自己紹介
- 北村雄一(北村@)
- イラストレーター兼ライター 詳しくはhttp://www5b.biglobe.ne.jp/~hilihili あるいは詳細プロフィール表示のウェブページ情報をクリック
2016年4月1日金曜日
家族を狙うのはアウト 上司の脳を食べるのはセーフ
コロシアムの殺し合い、ネットの炎上、水戸黄門から明らかなように、娯楽の基本とは公開処刑である。
∧∧
(‥ )物語とは
\‐ こいつ殺していいでしょ?
いいよね? いいでしょ?
ということを
読者や視聴者に納得させる
ものなのである
(‥ )しかしどこまで殺して
いいものだろうか?
例えば、ヒーローは子供を殺せない。
∧∧
( ‥)ロボコップ2で悪ガキが
蜂の巣にされて
ぶち殺されていたじゃ
ないですか?
(‥ )でもやったのは
2号機で
主人公じゃないだろ?
ヒーローは女も殺せない。
悪い女性キャラは、悪い子供キャラと同様に、敵によって処刑されるのだ。
∧∧
(‥ )主人公の手を
\‐ 汚すわけにいかないのである
(‥ )ダークヒーローだと
もう少し自由が効くのだよな
例えば「羊達の沈黙」のレクター博士は物語が始まる前、看護婦を襲って顔面を食っている。
∧∧
(‥ )でも直接描写はないですなあ
\‐ 奴は彼女を食っている間
脈拍はまったく正常だった
という伝聞だけだよね
(‥ )後は警察官を2名殺してるな
映画だと
一人はお腹の中身を
すっぽり抜かれて
キリストのごとく
飾り立てられてしまうのだ
実に良い
∧∧
( ‥)警察官は殺しても良いの?
(‥ )んー
警察官は武装している
一方
博士は知能こそ高いが
徒手空拳である
このように互角な状況では
殺しは戦士の戦い
ということで
オッケーなのかもしれん
後、博士は救急隊員も殺してる。殺した警官と自分の服を換え、さらに警官の顔の皮をはぎとり、それをかむることで重症警官になりすまし、救急搬送されることで警戒網を突破する。
そしてもちろん、搬送途中で救急隊員を殺して、さらに高飛びをかけるのだ
∧∧
(‥ )殺しまくりだな
\‐
(‥ )でもなぜかな?
完全警戒の監獄から
脱獄するという
立場なせいか
殺したこと自体には
あまり関心わかないなあ
どういうわけか、脱獄ということになると、視聴者は脱獄犯を応援するものである。
∧∧
(‥ )課題が与えられた場合
\‐ 皆の眼は課題の解決に向くから
脱獄以外の事柄は
黙認されるという
ことでしょうか?
(‥ )人間の問題意識が
垣間見えるよな
例えばこれが、児童無差別殺傷犯の無罪を勝ち取る弁護士の話、になると途端に受取手の状況は変わる。
この場合、弁護士は社会にあだなす裏切り者となって、けつの穴から串刺しにされたあげくに火をつけられ、群集はそれを持って街路を練り歩くであろう。
あるいは話を戻せば、レクター博士でも子供を狙ってはいかんかもしれぬ。
∧∧
( ‥)レッドドラゴンでしたっけ
監獄内にいるにも関わらず
ONOFで外部に電話をかけ
高名な人物を名乗り
連続殺人鬼の眼に止まるよう
新聞に広告を載せ
しかもそれがある程度
知能のある人間なら
解ける暗号で
その内容は主人公の家族の
居場所ってのが確か
ありましたよね
(‥ )あれ読んだ時は
ちょっ、レクター博士
これまずいです
と思ったからな
つまりどうも、あれだ。
処刑ショーのヒーローになるには、戦士でなければならないし、そして戦士である以上、相手の家族や子供を狙ってはならない。
そういう不文律があることがうかがえる。
ヒールにも悪役なりの美学が必要で、それは視聴者をなるべく納得させるものでなければならぬ。
∧∧
(‥ )博士はハンニバルだと
\‐ 悪い上司を食べちゃうよね
(‥ )ヒロインを苦しめた
下種なおっさんを
ランニング中に捕まえて
局部麻酔し
頭蓋上部を切開
意識を保ったまま
露出させた脳髄から
スプーンで前頭葉を
すくいだして調理し
ヒロインのディナーに
供じてしまうのだ
あれはぞくぞく笑える
場面だよなあ
上司は前頭葉をすくとられるたびに、人としての自我がひとつひとつこぼれ落ちていく。
いつもヒロインを下種な言葉で貶めていた彼の理性は、文字通り、彼女に食われることで磨り減り、博士に前頭葉のほぼすべてを取り除かれた時、彼は童謡をがなりたてるだけの、人の姿をした何かに成り果てる。
これぞ人格破壊を越えた自我の蹂躙。下種な人間にふさわしき、美しき末路。
∧∧
( ‥)つまりここまでなら
ヒーローのやって良い
範疇なのであると
(‥ )スライム勇者はどこまで
悪を食べてしまって
良いものか?
このさじ加減の見極めは
ここにあろうよ
少なくとも、悪代官に寄生し、脳をじわじわ食べてしまう、というのは問題ないようである。
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