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2016年4月2日土曜日

ネクロポリス建国

 
 
 ∧∧
(‥ )「ゲート 自衛隊
\‐  彼の地にて、斯く戦えり」
    という物語があって
    アニメ化もされたとか
 
  (‥ )出来がいいし
      面白いみたいだな
      そういえば以前
      高校の同期にこれが
      面白いと勧められたよ
 
 勧められたのはアニメが始まる前であったはずだが、それが小説であったのか、コミカライズされた漫画版であったのかは、はて、覚えていない。
 
 物語のあらすじはこうである
 
 ∧∧
(‥ )中世的な異世界の帝国が
\‐  魔法の力で門を開き
    門の先にある世界を
    侵略しようとするが
    開いた先は東京銀座
    遠征軍は
    当然、自衛隊によって圧殺
    さらには逆に
    自衛隊に攻め込まれて
    帝国は講和に持ち込まれる
 
  (‥ )中世レベルの文明と
      現代文明の接触かあ...
 
 ふと考える。
 
 例えば、できれば冬場、何か正当な口実をつけて現地の人間と日本人をしばらく一緒にさせる。たまたま日本人側には体調を崩していたものがいたのだが、それは偶然だ。そして現地人を街へと返す。村では意味がない。街であることが重要だ。それもなるべく人の往来の多い、交易拠点のような街だ。
 
 そしてこの時、日本は冬場であった、というのがみそである。
 
 ∧∧
( ‥)...ああ、異世界の帝国側に
   インフルエンザを流行らせる気か
 
  (‥ )偶然ですよ偶然
      不幸な事故ですよ
  

 現代人は長く続いた集団生活と文明生活で幾世代もあらゆる伝染病にさらされて、それなりに抵抗力を持つに至っている。当然、伝染病もそれに対抗する力を持つよう、お互いに進化している。

 だが、我々よりも歴史が短い異世界にとってはどうであろうか?
 
 
  (‥ )こっちの土をたまたま
      相手の農地に
      持ち込んじゃったり
      こっちの家畜が
      逃げ出して
      あっちの人間がこれ幸いと
      持ち帰っちゃったり
 
 ∧∧
( ‥)ほう? すべて偶然か?
 
 
 たまたまだ、不幸な事故である。
 
 それに、実際、どうなるのかは分からない。何も起きないかもしれないし...
 
 ∧∧
( ‥)あるいは
    こちらの何気ない病害虫が
    異世界の農地に打撃を与え
    家畜を壊滅状態に追い込み
    人間に致死的な
    伝染病となるかもしれない
 
  (‥ )こっちはなんとも
      ないんだけどな
 
 農薬も化学肥料もなく、品種改良も不完全。中世以前の帝国の農業生産力なんてたかがしれている。ちょっと生産に打撃を被れば、それだけで社会全体が危機にひんするだろう。臣民の肉体の抵抗力も落ちること明白だ。

 この状況で、次に例えば、相手の都市に援助を申し込もう。なんだかんだ理由をつけて一部の都市だけに食料援助を行う。
 
 さてどうなるか?
 
 ∧∧
(‥ )困窮した人々が
\‐  難民になってなだれ込む
    でしょうね
 
  (‥ )古代、中世の人間は
      感染症を理解しては
      いないんだ
      衛生概念が未熟な状態で
      一カ所に大量の人間が
      集中したら
      どうなると思う?
 
 ∧∧
( ‥)なるほど、意図的に
    感染症のアウトブレイクを
    引き起こすのだな
 
  (‥ )何の話ですかな?
      援助しただけですよ
      どこに問題が?
 
 
 アウトブレイクに成功した場合、社会が機能を失うのはいつだろうか? 人口の2割を失った時か? それとも3割か?
 
 ∧∧
(‥ )その後だったら
\‐  敵を打倒することは
    さらに容易でしょうね
 
  (‥ )むしろ成功しすぎて
      秩序が完全に崩壊し
      四分五裂してしまう方が
      心配なぐらいかもな
 

 大いなる都は、自分たちがなぜ死んでいくのか理解できないままに倒れた頭蓋と骸骨に覆われ、死都ネクロポリスと成り果てる。罪ある者も、罪無き者も、万遍なく打ち倒された誰もいない世界。空位の玉座から眺める光景は圧巻だ。
 
 ∧∧
( ‥)臭いぞ
    何年も臭いぞ
    ずーっと臭うぞ
 
  (‥ )やれやれ
      現実とは嫌なものだな
      美しさのかけらも無い
      
 話を戻せば
 
 ∧∧
(‥ )実際の物語は
\‐  もちろんこういう話ではなく
    突撃してきた古代中世の軍隊を
    自衛隊が現代兵器で圧倒し
    万の単位で殲滅する
    ようですけども
 
  (‥ )以上を踏まえて
      考えてみたまえ
      許容できる犠牲ではないか
      それにその殲滅も
      あくまで正面決戦の結果
      しかも聞けば
      本当に最初の戦闘時の
      出来事だそうだな
 
 話としても理にかなっている。最初、相手は何も知らないし、近世以前の戦法で現代軍に襲いかかれば、万単位で、文字通り殲滅されるだろう。しかしその後は当然、対応を変える。

 現実問題としても正しいのだろう。初戦での圧倒的な優位を背景に有利な条件で講和する。異世界の帝国なんか統治できないし、そうするしかないだろう。事実、アメリカは同じ現代世界であるのに、イラクでさえも統治できなかった。中世の帝国に統治の価値などない。
 
 植民地にするのも論外だ。初等教育も知らない遅れた人間に、一体どんな価値があろうや?
 
 物語としても正しかろう。まいどまいど殲滅していたら、視聴者としてはいくらなんでも心理的に許容できないだろう。やはり物語は戦士の神話であるべきだ。
 
 ∧∧
(‥ )そしてこのお話はその条件を
\‐  満たしているのだと
    主人公は乞われてドラゴンを
    倒すらしいじゃないですか

 
  (‥ )高校の同期が
      お勧めしてくるわけだぜ



 言い換えれば、インフルエンザでネクロポリス建国は物語として駄目だってことである。
 
 
 ∧∧
( ‥)ただ死都を作ること自体は
    ありなんだろうね
 
  ( ‥)「ヘルシング」や
    ‐/「ドリフターズ」の作者
      平野さんの初期エロ漫画で
      そういうのあったしな
 
 というか、あれはエロ漫画なんだろうか? 敗北し占領された王都でレイプされる姫の元に颯爽と登場するヒーローがネクロマンサー。敵の兵士をゾンビに変えて敵国王を食い殺させ、軍団もことごとく殺し尽くして自らの配下とし、築き上げた死の王国で姫と末永く暮らす物語。
 
 ∧∧
( ‥)なんだネクロポリスでも
    ハッピーエンドできる
    じゃねえか
 
  (‥ )インフルエンザで
      建国しては駄目なんだ
      だけど
      魔法でなら良いのだな
 
 
 多分、魔法なら戦士の力であるから良いのだろう、一方、インフルエンザは戦士の力ではないのだ。
 
 
    
    

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