自己紹介
- 北村雄一(北村@)
- イラストレーター兼ライター 詳しくはhttp://www5b.biglobe.ne.jp/~hilihili あるいは詳細プロフィール表示のウェブページ情報をクリック
2015年7月6日月曜日
相手を鳥類学者と評するのがヒント
学校生活で理解すべきことは色々あろうが、あの経験から何か重大なことを発見するとしたら、我々の理解はそのほとんどが実は間違っているということである。
∧∧
(‥ )テストをすると
\‐ 良くても1割りは
間違いだし
悪くすると大半が間違い
(‥ )出題範囲が決まっていても
この有り様だからな
もっと日常生活の多く
そのほとんどは間違いって
ことだよ
だがしかし、学校を卒業した人々は調子に乗ってしまったのである。俺は理解した。そう有頂天に思い込んでしまうのだ。
ああ、テストが無いというだけで、こうも人間は全能感に支配されて舞い上がってしまうものなのか...
読書というものもそうだ。
テストが無いから、読書しただけで人間は理解できたと思い込む。
∧∧
( ‥)だがしかしそのほとんどは
間違いなのである
本の書評もおかしなもの
だらけでございます
( ‥)最近みた書評で
‐/ うわ〜〜って
思ったのは
「銃・病原菌・鉄」の
やつかな
例えば曰く、西欧は新世界に感染症を持ち込んで圧倒したとこの本には書かれているが、西欧やユーラシアにも感染症があったではないか、感染症で死んでいるではないか、これはおかしいじゃないか。
というものであった。
∧∧
(‥ )...あの本の主張って
\‐ ユーラシアは新世界よりも
一足早く巨大社会を
作ったので
空気感染する病原菌と
共進化した
そういうことだよね
(‥ )だから
ユーラシアにも
感染症があるから
話が成り立たない
ではなく
ユーラシアは感染症の
温床だったから
新世界を圧倒出来た
少なくともその動力の
ひとつはそれだ
そういう主張なんだよね
多分ユーラシアの人間は巨大社会を作ったがゆえに、自然界で生き抜くテストからまぬがれている。これゆえ、むしろ他の人々に比べて知的に劣っている可能性すらある。
それにも関わらずユーラシアが他の大陸を圧倒出来たのは、人口が多く、知識の伝承と蓄積、改良が可能で、おまけに感染症の温床になっていたからだろう。
「銃・病原菌・鉄」とはおおむねこんな内容。
実際、こんな感染症まみれの連中と接触したら、他の地域の人々はひとたまりもないのだ。
というか、例えば西欧人がユーラシアと接触したことがない地域へいくと、土地の人々に対して、一方的に病気を引き起こすことは19世紀にはすでに知られた事実だった。船員に自覚症状が無いにも関わらず、船が島を訪れると、相手に熱病や赤痢や伝染病を引き起こす。ダーウィンのビーグル号航海記、第19章にもその話が引用されている。
∧∧
( ‥)つまり不潔な馬鹿が
世界を征服したのである
( ‥)それを可能ならしめたのは
‐/ ユーラシア大陸が
東西に長いので
人間の移動が容易なこと
たまたま馬のように
家畜化出来る動物が
残っていたこと
あの本はこういうことに
注目した内容
なんだよねえ
それを考えると、西欧や日本にも感染症があったじゃないか、という評価はかなりとんちんかん。
∧∧
(‥ )この書評さんは
\‐ 著者のダイヤモンドさんを
鳥類学者と呼んでいるのだね
(‥ )それが多分ヒントだな
ダイヤモンドというと進化学の本では何かしら論文が引用される研究者である。なぜなら、ニューギニアの鳥類を素材にしてその分布から種分化と進化の過程を論証する論文を幾つも書いたからだ。
∧∧
( ‥)だから例えば
あなたから見れば
ダイヤモンドさんは
鳥類学者というよりも
進化学者
( ‥)その彼を鳥類学者と
‐/ 呼ぶ評者は印象的だよね
そしてそれは
本を読む時に
進化的な視点を彼が
まったく持っていない
そういうことだよな
進化的な視点を持って本を読んでいない。それを考えると、ユーラシアにだって感染症はあったじゃないか、ユーラシアの人間も感染症で死んでいるじゃないか、というかなり的外れな書評の原因は理解しやすい。ここには共進化という視点がまるっと抜けている。
ユーラシアの人間も感染症で死んだのだから同じ、なのではなく、ユーラシアの人間は共進化によってすでに感染症に何度も大規模にかかって死んでいる。このため、免疫がついていて、本人たちに自覚は無いが人を殺す保菌者である。
ここが重要。
∧∧
(‥ )言い換えるとこれが
\‐ 分かっていないのだと
(‥ )評者が
進化という概念で
物事を理解したことが
無い人らしい
そういうことは
推論できるよね
後、これまでどんな本を読んで、反対にどんな論文を読まなかったのかも推論できよう。
書評を読めば、評者がこれまで何を読んだか、何を読んでいないのか、それが全部分かってしまう。書評とはそういうものだ。
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