自己紹介

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2016年4月23日土曜日

魔法が逃げである以上、それが肯定されることはない

 
 人間は現実の中を生きるように、進化的に設定されている。
 
 だから目先のことしか考えないし、それゆえにインチキ医療にひっかかってあえなく死ぬ。
 
 そういう欠陥もあるが、人間が現実の問題に対処できるように出来ていることは疑いない。それが出来ないものは死んだわけで、そうなるのが必然だ。

 インチキ医療に引っかかって死ぬこととて、そういう死に方が致命的になったのは、まともな医療が発展してからのこと。
 
 ∧∧
(‥ )それを考えると
\−  インチキ医療を回避する
    能力を人間が持たないことは
    むしろ自然である
 
  (‥ )進化的に調節されるとは
      まあ、そういうことだ
 
 かように、人間は現実世界の中を生きるよう調整、設定されている。
 
 だとすると、フィクションもそうでなければいけない。
 
 確かにフィクションは現実逃避のためのものだが、同時に、読者の脳は現実世界を生きるように構造上出来ていることを忘れてはならぬ。
 
 ∧∧
( ‥)だからだろうね
    ただ御都合主義な話だと
    読者がだんだん文句を
    言い始めるよね
 
  (‥ )現実じゃないから
      良いじゃん
      そう言っても
      現実の中を泳ぐことに
      適合している脳の方が
      これはおかしいと
      言い始めるのだな
 
 あるいは、現実を泳ぐことに適合した脳にとって、御都合主義な話とは、さながら足がつかず、手に何もつかめない、宙ぶらりんでいやな感覚なのかもしれない。
 
 つまりこう、あれだ。

 現実のような感触でありながら、それを見事につかんですいすい進めるような嘘が望ましいってことだろう。
 
 ∧∧
(‥ )それが望まれる魔法の
\−  効果であろう
 
  (‥ )魔女っこがホウキで
      空を飛ぶのは
      空を自由に飛びたいな
      というたわいもない
      願いをかなえる程度だから
      許されるのだろうね
 
 これが、相手の意思に関係なく意中の人が自分を好きになるようにする魔法とか、死者の蘇生とかになってくると、
 
 うんんんんんんん??????? 
 
 という感じになってこよう。
 
 ∧∧
(‥ )ここらが現実の侵犯で
\−  この領域に魔法で侵入すると
    脳が拒絶し始める
    そういうことですかね
 
  (‥ )たぶんそんなところじゃ
      ねえかな
      実際、物語でも
      心を操る技
      未来を覗く技
      死者を蘇生させる技
      いずれも禁じ手だよな
 
 あるいは悪魔が使う邪法だと扱われるであろう。つまり使えるにしても否定的な技なのである。物語によってはそういう邪法を使うと手痛いしっぺ返しにあうことすらあるように、使用できるにしても、ただではない。
 
 かように、魔法とは現実逃避の手段であるにもかかわらず、現実を侵犯してはならない、という暗黙の了解がある。
 
 だから、魔法が現実を侵犯する場合、人目につかないように秘かにするものなのだ。
 
 ∧∧
( ‥)ばれなきゃ
   侵犯じゃないんですよ
 
  (‥ )まあそういうことだね
 
 当然、魔法は近代兵器に勝つことは許されぬ。
 
 いやそもそも魔法とは近代兵器どころか銃器、あるいは鉄にさえ勝てぬものでもあった。
 
 ∧∧
(‥ )妖精や妖怪のような
\−  魔的存在は西欧でも日本でも
    基本的に鉄が苦手だからね
 
  (‥ )鉄器という圧倒的な利器が
      出現した時
      人間は
      鉄であれば魔的存在さえも
      打ち破れる
      そう認識したってこと
      だろうねえ
 
 かように、魔法とは、現実の力を行使する圧倒的な技術の前でかすんでしまうべきもの。ましてや魔法で近代兵器群を倒すなど、中二病の中でも下の下、恥の底辺だと知るべし。
 
 ∧∧
(‥ )まあすべてのフィクションが
\−  それに従うわけじゃないけどね
 
  (‥ )漫画ベルセルクなんかは
      面白い例かもな
      魔法が現実世界を
      地球丸ごと侵犯したけど
      そこで話が進んでおる
 
 だがしかし
 
 ∧∧
( ‥)考えようによっては
    ベルセルクも
    魔法による現実の侵犯を
    結局は否定する話
    なのでしょうなあ
 
  (‥ )大事な人を捧げることで
      心に生じた亀裂に
      魔が流れ込み
      超越者になれる
 
 しかしそうして超越者になった者たちときたら、これがもう絶頂に痛いのだ。

 狂信者であれど狂ったまっすぐさがあったモズグス様も、超越者になった瞬間、ただの愉快なおっさんに。
 
 グルンベルド、ロクス、かっこいいはずの面々が、自身の内心を話せば話すほど、なんか痛い人になっていく。
 
 グリフィスだって人間の時は知謀の限りをつくしていたのに、無敵無謬の魔王に転生して以降、本人からして自分の立ち位置がチートでつまらなさそう。あの日、あの時、あそこで諦めるわけにはいかなかったとはいえ、この結果、なんか思ってたのと違くね? とも受け取れそうな物憂げな表情。
 
 そう考えればあの物語、魔法で現実を侵犯しちゃった人たちと、いやそれはちょっと…という人たちが、その人生観をめぐって争い、世界を二分して大戦争をするという話だとも言える。
 
 ∧∧
(‥ )つまり漫画ベルセルクも
\−  魔法による現実の侵犯を
    否定する物語だと
 
  (‥ )むしろそういう
      否定をテーマにした
      物語なのかもね
 
 
 魔法は所詮逃げなのだ。それゆえ、たわいもない願い事を魔法はかなえてくれるが、現実を侵犯するようなことは許されない。人の心を操る、病気を直す、人を蘇生させる、近代兵器を圧倒する、かような事柄、すべて肯定されえない。
 
 
    

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