のごく下位な領域でしかない。
 
 真の魔法とは宇宙と物質界すべての有様を記述する、すなわち古代中世の大統一理論。

 中国の陰陽五行説もこの亜流。
 
 ∧∧
(‥ )そして魔法とは敗北した
\−  理論でもある
 
  (‥ )記述すべき現実世界は
      魔法という仮説を
      はるかに越えていたのだ
 
 元素は四つではなかった。ずっと多い。しかも、元素の性質を司る電子は、原子核にある陽子によって数が決定される。
 
 ∧∧
( ‥)しかるに陽子と共に
    元素の質量を
    体現する中性子は
    その限りではない
    中性子は元素的な性質と
    全く別個な核力の理だけで
    ふるまっている
 
  (‥ )かくて同じ性質で分類される
      元素同士なのに
      重さが違うという状況が
      生じるようになった
 
 
 それゆえ、元素同士の質量比は単純な整数比にならない。なにか数学的な関係があるだろうと人に思わせるぐらい規則正しさが現れる一方で、いや、それは間違いだろうと思わせるほどの不一致がどうしても生じる。錬金術の延長から生まれた化学はその歴史の初期で、この事実に非常に頭を悩まされた。
 
 ∧∧
(‥ )今でも周期表と元素の性質を
\−  勉強する学生さんは
    ??と当惑するからね
 
  (‥ )皆の当惑は100年以上前の
      研究者の当惑でもあるのだ
 
 このように現実世界は魔法ではまったく扱いきれない存在であった。そうして誕生した化学や物理学、量子論が整備されるにつれて、魔法は当然衰退した。魔法とは結局、現実の前に敗北した理論でしかなかったのである。
 
 でも、魔法は今でも人になじみなものである。実際、何千年も魔法は信じられてきた。ということは、魔法は人間の心に当てはまりやすい理論体系だったということではなかろうか?
 
 なれば、魔法が今でも創作の世界で生きるのは当然。

 フィクションは現実逃避という一服の清涼剤である。
 
 そのフィクションにふさわしいのは科学ではない、魔法なのだ。
 
 かつて恐れられた魔女たちが、実際には手作りのドラッグでトリップを楽しむ孤独な老婆であった、という説があるように、フィクションにおける魔法とは、トリップするための手作りドラッグなのである。
 
 しかし、それゆえに、フィクションにおける魔法の扱いは、注意しなければならぬ。
 
 ∧∧
( ‥)現実の侵犯はやっては
    いけないのであろう
 
  (‥ )やってもいいけど
      取り返しつかなくなるぞ
      という感じかな
 
 ヒキガエルの毒だのイモリの毒だの、あるいは有毒な野草だの、それらを調合して経験則から粗悪なドラッグを作り出す。それをひとり寂しく楽しむ。

 本当は薄暗いぼろやにひとりぼっちなのに、脳内では悪魔のサバトで社交界デビューだ。楽しければそれで良いであろう。
 
 だが、これを表立ってやったらどうなるか?
 
 ∧∧
( ‥)ぶっ殺されるね
 
  (‥ )それを考えるとさ
     例えフィクションの世界でも
     魔法は表立ってやったら
     まずいんだよ
 
 これは例えるならば露出狂の漫画のようなものだと思えば良いのではないか?
 
 露出狂のヒロイン(まあおっさんでもいいのだが)は服をぬいで夜の町に出る。でも、ヒロインは変態の性ゆえに思うのである。できれば人目に触れたい。
 
 こういう時、漫画ならどう描けばいい?
 
 ∧∧
(‥ )今ここには私一人だけど
\−  他に人がいて見つかったら
    どうなるだろう? と
    フィクションの中でさらに
    妄想フィクションを
    展開しますかね
    これなら安全ですぞ
    しかも
    皆にばれた選択肢まで
    描くことができつつ
    実際にはばれてないから
    続編も描けて二度美味しい
 
  (‥ )まあどうせ
     フィクションなんだから
     堂々とヒロインは脱いで
     町に出れば良いじゃん
     と展開してもいいけど
     それは
     ただのバッドエンドで
     しかもそこで終わり
     なんだよね
     やってもいいけど
     やれるだけ、だよな
 
 とまあ、これと似たような理屈で、フィクションの世界と言えども、魔法は表に出てはならぬだろう。物語で魔法を使うとは、露出狂が服を脱いで町を歩くことと同じ。闇から出てはならぬ。暗がりから出てはいけない。昼間の世界にいってはいけない。
 
 ∧∧
( ‥)出ても良いけど
    出た瞬間に
    ハリーポッターみたいに
    魔法学校や魔法授業という
    現実組織のしがらみに
    捕われることになりますぞ、と
 
  (‥ )魔法はもっと自由のはずだ
     だのに
     なんで魔法学校だの
     魔法理論だの必要なんだよ!
     と怒る作家もいるけども
     それは自業自得よな
 
 
 暗がりの中にいるべきものが、太陽の下に望んで出れば、紫外線に焼かれる。そのことを、怒れる作家はなぜ失念していたのであろうか?

 これは魔法を世界の表に出した者が背負うべき罪と罰。
 
 ∧∧
(‥ )例えばの話
\−  魔法は近代兵器に
    勝っちゃいけないってこと
    ですかねえ
 
  (‥ )勝ってもいいけど
      それをやると
      化学の成績が悪い俺様が
      脳内で現実に無双しました
      という内容に
      なっちゃうから
      恥ずかしいのよねえ
 
 魔法を使う者。お前は決してその薄暗いひとりぼっちの世界から出てはいけない。現実を侵犯してはいけない。
 
 もしも出たら、露出がばれて社会的に抹殺されるヒロインのようになって、そこで終わりをむかえてしまうであろう。
 
 
 

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